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月詠さんのあの電話から、会って詳しく話そうと言われ今現在、陶揮は東京のど真ん中のビルにいる。
呼び出され、控室に案内された陶揮は顔を真っ青にし、考えにふけっていた。
(…自分なにかしたか…?というより何故月詠さんって人は自分なんかをあの望早学園に…?…オーディションを見て?…いや、ないだろう…)
そこまで考え、陶揮の考えは一つにまとまった。
(…詐欺だな‼‼‼‼うん‼‼‼)
我ながらいい考えへ行った…と満足する。
詐欺=断らないといけない。
下手に否定して恨みを買うと…指詰めろって言われるかな。
そんな時代遅れの事を考えながらも、やはり顔が真っ青になってしまう。
そんな表情の忙しい陶揮のいる部屋の、ドアがガチャリと音を立てて開く。
(…断ろう…)
そう決断した陶揮の考えが粉々になるのを知りもせず。
ドアから入ってきたのは、まだ若い、可愛らしい女性だった。
いや、可愛いはセクハラか…?と意識が飛んでいた陶揮をきれいな声で戻してくれた。
「おまたせしてすみません。私は、お電話かけさせてもらいました、月詠です」
「…あ、佐久間です」
ハッとし、すぐ挨拶を返す。
すると月詠さんはニコリと笑い、「どうぞ」と椅子を勧めてきた。
「…あ、えっと…」
そこから話が広げれない陰キャはおどおどしてしまう。
月詠さんはそんな陶揮の様子を呼んでくれて、話を始めてくれた。
(…あ、ありがたい…‼‼)
この人は絶対いい人だ…と、断ることをすっかりと月詠さんに粉々にされてしまった。
「お電話をしたときは、突拍子に話を勧めたことは申し訳ありませんでした」
「…いえ、全然…」
身振り手振りで大丈夫だと必死に否定する。
確かに、話を勧められたのはびっくりしたが、陶揮にはまだ何の実害もないし「こぅらぁ、何やってんじゃてめぇ‼‼」と、怒る資格もなんにもない。
「改めて、お伺いします。…アイドルを育成する学園…望早学園に入学する気はありませんか?」
「…いや待ってください?なんぜそんな話になったんでしょうか」
ストップと手を挙げる。
すると、月詠さんにはそこから?という顔をされた。
(…初心者に優しくしてほしいんですよ?)
月詠さんは、そんな顔をしながらもゆっくり話してくれる。
「…あなたの出演したオーデション…の不正はご存知でしょうか?」
「…っ」
オーディションとは、あの晃介が受かったやつだろう。
(…やっぱり、不正は事実だったか…)
陶揮は、うつむき唇を噛みしめる。
月詠さんはそんな陶揮を無表情で見据えながら話を進める。
「協議会会長の目にそのオーデションが止まり、そこに参加されていた佐久間陶揮さん…貴方の実力が認められ、会長から望早学園に推薦されました」
「…はぁ」
陶揮の納得していないような返事に、コトリと月詠さんは首を傾げた。
「貴方は、人々にその実力が認められたのですよ?…誇らしいと思わないのですか?」
「…認められた…」
「…あなたの意見を最優先しますから、断っても良いんです。…けれど…」
そう言いながらも月詠さんはスッと指を指した。
「歌っているとき、あなたは少し、前を向いていましたよ」
「…っ!」

「とーうき」
(結局、断りきれなかった…)
遠い目で陶揮はため息を付いた。
「陶揮‼‼‼‼‼」
「おわぁっっっ」
突然、耳元で叫ばれびっくりして振り向くと花乃がムスリとした顔で頬を膨らませた。
そしてニヤニヤして詰め寄ってくる。
「ん?ん〜?もしかして、他の女の子のこと考えていたのかい〜〜〜?私というものがありながら〜〜〜‼‼」
「ちげぇよ」
「じゃあ何なのさ?さ?」
うるさく追求してくる声をきいながら陶揮はタブレットを操作する。
『「RIVAMIRON・芸能事務所」ホームページ』
月詠さんの名刺を見ながらたどり着いた芸能事務所だ。
そのままスクロールし、関係者・マネージャ紹介のところへ映る。
そこに、一つの名を見つけた。
『月詠 兎光』
(…月詠さんだ)
「わ〜、わはひほのひほひっへるほ〜‼‼(あ〜私この人知ってるよ〜)」
「…なんで知ってるんだよ」
一応なんとか聞き取れた言葉にふー、とため息を付きながら返す。
花乃はゴクリと食べ物を飲みこみ、口端についた食べ物をつけたままフフンと胸を張って答える。
「この人はね〜、あの有名な伝説のアイドル『Right』のマネージャーだったんだよ〜〜〜‼‼‼‼‼」
「らいと…って何?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉君そんな事も知らないのかい‼‼‼‼‼」
「…っるさ」
耳元で大声で叫ばれたため、キーンと耳鳴りがしている。
花乃は熱狂するように拳を握って語り始めた。
「月詠 兎光さん、その人は『Right』世界有数な超有名アイドルグループ‼‼‼世界のアイドルの歴史で一番売れたアイドル‼‼‼」
「へぇー、すごいすごいーーーーー」
「空返事やめな、そこのグッドボーイよ」
陶揮の空返事にビシリと指を指す花乃。
「…んで、そんな凄腕マネージャさんがどうかしたのかい?陶揮くんよ〜‼‼」
「…なんでもない」
ぶっきらぼうに答えると、花乃はふむ、と顎に手をかけてニヤリと笑う。
「なんでもなかったらそんなことないでしょ〜?…うん、凄腕幼馴染の花乃さんにはわかる、わかるよ〜〜」
「何が」
「…大方、陶揮の才能がお偉いさんに目が止まって、月詠様に芸能事務所に誘われた〜っ的な感じがな?」
その素晴らしい読心術で陶揮は思わず後ずさってしまった。
「っ、お前、読心術でも心得たか?」
「ふっ、私の才能が爆発してしまった…ああ、自分が怖い…才能が怖いよ…」
サラッと花乃は厨ニ病発言をくらましてきた。
「ん〜、せっかく陶揮の才能が認められたんじゃん〜、行っておいでよ〜」
「…自分には、あんなキラキラした世界は似合わないんだよ」
「…そうかな?…じゃ、あたしは帰るわ〜」
「ん」