「絃香おはー」
その時、頭上から軽い声が振ってきた。
雑誌から顔を上げる。
「あ……百目鬼さん」
先週の席替えで隣の席になった、百目鬼留美加さんだ。
席が隣になったからかちょくちょく声をかけてもらえるようになったけれど、私と彼女は〝友達〟ではない。
人形みたいに綺麗な顔立ちをしていて自分と同じ空間にいるだけで畏怖してしまう存在の百目鬼さんは、紛れもなく一軍女子。
私のような顔も体型も全てが中途半端な人間とはまず住む世界が違うし、なにより一方的にだけど苦手意識を持っているし。
だけどこうして気まぐれに声をかけてもらえるたび、私は嬉しくなってしまう。
大好きな瞬くんと同じ芸能界に属する、女優さんのような花のある存在になれた気がするから。


