START☆MUSIC

朝、集合場所へ向かうとすでに光希、樋坂、憐は集まってワイワイしていた。
…否、主にワイワイしているのは憐だけで、樋坂はスマホを見ているし、光希は震えながらブツブツ何かをつぶやいている。
陶揮はいつもらしいな、と思いながら三人のいるところへ向かう。
「あ、来たっすよ陶揮ー‼こっちっす!」
「相変わらず元気だね」
憐が陶揮を見つけ、ぶんぶん手を振る。
樋坂はイヤホンを外して陶揮に手を振った。
「おはよ。ついに今日だな」
「あぁ…、ぼ、僕なんかができない…怖い…失敗したら一生物の傷になって芸能界で使い捨てにされて干されて何年後かに自宅でファンに殺された哀れなアイドルとして忘れられて行くんだ…あぁもう嫌だ…死にたくない…」
「樋坂さん。今日はよろしくお願いします。…光希くんは、大丈夫そう…じゃなさそうだね…」
ブツブツつぶやいている光希はひとまずおいておくことにする。
(相変わらずというか…、)
陶揮は三人のいつも通りさに驚きながらも、心でホッとした。
(…これなら、いつもの自分で行けそう…)
「気合十分!何が何でもベテラン組には勝つっすよ!」
憐がヒョコリと出てきて自信満々な笑みでふんすと気合を入れる。
「ベテラン組って?」
陶揮が疑問をこぼすと、すかさず樋坂が説明する。
「まあ主に、芸能歴ゆうに十年は超えている士、巳、亮、和樹たちだな。特に西野・士・和樹と入っているチームは脅威になるだろう」
「マアイさんってすごい人なんですか?」
聞き馴染んだ名前に反応する陶揮。
あのおっとりとしたマアイがするパフォーマンスは気になっていたが、本当にすごいのだろうか。
樋坂は心底悔しそうな顔をする。
「オレ等より遥かにすごい。なぜあれでアイドルグループに入っていないのか不思議だ。…ま、見たほうが速いだろう」
マアイのパフォーマンスが心底楽しみになった。
「まー、まとめて言うと、芸能歴がまだ浅いオレ達は今回の戦いにおいて最も不利なわけっすよ」
「まあ、ここには天下の『COUNT』メンバー歌の実力は望早でもトップを争うレベルの桜間光希に、ネットで大騒ぎ、横に立てるものはいない歌唱力の持ち主である新星・佐久間陶揮、ダンスが主要のグループ『SNOW・SNOW』のメンバー二人もいんだ」
ふう…と呆れたように肩を落とす樋坂をよそに、陶揮は今聞こえた言葉にものすごく動揺していた。
そして思わずストップ要請を出す陶揮。
「ん?どうしたっすか、陶揮?」
「待って、そんなネットってざわついてたの?」
そう。
(外行く度にくっそジロジロと視線を多かったし…話しかけられるほどじゃなかったけど、女子のヒソヒソもよく見てたし…否、自意識過剰っ…?)
ぐるぐると頭の中で回る意見に陶揮は混乱する。
「何だっけ、あれでデビューしたグループってね、ね、ねばー?すごいっすよね」
「ああ、腐っても幹島 航がプロデュースしてんだ。そこにヤバいほど歌上手い無名の奴、特にお前みたいなやつがいれば、話題にならないことはねぇだろ」
つかれたとでも言うように肩をとんとん叩きながら喋る樋坂。
「…そんなん話してたら、始まんぞ」
「うわあああああ、失敗したら飛ばされるううっっ‼‼‼‼‼」
「会長はそんなことで飛ばすような人じゃないから大丈夫っすよ、どうせやるなら爆発していこうっす‼」
頭を抱える光希に呑気に言葉をかける憐。
「それで燃えカスと化してTVで使われなくなって降板するの…?」
「あ、今のナシっす」
想像より斜め上の返答にビビった憐。
いきなり真顔になった。
「じゃあ、引き続きそこの二人は情緒安定を控室でやっといてもらって。佐久間、パフォーマンス見に行こう」
「え?」
「西野のパフォーマンス見に行きたいんじゃないのか?俺も個人的に見たい奴らがいるからな」
陶揮の心を読んだような樋坂の発言にびっくりするが、嬉しかった。