「最愛の人」に裏切られたとき、死にますか? それとも、殺しますか?




 本物の未解決事件の犯人だろ?
 未解決事件というよりは、連続殺人事件の犯人と言った方が正確ですね。7年前から毎年1人ずつ殺しましたが、ここ3年は思うところがあって保留中です。

 1人目のときは必要以上に綿密な計画を練り、執拗に追い詰めて、精神的に追い込んで、殺さない方法を選択しました。相方の処理について保留しているので、同様に保留中です。実質的な犠牲者としての2人目から6人目については、ほぼ説明した通りの方法で殺しました。今日初めて手口を公開しましたが、分かったところで捕まえることはできないので大した問題ではありません。
 ただ、ここ数ヶ月の間に釈放されるはずなので、決断しなければなりません。そろそろ、本格的にタイムアップです。だから、境遇が似ている織田Nさんに、最終的な解答を提示して頂きたい。あの時の私と同じ状況に、意図的に貴方を追い込んだ。そんな貴方が、一体どういう選択をするのか。私は、その答えに従おうと思っています。それによって、私は史上最悪のシリアルキラーになるか、伝説のシリアルキラーになるかが決まるでしょう。




 相談相手の皆と意見交換をした後、午後から学校の近くを散策することにした。テストについては普段から予習と復習を欠かしていないため、集中的に勉強する必要はない。いつもであれば2人のために予想問題を作るところであるが、今回は何も用意するつもりがない。いや、故意に得点が下がるような誘導した方が面白いかも知れない。

 まるで部活にでも行くようなジャージ姿のまま家を出ると、通学するときと同じ手順で学校の最寄り駅に到着した。場所を決めるのであれば、やはり駅の周辺にするべきだろう。わざわざ呼び出す必要がないし、カラオケやゲームセンター、学校があることもあって比較的駅の利用者も多い。そして、ビルの隙間や路地といった薄暗い場所もある。さらに、付き合い始めた頃によく行っていた人気がない公園や、河川敷も徒歩で10分圏内だ。

 こうして思い浮かべると、場所の選択肢は多い。ただ、シリアルが言ったような方法は難しい。歩いているとよく分かるが、人通りがそんなに多くない。土曜日の昼過ぎということもあるが、それを加味しても駅前で刺せば間違いなくその場で取り押さえられるだろう。
 やはり、監視が及ばない場所で殺すしかない。
 2人まとめて処理しようとするから無理なだけだ。順番に、一人ずつ刺して、バラバラにして、埋めてしまえばいい。コンクリートブロックを巻いて海に沈めればいいのだ。見付からなければ大丈夫。そう、疑われないようにすれば問題ない。疑われてもアリバイがあればウソ泣きをすればいい。

 それなら、公園より河川敷がいいかな。鉄道橋の下であれば、河川敷に到着して1キロ以上歩かなければならないし、色々と都合が良い。どうせ、あの男は身体にしか興味がない。いつもステーキを食べていたとしても、たまには牛丼も食べたくなるだろう。

 あそこなら日が暮れると街灯など無くて真っ暗になるし、範囲が広いた誰かに見られる可能性も低い。声は電車が通過するときに合わせれば響かない。お互いに(・・・・)都合が良い。あとは、監視カメラに捕まらない河川敷までのルートを調べれば準備万端だ。いや、あらかじめ、埋めるための穴を掘っておく必要があるかも知れない。(ノコギリ)(ナタ)などは鉄道橋の下に隠しておいた方が良いだろう。ホームセンターに買いに行くときも変装しておいた方が良いかも知れない。こうして考えると、やらなければならない事は多い。

 実際に河川敷の下見に行き、監視カメラの位置を確認しながら駅までの道を歩いた。駅が近付くと商業施設や一般家庭の車庫付近にカメラが設置されていることもあるが、全部で10台もない。ああ、監視カメラを気にするよりも何か理由を付けて、あの男を変装させれば解決するのではないだろうか。2人だけのハロィンとか、そんな理由で変装すればいい。そうすれば、私もあの男も監視カメラに映ったとしても誰かは分からない。


 自分の発想を自画自賛しながら駅前まで戻って来たときだった。駅のロータリー前にあるファーストフードの2階に、見慣れた2人の姿を見付けた。堂々と、窓際の一番目立つ位置に、向かい合って座るクソ男とクソ女。大きく息を吸い、そのまま10まで数えてゆっくりと吐き出した。
 まだだ。
 今ではない。
 右手で左手首を掴み、必死に衝動を堪える。
 ここで喚いても、叫んでも、声を出して泣いたとしても、それは違う。
 衝動的な行動には何の意味もない。

 私は2人の姿を目に焼き付け、駅に向かって歩き始める。
 飼い主は店内にいるのか、コンビニの外に小型犬が繋いであった。無用心過ぎると嗤いながら、通りすがりにリールを持って持ち上げる。首が絞まった犬は何が起きているのか分からないまま、前足をバタバタしながら足掻いている。
 もう声も出ない。誰も助けない。可愛がられているから危機感が足りない。

 世の中には、こんなに危険に溢れているのに。