これが普通の恋じゃないなんて、思ってもいなかった。〜家庭崩壊済みの彼女がヤンデレ化したら、俺が1番の被害者になった件〜

「優磨くん! 一緒に寝よ?」

 と、ノリノリで俺の部屋に結愛が乗り込んできた。
 
「⋯⋯えぇ」

 俺の顔は、引きつった。

「もしかして⋯⋯」
「わかったから! 寝ればいいんだろ!?」

 俺は渋々隣を開けた。そこに、結愛が来る。

「優磨くん、壁側ね?」
「⋯⋯なんで――」
「壁側、ね?」

 壁側だと、俺の作戦が⋯⋯。結愛が寝たら床で寝るという、作戦が⋯⋯。

「あ、壁側じゃなくてもいいよっ!」
「じゃあ――」
「その代わり、腕枕、してね?」

 結愛は俺を覗き込むように迫ってくる。

「⋯⋯わかったよ! 壁側で寝ればいいんだろ!?」

 俺は仕方なく、壁側で寝てやることにした。

「やった!」

 結愛は小さなガッツポーズをした。

「じゃあ、ちょっと待っててね!」

 結愛は部屋を出ていった。


「ただいまっ! これ、あげる!」

 結愛は案外すぐに帰ってきた。

「はいっ! ホットココア!」
「お、ありがと」

 白いマグカップから、湯気が立ち上っている。結愛は熱そうに取っ手を持っている。

「寝る前に温かいもの飲むと、いいことあるらしいよっ!」
「結愛、詳しいんだな」
「ふふっ」

 結愛は、口に手を当てながら、わざとらしく笑う。
 
「優磨くんを、私に依存させなくちゃ」

 わざとらしく笑いながら、恐ろしいことを言うな、結愛は。

「なんでもないよっ! あと、ちゃんと、飲み干してね?」
「⋯⋯あぁ」
「優磨くんは、いいこだねっ!」

 そう言いながら、俺の頭を優しく撫でてくる。
 
 
 ようやくそのココアを飲み干すと、なぜだかすごく眠くなってきた。

「おやすみ。優磨くん」

 結愛は立ち上がり、そう言った。

「寝るなら、ベッドで寝てね?」
「ん、あぁ」
 
 俺は強烈な眠気を感じ、ベッドに横たわった。

「ふふっ、よかった。ちゃんと寝てくれた」

 結愛はニコッと笑う。それは、まるで()()()()()()かのように。
 俺は何も発しず、そのまま眠気に従った。


 ******


 朝になり、目が覚めると、なぜか結愛の体が近い。というより、くっついている。

「もう、逃がさない」
「ちょ、ちょっと――」

 俺が文句を言おうとすると、結愛からは寝息がした。

「寝言か⋯⋯」

 ――どんな夢見てんだ?
 結愛は俺を抱き枕にしながら、気持ちよさそうに寝ている。

「さすがに、邪魔だな⋯⋯。ただ、起こすのは、気が引ける」

 俺が1人で勝手に悩んでいると、また声がする。

「ん、んあ?」

 結愛はなぜか俺に抱きつきながら、気持ちよさそうな顔をしている。

「優磨、くん。好き⋯⋯」

 目をゴシゴシとこすりながら言う。どうやらこれは本音っぽい。

「優磨くん、おはよ」
「お、おん⋯⋯」

 ニコニコと微笑んでいた⋯⋯。
 
「あ、間違えた」

 そう言いながら、俺の顔めがけて近づいてくる結愛。
 問答無用で近づいてくるその顔に、俺は何もできなかった。
 俺の唇が、結愛の唇に触れた。

「⋯⋯うんっ! やっぱ、心地いいな〜」

 朝の挨拶が、これと。

「朝はこうでなくっちゃね!」

 結愛はすぐさま下へ向かった。

「もう、よくわかんねぇ。結愛が何を考えてんだか」

 俺はそう思いながら、ゆっくりと階段を下る。

「ああああああああああ!」

 階段を下っていると、洗面所の方から不思議と悲鳴が聞こえる。

「顔洗っちゃったよおおおおお! 私の優磨くんの唾液、洗っちゃった」

 結愛は、階段を降りた直後の俺に話しかけてきた。

「ね、ぇ? ほら、私にさ、もう1回だけ、唇ちょうだい?」
「えー⋯⋯」
「ちょうだい?」

 俺が文句を言う暇すら潰された。

「お、おう」

 俺がそう返事を悩んでいる間も、学園のアイドルはジリジリと迫ってくるのであった。