「何かご入用でしたら、いつでもお呼びくださいませ」
言葉こそ丁寧だが、その目はどこか怯えを含んでいた。
すれ違う他の奉公人達も同じだ。目を合わせず、会釈だけをして足早に通り過ぎる。腫れ物に触るような扱いに、千歳はもう慣れていた。
(不吉な娘、というのはどこへ行っても変わらないのね)
驚くことでも、傷つくことでもない。いつものことだ。
夕方になって、暁臣が一度だけ様子を見に来た。不便はないかと確認し、ないと返せば、満足そうにうなずく。
「奥方様のお部屋は、どちらにありますか?」
「奥御殿の一番奥だ。今はまだ行くな。夜の方がいい」
「なぜですか?」
「――日が暮れると、出る」
それならば、夜行った方がいいだろう。千歳はうなずいた。
「ああ。夜、案内させる」
それだけ言って、暁臣は用件を済ませたとばかりに背を向けた。
嘘をついているようには見えないが、千歳にすべてを打ち明けてくれているというわけでもなさそうだ。
その夜、千歳は月見の間へ通された。
言葉こそ丁寧だが、その目はどこか怯えを含んでいた。
すれ違う他の奉公人達も同じだ。目を合わせず、会釈だけをして足早に通り過ぎる。腫れ物に触るような扱いに、千歳はもう慣れていた。
(不吉な娘、というのはどこへ行っても変わらないのね)
驚くことでも、傷つくことでもない。いつものことだ。
夕方になって、暁臣が一度だけ様子を見に来た。不便はないかと確認し、ないと返せば、満足そうにうなずく。
「奥方様のお部屋は、どちらにありますか?」
「奥御殿の一番奥だ。今はまだ行くな。夜の方がいい」
「なぜですか?」
「――日が暮れると、出る」
それならば、夜行った方がいいだろう。千歳はうなずいた。
「ああ。夜、案内させる」
それだけ言って、暁臣は用件を済ませたとばかりに背を向けた。
嘘をついているようには見えないが、千歳にすべてを打ち明けてくれているというわけでもなさそうだ。
その夜、千歳は月見の間へ通された。

