昼休みになると、私は校内放送で職員室に呼び出された。呼び出した先生の名前で、なぜ呼ばれたのかは予想できる。
「高山さん、我儘を言って他の部員と口論になり、一方的に退部すると宣言したって聞いているのだけど。いくら部活動とはいえ、その自己中心的な態度はどうかと思うのよね。そのところ、しっかり反省して、皆に謝罪をした上で元通り仲良くやって欲しいの」
女子バスケットボール顧問の先生。月に2、3度顔を出す程度で、顧問らしい指導などは一切することはない。それなりの進学校であるため、我が校の運動部はお世辞にも強いとは言えない。ただ、今の2年生、私達の代は新人戦で県のベスト8に入ったこともあり、例年になく強いとされている。でもそれは、自慢でも何でもなく事実として私がいるからだ。これでも一応、中学生のときは県の代表候補になったこともある。そんな私が退部することになれば、普通に一回戦で無様な姿を晒すことになるだろう。
残された部員達は私と一緒にバスケがしたい訳はなく、ただ、一方的に負けることが恥だと思っているだけだ。自分達の虚栄心を満たすためだけに私を必要としているに過ぎない。その証拠に、練習中に私の意見を聞くことなど一切ない。
「それは、私からの話を聞かない段階で、私が悪いと決め付けているのですか?」
これまでの私であれば、高圧的な口調で押し付けられると、自分が悪くなくても頭を下げいた。しかし、その行為に何の意味もないことに気付いた現状では、理不尽に抑え付けられても頭を下げることはできない。
反応が抱いていたイメージと違ったからなのか、顧問は顔を上げて私の顔を覗き込んだ。
「今朝、部長と副部長が一緒に私のところに来て、同じことを口にしたのよ。それなら、そういうことなのでしょう。仮に高山さんの説明が違ったとしても、多数決で決めるのが筋ではないの?」
話にならない。
私はわざとらしく大袈裟に息を吐き出すと、背筋を伸ばして口を開いた。
「家庭の事情で、放課後早く帰宅して家事をしなければなりません。ですから、部活動を続けることが困難になりました。これを我儘だと言われるのであれば、私には反論することができません。しかし、高校の部活動は家庭の事情を無視してまで続けるものだとは思えないのですが。それでも、家庭を支えることが我儘だということであれば、このまま校長先生に相談に行きます。それでも認められないのであれば、教育委員会に話しをしに―――」
「ちょっと、ちょっと待って。そこまでしなくても大丈夫よ。家庭の事情であれば退部は仕方ないと思うわ。そうね、止むを得ずということで、退部を認めます。部長の勘違い、ということね。部長には私の方から話しをしておくから。もう行ってもいいわ」
私は「失礼します」と頭を下げ、職員室を後にした。
職員室から廊下に出ると、そこにバスケ部の部長と副部長が待ち構えていた。校内放送で呼び出しがあったため、様子を見に来ていたのだろう。顧問の判断も予想できていたため、この場で謝らせようとと思っていたのかも知れない。しかし、私は腕を組んで並んぶ2人を避け、廊下の端を無視して通り過ぎる。
「ちょっと!!何か言うことがあるんじゃないの?」
「そう、そう」
2人の声が私を引き留める。
本当にくだらない。
今の私では、この2人を刺すことも、階段から突き落とすこともできないだろう。それでも、足を引っ掛けるとか。お尻を蹴っ飛ばすくらいはできると思う。それはきっと、それくらいでは死なないからだ。精々が擦り傷程度しか怪我を負わないと予測できるからだ。
「連絡があると思うけど、正式に退部が許可されたから。もう私は無関係なので」
私はそう言い残すと、急いで学食に向かう。今日も弁当を持参していないため、売店でパンを買う予定にしていたのだ。が、結局、ゴマが振ってあるパンと味付けパンした残っていなかった。
「アクラ」
>呼んだ?今日は19時過ぎに天気が崩れそうだよ。夜遅く外出するなら傘を忘れないでね。
「出ないから」
>知ってる。それで、何か問題でもあった?
前回と同様、非常階段の1階部分に隠れるように座ると、カッターナイフとは反対側のポケットからスマホを取り出した。いつものように軽妙な口調で、アクラがAIぽくない反応を示す。どこで学習しているのか、最近はアクラが人間ぽくなってきた気がする。
「昨日、バスケ部を辞めたんだけどさ、部長と副部長がイジワルしてくるんだよね。これで終わればいいんだけど、何かもっとやってきそうな気がする」
>なるほど。じゃあ、バスケ部を廃部にさせる?それとも、部長の足を折る?
「ううん、潰す必要はないと思う。それに、足を折るところまではしなくていいよ。そもそも、実害もないし、そんなに重要なことでもないから、優先順位が低いし。これからまた何かあれば、その時に考えることにするよ」
>そう?
