時折、私は思うことがある。
――どうして私は、こんなにも「普通」なんだろう。
特別かわいいわけでもないし、見ていられないほど不細工というわけでもない。
勉強も運動もそこそこ。何か秀でたものがあるわけでもない。
私の周りには、かわいい子がたくさんいる。
性格がよくて、誰からも好かれている子も、何をしなくても人が集まってくる子もいる。
じゃあ、私は。
私には何があるの。
毎日なんとなく学校へ行って、なんとなく笑って、なんとなく一日が終わる。
タイムループしているわけでもないのに、今日と昨日の違いなんて思い出せないくらい、同じような一日を繰り返している。
それなのに時間は止まってはくれず、私は少しずつ大人になって、老いていく。
何も残せないまま。
酸素を吸って二酸化炭素を吐いて。
地球温暖化を進めているだけの存在なんじゃないか、なんて。
そんな馬鹿みたいなことまで考えてしまう。
「りーあ!」
突然、背中に声が落ちてきた。
はっとして振り返ると、胡桃がスマホを片手に満面の笑みを浮かべている。
「見て、りあ! この右の人と左の人、どっちがタイプ?」
画面には二人の男性が並んでいた。
右は色白で涼しげな塩顔。いかにも胡桃が好きそうな顔だ。
左は日に焼けた肌に彫りの深い顔立ちで、どこか落ち着いた雰囲気があった。
「私は左かな。」
「だよね~! 絶対そう言うと思った!」
その声に引き寄せられるように、凛華が眠そうな目をこすりながら近づいてくる。
「おはよー。あれ、今日って小テストあったっけ……?」
それをきっかけに、私の机の周りにはいつものようにひとが集まり始めた。
「あ、それ私も見た!」
「昨日さー、マジで最悪だったんだけど。」
「ガチであの先生おもろい!」
四方八方から違う話題が飛んできて、私は聖徳太子にでもなった気分だった。
「めっちゃ面白かったよね。」
「え、それは嫌だね。」
「それな。」
誰とも気まずくならないように。
誰も置いていかないように。
同じくらい笑って、同じくらいうなずいて、同じくらい相づちを打つ。
そういうのは、昔から得意だった。
キーンコーンカーンコーン。
ホームルーム開始のチャイムが鳴る。
すると、さっきまでの賑やかさが嘘みたいにみんな自分の席へ戻っていく。
まるで魔法が解けたみたいだった。
そのあとも授業を受けて、お昼を食べて、友達と笑って。
気づけば一日は終わっていて、私は家に帰ってきていた。
靴を脱ぎ、制服のままベットへ倒れこんだ。
天井を見つめる。
今日も、何もなかった。
でも、「何もなかった」ということが、
胸の奥をじわじわと締め付ける。
「あぁーーーー……」
叫びたくて布団に顔を押し付ける。
思いきり声を出したつもりなのに、漏れたのは自分でも情けなくなるほど小さな声だった。
「なんで……」
その先は言葉にならなかった。
涙だけが勝手にあふれてくる。
理由なんてない。
いや、あるのかもしれないけれど、自分でもわからない。
気づけば泣いている。
ただ、ときどきこういう日がある。
週に一度くらい、
何もなくても泣いてしまう夜が――。
学校のみんなは、きっと想像もしないだろう。
昼休みに笑っていた私が、夜には一人で布団の中で泣いていることなんて。
時計の針は、いつの間にか午前0時を回っていた。
部屋の電気を消して、布団を頭までかぶった。
眠りたい。
何も考えずに眠ってしまえたらいいのに。
そう願いながら、私は静かに目を閉じた。
(今日が終わるよ、りあ。)
そして明日も、
きっと同じ一日が始まる。
――どうして私は、こんなにも「普通」なんだろう。
特別かわいいわけでもないし、見ていられないほど不細工というわけでもない。
勉強も運動もそこそこ。何か秀でたものがあるわけでもない。
私の周りには、かわいい子がたくさんいる。
性格がよくて、誰からも好かれている子も、何をしなくても人が集まってくる子もいる。
じゃあ、私は。
私には何があるの。
毎日なんとなく学校へ行って、なんとなく笑って、なんとなく一日が終わる。
タイムループしているわけでもないのに、今日と昨日の違いなんて思い出せないくらい、同じような一日を繰り返している。
それなのに時間は止まってはくれず、私は少しずつ大人になって、老いていく。
何も残せないまま。
酸素を吸って二酸化炭素を吐いて。
地球温暖化を進めているだけの存在なんじゃないか、なんて。
そんな馬鹿みたいなことまで考えてしまう。
「りーあ!」
突然、背中に声が落ちてきた。
はっとして振り返ると、胡桃がスマホを片手に満面の笑みを浮かべている。
「見て、りあ! この右の人と左の人、どっちがタイプ?」
画面には二人の男性が並んでいた。
右は色白で涼しげな塩顔。いかにも胡桃が好きそうな顔だ。
左は日に焼けた肌に彫りの深い顔立ちで、どこか落ち着いた雰囲気があった。
「私は左かな。」
「だよね~! 絶対そう言うと思った!」
その声に引き寄せられるように、凛華が眠そうな目をこすりながら近づいてくる。
「おはよー。あれ、今日って小テストあったっけ……?」
それをきっかけに、私の机の周りにはいつものようにひとが集まり始めた。
「あ、それ私も見た!」
「昨日さー、マジで最悪だったんだけど。」
「ガチであの先生おもろい!」
四方八方から違う話題が飛んできて、私は聖徳太子にでもなった気分だった。
「めっちゃ面白かったよね。」
「え、それは嫌だね。」
「それな。」
誰とも気まずくならないように。
誰も置いていかないように。
同じくらい笑って、同じくらいうなずいて、同じくらい相づちを打つ。
そういうのは、昔から得意だった。
キーンコーンカーンコーン。
ホームルーム開始のチャイムが鳴る。
すると、さっきまでの賑やかさが嘘みたいにみんな自分の席へ戻っていく。
まるで魔法が解けたみたいだった。
そのあとも授業を受けて、お昼を食べて、友達と笑って。
気づけば一日は終わっていて、私は家に帰ってきていた。
靴を脱ぎ、制服のままベットへ倒れこんだ。
天井を見つめる。
今日も、何もなかった。
でも、「何もなかった」ということが、
胸の奥をじわじわと締め付ける。
「あぁーーーー……」
叫びたくて布団に顔を押し付ける。
思いきり声を出したつもりなのに、漏れたのは自分でも情けなくなるほど小さな声だった。
「なんで……」
その先は言葉にならなかった。
涙だけが勝手にあふれてくる。
理由なんてない。
いや、あるのかもしれないけれど、自分でもわからない。
気づけば泣いている。
ただ、ときどきこういう日がある。
週に一度くらい、
何もなくても泣いてしまう夜が――。
学校のみんなは、きっと想像もしないだろう。
昼休みに笑っていた私が、夜には一人で布団の中で泣いていることなんて。
時計の針は、いつの間にか午前0時を回っていた。
部屋の電気を消して、布団を頭までかぶった。
眠りたい。
何も考えずに眠ってしまえたらいいのに。
そう願いながら、私は静かに目を閉じた。
(今日が終わるよ、りあ。)
そして明日も、
きっと同じ一日が始まる。
