アカウント名:シリアルが、ふざけた名前が付けられた部屋の参加申請をした。
通常、マーダーサイトまで辿り着いた者は警戒心も猜疑心も強い。そうでなければ、このサイトを見付けることさえできないからだ。そのため、部屋を開設する者は多いが、当たり障りのない名称にする。若しくは、当初の設定のまま「部屋A」になっていることが多い。それなのに、「死ぬか、殺すか」などというストレートな名前が付けられている。興味をそそられないはずがない。しかも、これだけ大胆な名付けをしながらも、「最愛の人」という夢見る少女のような単語を使っている。このアンバランスさに、可能性を感じずにはいられない。
画面上に浮かんだ「承認」ボタンを押すと、右上に表示されていた参加者人数が3人に増えた。
>織田N:確かに、脳髄を撒き散らした画像を拡散されるのはちょっとイヤですね。
自分がコンクリートの上で横たわり、全身から血を噴出しているシーンを連想し、頑丈な何かにロープを掛けてぶら下がっている揺れている状況を想像して左右に首を振る。何もかも垂れ流すなんて話を聞いたことがある。自分に意識は無いと分かっていても、それはさすがに許せない。カゼ薬を大量摂取してなんて噂話をネットで読んだ気がするが、結局は急性中毒だ。苦しいに決っている。息ができなくて苦しいのか、全身が痙攣して動けなくなるのか分からないが、そんなことに耐えられるはずがない。そもそも、裏切られた私が、どうしてこれ以上ツライ思いをしなければならないのか。
>ヒマ人:その様子だとどうするか決めた感じ? だよねー 普通に考えたら一択だよねー で、どうする?ここがスタート地点だよ?
>シリアル:それは本人の意思を無視した誘導だとしか思えません。まだ選択肢が残っていますから、検討してからでなければ問題がありますよ。
突然、3人目のメンバーが口を開いた。自分で承認しておきながら、ヒマ人の話にのめり込んでいて失念していた。
>織田N:シリアルさん。ご意見ありがとうございます。
>ヒマ人:え!? 2人目の申請なの??? マジで!? これヤバイんじゃないの!?
動揺するヒマ人。その理由が分からなくて、画面を見ながら首を傾げる。そんな私の疑問に応えるように、シリアルが書き綴る。
>シリアル:ヒマ人さんが心配しているのはですね、このサイトには部屋は多いのですが、参加者は非常に少ないのです。そのため、参加者がいる部屋の確率は低く、2人以上となると本当に稀なのです。それと、2人以上参加した部屋の開設者は、ほぼ100%人を殺します。 まあ、そんなことはどうでも良いのですが、意図的なのか分かりませんが、根本的に一番最初の選択肢が抜けています。そこを明確にしておかないと、先に進んでも必ず戻ってくるようになります。最初の選択肢はこうです。「赦す」のか、それとも「赦さない」のか。
確かに、アクラに問い掛けたときから、その選択肢は提示されていない。もし、赦した場合は、私が身を引けばそのまま何事もなく終了する。これまで、基本的にはそういう選択をしてきた。自分が貧乏くじを引けば、我慢さえすれば、それですべてのバランスが取れる。私以外の全員が幸せになることができるのだ。それなら―――――
>ヒマ人:アンタさ、もしかして自分が我慢すれば、すべてが丸く収まるとか考えてるんじゃない?それは違うよ?というかさ、2人の顔を思い出して、「最愛の人」がなぜ最愛なのか考えて、思い込みでも親友との信頼関係を頭に浮かべて、2人のキスシーンを目の前に映像化して、それでもアンタは2人を赦すの? それってさ、悟りを開いてるレベルなんだよね。そんな人間が、こんなところにまで相談には来ないんだよ。
>シリアル:そうですね、最初から経緯を拝見しましたが、最愛の人を親友に盗まれたとしたら、私なら一生赦しません。納得はしませんが、2人から先に説明があり、謝罪をされていれば、もしかすると来世では赦すことができるかも知れません。今頃、2人が密会し、抱き合ってキスしているとか考えると吐き気がします。自分で告白してきて裏切った彼氏。10年以上付一緒にいたにも関わらず裏切った親友。聖人君主だとしても、赦せる限度というものがあります。これは、その範疇を超えています。
選択肢は存在した。
しかし、その選択肢はあっただけで、裏切られた自分が頭を下げて赦しを請うという有り得ないものだった。どう考えても、2人の意見は正しい。寛容だとか、理知的だとか、その外にある出来事に心を砕く必要はない。
赦せない。
絶対に赦さない。
私がバカを見る未来など有り得ない。
>織田N:ヒマ人さん、シリアルさん。私に赦すことはできません。絶対に赦しません。
