「ほお〜、人多いなぁ。さすが、Aクラスの伝統やなが」
憧人は会場を見渡し、関心のあまり声に出た。
「叶さん〜、楽しみさのあまり飛び入り参加だけはしないでくださいね」
「そんなんわかっとるやか」
憧人に冷ややかな目を向けて、全く信用していないように見るのは圭だ。
むぅっと憧人は子どものように頬をふくらませる。
そんな二人を見てのほほんとしているのは澪と和樹だ。
「ふふ、いつもに増してテンションが高いね」
「ですね。特に叶は今日の演技を楽しみにしているとか。圭もなんだかんだ言って西野と仲が良いですもんね。…あ、会長、あの席空いてます」
ふふふ、と笑う澪に対して、冷静に状況を分析する和樹。
和樹はいつも問題児のストッパーとして起用されるのでこういう雰囲気には持ってこいの人物だ。
「それにしても人が多いですね…」
和樹がびっしりと隙間なく座った客を遠目で見る。
「なんだって、今日はアイドル界の新星・佐久間陶揮くんがパフォーマンスするんだからね。スカウターは殆ど来てるんじゃないかな?」
「初風副会長!」
横からヒョコリと飛び出てきて説明してくれたのは、いつも学園内に潜んでるという噂の千早だった。
「ずいぶんと久しぶりですね」
「ふふ〜、ボクは何度か学園内で和樹くんを見たよ〜」
千早は可愛らしい顔でニヤッと笑う。
「そこにいたと思えば消え、消えたと思えばそこにいる。…忙しい人ですね」
「んふふ〜、忍者って呼んでくれてもいいよ〜?」
和樹がジト目で見るも、千早はなんにも気にしていないようなにこにこ顔で返答した。
「あ!いたいた!会長〜、!」
「流歌に士。遅かったじゃないか」
遠くから駆け寄ってきたのは流歌と士だった。
「すみません、ファンに出待ちされ…少し遅れました」
「オレは士先輩を待った!」
わぁ!と手を上げて主張する流歌。
「オレは悪くない!」とでも主張したいのか。
そんな二人をよそに、ふるふると震えている人物がいた。
「和樹?どうしたんだい?」
そう。
和樹だ。
和樹にしては珍しく、根詰まったように叫んだ。
「俺には出待ち一人もいなかったのに、なんで俺より芸能歴後輩のやつに出待ちファンが居るんだよ!いいな!」
嫉妬だ。
「和樹先輩〜見苦しいですね〜、嫉妬?」
「うるさいよ、流歌くん」
流歌がいじるので和樹が静止させる。
さすがの手際だ。
そうしてワイワイと生徒会が集合し、席につく。
周りの一般生徒は突然の生徒会の登場に目を丸くし、一部の生徒は頬を染め、また一部の生徒は恐れをなして周りの席から立ち退いていく。
(…ずいぶんとさっきよりも人は減ったな…)
澪は周りを見渡す。
先程の士や和樹のステージとは弾と違い、人は多いが先程までの人数はいなかった。
(大方、今残っているのは活躍している人気アイドルを現事務所から引き抜いて、活躍させて手柄を狙う底辺事務所か…)
呆れて澪が肩をすくめたとき。
「よお」
後ろから不意に声をかけられた。
聞き覚えのある声に、目を薄く開き振り返る。
その人物に澪はなるべく温厚に挨拶する。
「…久しぶり、斗真さん」
「ははっ、何だ、現生徒会が揃いも揃って。あぁ、哀れな不人気アイドルの顔でも見て施しを与えようとでも考えているのか?」
そこには背が高く、白い眼鏡をかけた青年がいた。
斗真と呼ばれた青年は、黒い目で澪のことこ睨んでいた。
澪はその目を見なかったことにして、ニコニコと話しかける。
「相変わらず、私のことがお嫌いなようで」
「あぁ、よくわかってんじゃねぇか、そうだぜ、オレはお前のことが大嫌いだ」
斗真はふはっと不敵に笑う。
周りにいる生徒会のメンバーも硬い表情をして澪を守るように前に出る。
それを静かに澪は止める。
「…それで、斗真さんは何をしに?」
澪の問いに斗真は無言でポケットの中から紙を取り出す。
封筒らしい黒い用紙に白いペンで滑らかに文字が書いてあった。
