「最愛の人」に裏切られたとき、死にますか? それとも、殺しますか?

>シリアル:関係ない話なんですけど、昨日とは別人ではないかと疑うレベルで印象が違いますよね。発言の内容的には同じなので、2人いるのではなく、1人が異なる性質の人格を持っているという事でしょう。陰と陽、躁と鬱に偏っていると考えると、双極性障害と判断するべきでなのでしょうか。この症状の原因としては諸説ありますが、長期間に渡る過度なストレスもその一因として挙げられています。しかも、格差のある性質を見事に別人の域まで演じているという事を考慮すると、恐らく、本当の人格もまた別にあるのでしょう。1人で何人もの人物を完璧に演じる事ができる。そんな人物は稀有の存在です。そう考えると、今休養中の―――おっと、余計な詮索はご法度でした。失礼致しました。
 私も概ねヒマ人さんの意見に賛成です。並行して準備はしておいた方が良いと思います。

>警察官:おいおい、アンタ何者だよ。ウチのプロファイラーより優秀なんじゃないのか?
 まあ、いいか。「いつ」というところだが、犯罪が発生する時間帯は主に夕方から深夜にかけてだな。仕事帰り、学校帰りと、相手が最も外に出ている可能性が高いからな。それに、もし誘い出すとしても、フリーになる時間帯だから最適だろう。特に高校生だと、午後6時から9時の間が現実的だな。人が多いということは、犯人の特定が難しくなるしな。ただ、必然的に目撃者も多くなる。重要なのは「どこで」だ。

 「なるほど」と、私は警察官の意見に頷く。

>シリアル:警察官さんの意見は正しい分析だと思います。ですが、正解ではありません。実際に、逃亡中の殺人犯には該当しないのですから。経験者から言わせて頂くと、カメラがある事を前提に行動するべきなのですよ。監視カメラ、目撃者を利用して特定されない方法を考えるべきです。

>ヒマ人:ねえ、今、サラッと爆弾発言しなかった?経験者とかって、ちょっとヤバイんじゃないの?他人のプロファイリングするヒマがあったら早く逃げないとー 急いで!!

 私は思わず唾を飲み込んだ。
 確かに「経験者」という発言があった。しかし、その発言の真偽は分からない。ここはあくまでもネットの中なのだ。画面の向こう側にいる人物のことは全く分からない。そもそも詮索しない約束だ。それこそ、刃物を研ぎながら猟奇殺人犯が座っているかも知れないし、警察官が派出所でサボりながら覗き込んでいるかも知れない。ここは、そいう場所なのだ

>ミカエル:それは、具体的にどういう方法なんですの? 皆様、こんにちは。
>シリアル:ミカエルさん、お疲れ様です。 単純で簡単なことです。監視カメラの映像はカメラで映したものしか見ることができません。当然のように、映像を見て判断する人は自身の目で見たものしか分かりません。それは、仮に目撃者がいても同じことです。そしてテレビ番組によって、警察はリレー方式でカメラを変えて追って行く手法を使用していることが分かっています。そして、木は森、人は人波に沈めてしまえば見付かりません。
 例えば、夕方に一番多いのは間違いなく制服姿の学生です。目立つ服装で、学生が多い場所で、殺害したあと、制服に着替えてしまえばもう特定されることはないでしょう。

>警察官:いやいや、それが可能なら日本全国が殺人鬼だらけになるぞ。
>ミカエル:確かに、それなら大丈夫かも知れませんわね。問題は場所の選定と着替えた後の服と凶器をどうするか、ですわね。スマホのカメラで簡単に写真を撮ることができることも、逆に犯人の特定を困難にしそうですわ。それに、写真を撮ってSNSで拡散という軽薄な行動が、逃亡を手助けをしてくれるでしょうね。すぐに群れて悪意をバラ撒き、自分達の責任など微塵も背負わず、ただ自分達だけが楽しければそれで良いという集団。ほぼ100パーセント、画像と使った犯人の捜索がバズるでしょう。それが犯人を逃がすことになるとも思わずに。

 私は話しを聞きながら、自分の頭の中を整理していく。
 最初に考えていた誰もいない場所で、誰にも見られずに刺す。という方法は悪手だという気がしてきた。普通に考えて、私は1人で相手は2人いる。おそらく、不意を突いても勝てない。中途半端な状態で逃げられてしまう可能性が高い。2人を別々の場所で?ダメだ。それだと真っ先に私が疑われてしまう。2人が揃っているときに、通り魔事件として殺してしまうしかない。

>ヒマ人:そうかなあーそれなら、ハロウィンのときに仮装した状態で襲っちゃう方が早くない?試験の打ち上げだとか言って、仮装させて誘い出せば?チェーンソーとか持ってても、誰も気にしないよ。知らないけどー

 なるほど、それもアリな気がする。ただ、この周辺で大規模なハロゥインのイベントなど開催されない。せいぜい駅前商店街でのパレードくらいだ。それも30人程度の小規模なもので、混ざるほうが目立つというレベルのものだ。ヒマ人の案は、ここが田舎町である時点で却下だ。そうなると、自称経験者というシリアルの案を参考にして計画するべきだろう。

>織田N:ヒマ人さん、ご意見ありがとうございます。ただ、この田舎町にハロゥインパレードとかないので、東京でしか成立しないプランは無理です。それで、シリアルさんは、その方法で逃げ切ったんですか?

 覚悟をして訊ねた私に対し、シリアルは躊躇することなく答えた。

>シリアル:私の場合は真っ赤なスカートと白のブラウスという服装で刺したあと、利用者が多い駅のトイレに5時間こもりました。そして、ベージュのパンツとシャツに替えた上でロングのカツラを被り、持っていたカバンを別のカバンに入れて駅の改札を抜けたあと、反対側から出て少し離れた場所のバスで移動しました。もちろん、歩き方も変えましたし、クツも履き替えましたけれど。

>警察官:そりゃあ、捕まらないわ。というか、アンタ、本物の未解決事件の犯人だろ!!