黒塗りの塀が延々と続き、その向こうに瓦屋が幾重にも重なっている。庭木は手入れが行き届いていた。
婚姻の縁を裁つには、縁の内側――つまりこの屋敷の中に入らなければならない。父は暁臣と契約を結ぶために、小春は姉の手助けをすると言い張ってついてきた。今まで、一度も手伝ったことなんかないくせに。
「宮様……姉の役目は、あくまで一時のこと。百日の後、正式な後妻をお迎えになる際は、どうかこの私を」
案内される道すがら、小春が暁臣の隣へするりと近づいて囁いた。
明るく美しく良縁を繋ぐことのできる小春。社に来る男性は皆小春に目を奪われるというのに、暁臣は違うようだ。
「お前に用はない」
「ですが、宮様は新たに奥方様を迎える必要がございますでしょう?」
「そうだったとしても、俺はお前を選ばない」
小春は顔をひきつらせたけれど、それでも笑みは崩さなかった。
これでは、先が思いやられる。
庭を横切りながら、千歳は自分の着物の袖に目を落とした。何度も洗濯を繰り返した藍色は、ひどく色褪せて見えた。
婚姻の縁を裁つには、縁の内側――つまりこの屋敷の中に入らなければならない。父は暁臣と契約を結ぶために、小春は姉の手助けをすると言い張ってついてきた。今まで、一度も手伝ったことなんかないくせに。
「宮様……姉の役目は、あくまで一時のこと。百日の後、正式な後妻をお迎えになる際は、どうかこの私を」
案内される道すがら、小春が暁臣の隣へするりと近づいて囁いた。
明るく美しく良縁を繋ぐことのできる小春。社に来る男性は皆小春に目を奪われるというのに、暁臣は違うようだ。
「お前に用はない」
「ですが、宮様は新たに奥方様を迎える必要がございますでしょう?」
「そうだったとしても、俺はお前を選ばない」
小春は顔をひきつらせたけれど、それでも笑みは崩さなかった。
これでは、先が思いやられる。
庭を横切りながら、千歳は自分の着物の袖に目を落とした。何度も洗濯を繰り返した藍色は、ひどく色褪せて見えた。