そのとき、再び「申請されました」の文字が表示された。
通常、マーダーサイトまで辿り着いた者は警戒心も猜疑心も強い。そうでなければ、このサイトを見付けることさえできないからだ。そのため、部屋を開設する者は多いが、当たり障りのない名称にする。若しくは、当初の設定のまま「部屋A」になっていることが多い。それなのに、「死ぬか、殺すか」などというストレートな名前が付けられている。興味をそそられないはずがない。しかも、これだけ大胆な名付けをしながらも、「最愛の人」という夢見る少女のような単語を使っている。このアンバランスさに、可能性を感じずにはいられない。
画面上に浮かんだ「承認」ボタンを押すと、右上に表示されていた参加者人数が3人に増えた。
>織田N:確かに、脳髄を撒き散らした画像を拡散されるのはちょっとイヤですね。
自分がコンクリートの上で横たわり、全身から血を噴出しているシーンを連想し、頑丈な何かにロープを掛けてぶら下がっている揺れている状況を想像して左右に首を振る。何もかも垂れ流すなんて話を聞いたことがある。自分に意識は無いと分かっていても、それはさすがに許せない。カゼ薬を大量摂取してなんて噂話をネットで読んだ気がするが、結局は急性中毒だ。苦しいに決っている。息ができなくて苦しいのか、全身が痙攣して動けなくなるのか分からないが、そんなことに耐えられるはずがない。そもそも、裏切られた私が、どうしてこれ以上ツライ思いをしなければならないのか。
>ヒマ人:その様子だとどうするか決めた感じ? だよねー 普通に考えたら一択だよねー で、どうする?ここがスタート地点だよ?
>シリアル:それは本人の意思を無視した誘導だとしか思えません。まだ選択肢が残っていますから、検討してからでなければ問題がありますよ。
突然、3人目のメンバーが口を開いた。自分で承認しておきながら、ヒマ人の話にのめり込んでいて失念していた。
>織田N:シリアルさん。ご意見ありがとうございます。
>ヒマ人:え!? 2人目の申請なの??? マジで!? これヤバイんじゃないの!?
動揺するヒマ人。その理由が分からなくて、画面を見ながら首を傾げる。そんな私の疑問に応えるように、シリアルが書き綴る。
>シリアル:ヒマ人さんが心配しているのはですね、このサイトには部屋は多いのですが、参加者は非常に少ないのです。そのため、参加者がいる部屋の確率は低く、2人以上となると本当に稀なのです。それと、2人以上参加した部屋の開設者は、ほぼ100%人を殺します。 まあ、そんなことはどうでも良いのですが、意図的なのか分かりませんが、根本的に一番最初の選択肢が抜けています。そこを明確にしておかないと、先に進んでも必ず戻ってくるようになります。最初の選択肢はこうです。「赦す」のか、それとも「赦さない」のか。
確かに、アクラに問い掛けたときから、その選択肢は提示されていない。もし、赦した場合は、私が身を引けばそのまま何事もなく終了する。これまで、基本的にはそういう選択をしてきた。自分が貧乏くじを引けば、我慢さえすれば、それですべてのバランスが取れる。私以外の全員が幸せになることができるのだ。それなら―――――
>ヒマ人:アンタさ、もしかして自分が我慢すれば、すべてが丸く収まるとか考えてるんじゃない?それは違うよ?というかさ、2人の顔を思い出して、「最愛の人」がなぜ最愛なのか考えて、思い込みでも親友との信頼関係を頭に浮かべて、2人のキスシーンを目の前に映像化して、それでもアンタは2人を赦すの? それってさ、悟りを開いてるレベルなんだよね。そんな人間が、こんなところにまで相談には来ないんだよ。
>シリアル:そうですね、最初から経緯を拝見しましたが、最愛の人を親友に盗まれたとしたら、私なら一生赦しません。納得はしませんが、2人から先に説明があり、謝罪をされていれば、もしかすると来世では赦すことができるかも知れません。今頃、2人が密会し、抱き合ってキスしているとか考えると吐き気がします。自分で告白してきて裏切った彼氏。10年以上付一緒にいたにも関わらず裏切った親友。聖人君主だとしても、赦せる限度というものがあります。これは、その範疇を超えています。
選択肢は存在した。
しかし、その選択肢はあっただけで、裏切られた自分が頭を下げて赦しを請うという有り得ないものだった。どう考えても、2人の意見は正しい。寛容だとか、理知的だとか、その外にある出来事に心を砕く必要はない。
赦せない。
絶対に赦さない。
私がバカを見る未来など有り得ない。
>織田N:ヒマ人さん、シリアルさん。私に赦すことはできません。絶対に赦しません。
そのとき、再び「申請されました」の文字が表示された。



