「――いいだろう」
「では、お受けします」
「部屋は、北の対の一室を使え。女中に案内させる」
それで話は終わりと言いたそうに、彼は腰を浮かせかけた。
「承知しました。もう一つよろしいでしょうか」
「まだあるのか」
しつこいというように暁臣は、再び座り直して千歳を睨む。
「奥方様のお部屋には、誰も立ち入っていませんね?」
その問いに、暁臣は視線を一瞬泳がせた。
「……ああ。誰も、触れさせていない」
「では、そこから始めます」
千歳の言葉に、彼は何も返さなかったけれど、わずかに顎を引いて了承の意を示した。
隣室にいた父と小春を呼び、契約がなったことを告げる。一律三円と決めているが、今回は最長百日の間久世宮家にとまらねばならない。そこも考慮して、父と暁臣の間で金額が決められた。
文机の上で、証文が交わされる。互いの名を記した紙の上に、暁臣が朱印を押し、千歳がそれに重ねて親指で印を付けた。
瞬間、二人の小指のあいだに、白い糸がふっと浮かび上がる。
(これが、契約の証)
「では、お受けします」
「部屋は、北の対の一室を使え。女中に案内させる」
それで話は終わりと言いたそうに、彼は腰を浮かせかけた。
「承知しました。もう一つよろしいでしょうか」
「まだあるのか」
しつこいというように暁臣は、再び座り直して千歳を睨む。
「奥方様のお部屋には、誰も立ち入っていませんね?」
その問いに、暁臣は視線を一瞬泳がせた。
「……ああ。誰も、触れさせていない」
「では、そこから始めます」
千歳の言葉に、彼は何も返さなかったけれど、わずかに顎を引いて了承の意を示した。
隣室にいた父と小春を呼び、契約がなったことを告げる。一律三円と決めているが、今回は最長百日の間久世宮家にとまらねばならない。そこも考慮して、父と暁臣の間で金額が決められた。
文机の上で、証文が交わされる。互いの名を記した紙の上に、暁臣が朱印を押し、千歳がそれに重ねて親指で印を付けた。
瞬間、二人の小指のあいだに、白い糸がふっと浮かび上がる。
(これが、契約の証)