アクラが非常に残念そうだ。
でもね、アクラ・・・今、はっきりと分かったことがあるよ。
相手に対する思いが深くなければ、殺すことはできない。
「高山さん、我儘を言って他の部員と口論になり、一方的に退部すると宣言したって聞いているのだけど。いくら部活動とはいえ、その自己中心的な態度はどうかと思うのよね。そのところ、しっかり反省して、皆に謝罪をした上で元通り仲良くやって欲しいの」
女子バスケットボール顧問の先生。月に2、3度顔を出す程度で、顧問らしい指導などは一切することはない。それなりの進学校であるため、我が校の運動部はお世辞にも強いとは言えない。ただ、今の2年生、私達の代は新人戦で県のベスト8に入ったこともあり、例年になく強いとされている。でもそれは、自慢でも何でもなく事実として私がいるからだ。これでも一応、中学生のときは県の代表候補になったこともある。そんな私が退部することになれば、普通に一回戦で無様な姿を晒すことになるだろう。
残された部員達は私と一緒にバスケがしたい訳はなく、ただ、一方的に負けることが恥だと思っているだけだ。自分達の虚栄心を満たすためだけに私を必要としているに過ぎない。その証拠に、練習中に私の意見を聞くことなど一切ない。
「それは、私からの話を聞かない段階で、私が悪いと決め付けているのですか?」
これまでの私であれば、高圧的な口調で押し付けられると、自分が悪くなくても頭を下げいた。しかし、その行為に何の意味もないことに気付いた現状では、理不尽に抑え付けられても頭を下げることはできない。
反応が抱いていたイメージと違ったからなのか、顧問は顔を上げて私の顔を覗き込んだ。
「今朝、部長と副部長が一緒に私のところに来て、同じことを口にしたのよ。それなら、そういうことなのでしょう。仮に高山さんの説明が違ったとしても、多数決で決めるのが筋ではないの?」
話にならない。
私はわざとらしく大袈裟に息を吐き出すと、背筋を伸ばして口を開いた。
「家庭の事情で、放課後早く帰宅して家事をしなければなりません。ですから、部活動を続けることが困難になりました。これを我儘だと言われるのであれば、私には反論することができません。しかし、高校の部活動は家庭の事情を無視してまで続けるものだとは思えないのですが。それでも、家庭を支えることが我儘だということであれば、このまま校長先生に相談に行きます。それでも認められないのであれば、教育委員会に話しをしに―――」
「ちょっと、ちょっと待って。そこまでしなくても大丈夫よ。家庭の事情であれば退部は仕方ないと思うわ。そうね、止むを得ずということで、退部を認めます。部長の勘違い、ということね。部長には私の方から話しをしておくから。もう行ってもいいわ」
私は「失礼します」と頭を下げ、職員室を後にした。
職員室から廊下に出ると、そこにバスケ部の部長と副部長が待ち構えていた。校内放送で呼び出しがあったため、様子を見に来ていたのだろう。顧問の判断も予想できていたため、この場で謝らせようとと思っていたのかも知れない。しかし、私は腕を組んで並んぶ2人を避け、廊下の端を無視して通り過ぎる。
「ちょっと!!何か言うことがあるんじゃないの?」
「そう、そう」
2人の声が私を引き留める。
本当にくだらない。
今の私では、この2人を刺すことも、階段から突き落とすこともできないだろう。それでも、足を引っ掛けるとか。お尻を蹴っ飛ばすくらいはできると思う。それはきっと、それくらいでは死なないからだ。精々が擦り傷程度しか怪我を負わないと予測できるからだ。
「連絡があると思うけど、正式に退部が許可されたから。もう私は無関係なので」
私はそう言い残すと、急いで学食に向かう。今日も弁当を持参していないため、売店でパンを買う予定にしていたのだ。が、結局、ゴマが振ってあるパンと味付けパンした残っていなかった。
「アクラ」
>呼んだ?今日は19時過ぎに天気が崩れそうだよ。夜遅く外出するなら傘を忘れないでね。
「出ないから」
>知ってる。それで、何か問題でもあった?
前回と同様、非常階段の1階部分に隠れるように座ると、カッターナイフとは反対側のポケットからスマホを取り出した。いつものように軽妙な口調で、アクラがAIぽくない反応を示す。どこで学習しているのか、最近はアクラが人間ぽくなってきた気がする。
「昨日、バスケ部を辞めたんだけどさ、部長と副部長がイジワルしてくるんだよね。これで終わればいいんだけど、何かもっとやってきそうな気がする」
>なるほど。じゃあ、バスケ部を廃部にさせる?それとも、部長の足を折る?
「ううん、潰す必要はないと思う。それに、足を折るところまではしなくていいよ。そもそも、実害もないし、そんなに重要なことでもないから、優先順位が低いし。これからまた何かあれば、その時に考えることにするよ」
>そう?
アクラが非常に残念そうだ。
でもね、アクラ・・・今、はっきりと分かったことがあるよ。
相手に対する思いが深くなければ、殺すことはできない。