その中からこのコンサートのチケットを取り出した。 ・・・
「ご丁寧に、郵送で送ってきやがった。恐らく…というか、多分あいつからだ」
「……」
澪は無言で黙り込んだ。
「俺はお前らに用はない。ただ優雅にその席に座っているのが気に入らなかったから挨拶に来てやっただけだ」
その言葉を残し、斗真は去っていく。
残された澪は無言でうつむいたままだ。
「会長?」
和樹が心配して声をかける声も聞こえていない。
(…やっぱり)
「___仕方がないよな…」
ボソリとつぶやく。
それはほとんど周りのものに聞こえない小さなつぶやきだった。
ゆっくりと顔を上げた。
いつもは優しく開かれている瞳には暗く影ができていた。
『新しい音楽は世界に』
(ふざけているだろう…相変わらずだ、性格の悪い)
その手紙の送り主を思い浮かべ、思わず笑ってしまう。
「会長、大丈夫ですか?」
「…あぁ、大丈夫だよ」
澪は優しく答え、前を向く。
会場は暗くなり、コンサートが始まろうとしていた。
『明日へと 花に変えようか』
ライトの中心に一人、現れた。
その声で観客のざわめきが止まる。
誰もが見入るように舞台に注目した。
そこには、佐久間陶揮が佇んでいた。
『遠くの物を どうしても注意してしまう 大事を見つけられないんだ』
横からすっと出てきてピースを決めながら歌うのは憐。
『明日なんか考えずとも 大事なものは』
陶揮と憐の間から出てきたのは樋坂。
観客から声が聞こえる。
『ずっと そばに あるから』
ライトが一点に集まり、中心には光希が現れる。
すると一番歓声が上がった。
『Let`s go!』
『君の瞳に似た色の花を 渡しに行こうと 駆け出すんだ』
『新しい世界のかけらを 集めて 結んでyey』
陶揮は周りを見る。
汗が滴り落ち、床へ滑る。
そして、笑った。
音楽が止まり、動きが止まった。
そしてポツリと流歌が呟いた。
「勝確…だよな」
「いや」
すぐさま澪が否定する。
「惜しいね」
憧人は会場を見渡し、関心のあまり声に出た。
「叶さん〜、楽しみさのあまり飛び入り参加だけはしないでくださいね」
「そんなんわかっとるやか」
憧人に冷ややかな目を向けて、全く信用していないように見るのは圭だ。
むぅっと憧人は子どものように頬をふくらませる。
そんな二人を見てのほほんとしているのは澪と和樹だ。
「ふふ、いつもに増してテンションが高いね」
「ですね。特に叶は今日の演技を楽しみにしているとか。圭もなんだかんだ言って西野と仲が良いですもんね。…あ、会長、あの席空いてます」
ふふふ、と笑う澪に対して、冷静に状況を分析する和樹。
和樹はいつも問題児のストッパーとして起用されるのでこういう雰囲気には持ってこいの人物だ。
「それにしても人が多いですね…」
和樹がびっしりと隙間なく座った客を遠目で見る。
「なんだって、今日はアイドル界の新星・佐久間陶揮くんがパフォーマンスするんだからね。スカウターは殆ど来てるんじゃないかな?」
「初風副会長!」
横からヒョコリと飛び出てきて説明してくれたのは、いつも学園内に潜んでるという噂の千早だった。
「ずいぶんと久しぶりですね」
「ふふ〜、ボクは何度か学園内で和樹くんを見たよ〜」
千早は可愛らしい顔でニヤッと笑う。
「そこにいたと思えば消え、消えたと思えばそこにいる。…忙しい人ですね」
「んふふ〜、忍者って呼んでくれてもいいよ〜?」
和樹がジト目で見るも、千早はなんにも気にしていないようなにこにこ顔で返答した。
「あ!いたいた!会長〜、!」
「流歌に士。遅かったじゃないか」
遠くから駆け寄ってきたのは流歌と士だった。
「すみません、ファンに出待ちされ…少し遅れました」
「オレは士先輩を待った!」
わぁ!と手を上げて主張する流歌。
「オレは悪くない!」とでも主張したいのか。
そんな二人をよそに、ふるふると震えている人物がいた。
「和樹?どうしたんだい?」
そう。
和樹だ。
和樹にしては珍しく、根詰まったように叫んだ。
「俺には出待ち一人もいなかったのに、なんで俺より芸能歴後輩のやつに出待ちファンが居るんだよ!いいな!」
嫉妬だ。
「和樹先輩〜見苦しいですね〜、嫉妬?」
「うるさいよ、流歌くん」
流歌がいじるので和樹が静止させる。
さすがの手際だ。
そうしてワイワイと生徒会が集合し、席につく。
周りの一般生徒は突然の生徒会の登場に目を丸くし、一部の生徒は頬を染め、また一部の生徒は恐れをなして周りの席から立ち退いていく。
(…ずいぶんとさっきよりも人は減ったな…)
澪は周りを見渡す。
先程の士や和樹のステージとは弾と違い、人は多いが先程までの人数はいなかった。
(大方、今残っているのは活躍している人気アイドルを現事務所から引き抜いて、活躍させて手柄を狙う底辺事務所か…)
呆れて澪が肩をすくめたとき。
「よお」
後ろから不意に声をかけられた。
聞き覚えのある声に、目を薄く開き振り返る。
その人物に澪はなるべく温厚に挨拶する。
「…久しぶり、斗真さん」
「ははっ、何だ、現生徒会が揃いも揃って。あぁ、哀れな不人気アイドルの顔でも見て施しを与えようとでも考えているのか?」
そこには背が高く、白い眼鏡をかけた青年がいた。
斗真と呼ばれた青年は、黒い目で澪のことこ睨んでいた。
澪はその目を見なかったことにして、ニコニコと話しかける。
「相変わらず、私のことがお嫌いなようで」
「あぁ、よくわかってんじゃねぇか、そうだぜ、オレはお前のことが大嫌いだ」
斗真はふはっと不敵に笑う。
周りにいる生徒会のメンバーも硬い表情をして澪を守るように前に出る。
それを静かに澪は止める。
「…それで、斗真さんは何をしに?」
澪の問いに斗真は無言でポケットの中から紙を取り出す。
封筒らしい黒い用紙に白いペンで滑らかに文字が書いてあった。
その中からこのコンサートのチケットを取り出した。 ・・・
「ご丁寧に、郵送で送ってきやがった。恐らく…というか、多分あいつからだ」
「……」
澪は無言で黙り込んだ。
「俺はお前らに用はない。ただ優雅にその席に座っているのが気に入らなかったから挨拶に来てやっただけだ」
その言葉を残し、斗真は去っていく。
残された澪は無言でうつむいたままだ。
「会長?」
和樹が心配して声をかける声も聞こえていない。
(…やっぱり)
「___仕方がないよな…」
ボソリとつぶやく。
それはほとんど周りのものに聞こえない小さなつぶやきだった。
ゆっくりと顔を上げた。
いつもは優しく開かれている瞳には暗く影ができていた。
『新しい音楽は世界に』
(ふざけているだろう…相変わらずだ、性格の悪い)
その手紙の送り主を思い浮かべ、思わず笑ってしまう。
「会長、大丈夫ですか?」
「…あぁ、大丈夫だよ」
澪は優しく答え、前を向く。
会場は暗くなり、コンサートが始まろうとしていた。
『明日へと 花に変えようか』
ライトの中心に一人、現れた。
その声で観客のざわめきが止まる。
誰もが見入るように舞台に注目した。
そこには、佐久間陶揮が佇んでいた。
『遠くの物を どうしても注意してしまう 大事を見つけられないんだ』
横からすっと出てきてピースを決めながら歌うのは憐。
『明日なんか考えずとも 大事なものは』
陶揮と憐の間から出てきたのは樋坂。
観客から声が聞こえる。
『ずっと そばに あるから』
ライトが一点に集まり、中心には光希が現れる。
すると一番歓声が上がった。
『Let`s go!』
『君の瞳に似た色の花を 渡しに行こうと 駆け出すんだ』
『新しい世界のかけらを 集めて 結んでyey』
陶揮は周りを見る。
汗が滴り落ち、床へ滑る。
そして、笑った。
音楽が止まり、動きが止まった。
そしてポツリと流歌が呟いた。
「勝確…だよな」
「いや」
すぐさま澪が否定する。
「惜しいね」


