「『喜びと 希望の歌を 咲き誇れ大事な思い この場所から続いて行く』」
陶揮は薄っすらと目を開けふぅっと息を吐く。
そして視界から消えた憐を探し見てみると、思いっきり後ずさっていた。
「す、すすすごすぎるっすぅぅぅ⁉や、やややややややばいっすよこりゃあなんすかその声はっ⁉」
「あ、ありがとう?憐もうまいと思うけどな…」
「ここここ、光栄っす‼‼」
逃げながらも一応返事をする憐。
そんな憐に微笑むと更に後ずさってる。
「憐『SNOW・SNOW』でのメインボーカルでしょ?」
「けど俺、最近声変わりで低くなっちゃってハスキーが出ないんですよ…」
「ううん。大丈夫。君なら声変わりごときでハスキーを失うことはないよ、自分に任せて」
「…?」
突然不可解なことを言い出す陶揮に疑問を見る憐。
ハスキーとは、高い声で出す音のことで声帯が関係している生まれつきのものだ。
特に男性は成長とともに声が低くなる変化が見られ、ハスキーを特徴とする歌手などは、声変わりを来に挫折してしまう事が多い。
そのため人が少なく貴重とされている部類なのだ。
憐はそのハスキーを持ち味としている歌手で、ファンも多い。
最近になって声変わりが始まったのだろう。
ライブでのソロが少なくなったのはそれが原因だろう。
「そう。そうすれば…」
「…___っ⁉な、なんで⁉」
「良かった。憐くんならこの方法できると思ったんだ」
陶揮はどちらかと言うと中音の人間なので高音(ハスキー)のことはよく知らなかった。
(…悔しいがあの時の知識が役に立った)
陶揮は目を細めて心の内でつぶやいた。
「…すごいね、陶揮。俺だけじゃ、絶対無理だったよ…このまま、無くなる声だと思ってたのに」
「…無くなるかもしれないよ。今後次第で。更に出るようになるかもしれないし、下がるかもしれない。憐くん次第だよ」
「‼」
陶揮の言葉に目を見開く憐。
そしてアイドルらしくない崩れた笑みを浮かべて憐は陶揮に抱きついた。
「陶揮、ありがとっす!」
「…いや、自分は当然のことをしただけだよ?」
「あははっ、陶揮はやっぱ良いやつっすね!」
「…いい、やつ…ですか」
「陶揮?」
急に黙り込んでしまった陶揮を見て憐は心配そうに聞いてくる。
けれども陶揮はすぐにもとの自信なさげな顔に戻った。
「大丈夫、なんでもないよ。…そろそろ、時間だよね」
「あっ、もう22時っすよ!門限がやばいっす!寮の門がしまってしまうっす!」
「あ、それは深刻にやばいやつだね…。光希くんと樋坂もまだ練習してるっぽいから伝えて早く帰ろう」
「そうっすね」
それから数日後。
陶揮は廊下を歩いていた。
(…いい奴、か。何でも諦めて、消極的な自分が、か…)
少しうむつきながら頭の中で考えていた。
『お前なんて捨てられて当然だ。悪魔の子が』
昔繰り返されたその言葉に陶揮の普段明るい瞳が暗くなった瞬間…。
後ろから声をかけられた。
「陶揮くん」
「あ、マアイさん」
明るい瞳に戻り、マアイを見つめる。
ニコニコしながら手を振るマアイ。
「陶揮くん〜、どうだったぁ?メンバーの顔合わせはぁ〜?」
「…樋坂さんと憐くんと光希くんだったよ。…マアイさんは?」
「私はですねぇ、士さんと和樹くんでしたよぉ」
士と和樹。
なんという常人組み合わせだろう。
(いいなぁ…)
少しそんなふうに思ったが、首を振り考えを戻した。
「3人組だったんですね。…そういえば、マアイさんはグループにはいってないんでしたっけ。珍しいですね。Aクラスの人たちはたいていグループに入っているのに。なにか理由があるんですか?」
「う〜ん、私は基本的に、グループに入りたくないですからねぇ。だって縛られて自由気ままに歌ったり踊ったりできないじゃないですかぁ〜。他にも理由はありますがぁ、基本的にはそういうこととして認識してくださいねぇ〜」
マアイはそれ以上聞くなと遠回しで言ってきていたので、それ以上に聞かないようにする。
その可有り、マアイの言葉が陶揮の心のなかで繰り返される。
「そうなんですか。…縛られずに、自由に…」
「そろそろ、陶揮くんも一般科の授業じゃないですかぁ?じゃあまた、アイドル科の授業のときにぃ〜!」
「あ、そうですね。じゃあ、また」
そうしてマアイと別れて1年2組の教室へ向かう。
ガラリと扉を開ける。
すると何故かものすごい視線を感じた。
主に女子。
ソロリソロリと自分の席に行こうと歩いていくと、目の前に人が立ちはだかった。
そして女子等は顔を赤くしながら詰め寄ってきた。
「さ、佐久間くんってオーディションに出てた人だよね、あの最終選考で残ってた!」
「歌上手いし、最初見た時は佐久間くんじゃないと思ってたよ!雰囲気も違うしね!」
「それそれ!」
「あの、陶揮くん、私と連絡交換してくれない?」
「ずるい!ねぇ陶揮くん、わたしも!」
と、すごく詰め寄られあたふたとなる。
視線を泳がせてると、ふと流歌と目があった。
流歌は必死で何かを伝えようと手を動かしている。
流歌は紙を取り出し何かを書きつけ見せた。
そこには…
『スイッチ変えて!』
とのこと。
(スイッチって何のこ…ああ!なるほど!)
流歌の言う意味がわかった陶揮は前にいる女の子たちを見てニコリと微笑んだ。
「俺は女の子とはライン交換しないんだ、ごめんね。その代わり、これからも仲良くしてほしいよ」
そう言うと女の子たちはキャーと叫びながら消えていった。
「ありがと、流歌」
「いーよ、いーよ!とうき困ってたろ?いつも音楽聞かせてもらってるお礼!」
「ふふ、そ」
流歌とは仲良くやっている。
「そいえば聞いたよ、あの焼き肉合戦やるんでしょ?幻っていう」
「あ…、うん。やるけど」
「いいな〜、オレも行きたいだけどさ…ここで言いますがっ、Bクラスって怖いから呑気にそんなこと言ったら目で潰されるっっ…」
くううっ、と拳を握りしめながら涙ながら弱く言う流歌。
その言葉に陶揮は疑問を浮かべる。
「そんな怖いの?Bクラスの人」
「そうだよぉぉぉっ…、だって…桜木先輩とかっ、目が死んでるしっ‼‼」
流歌はプルプルしながら陶揮にすがりつく。
よほど怖いのか、震えている。
「桜木…あ、確か和樹さんと一緒のグループの人だよね?『DRAW』の」
「そうそうっ!その人とかっ、他にもいんけど怖いんだよっ!…だからオレも早くAクラス入りしてあの怖目から逃げる!って決めてる」
「__だ〜れが『目が死んでる』って?」
不意に後ろから聞こえた声に、流歌の肩がビクリと揺れる。
恐る恐る振り返る流歌と一緒に陶揮も振り返ると、そこにはきれいな整った顔をした男性…桜木圭さんがいらしゃった。
「さ、桜木先輩⁉ど、どどどどど、どこからいましたっ⁉」
「『スイッチ変えて!』らへんからずっといたが」
「結構最初らへんからだね」
圭は無表情のままギロリと流歌を見た。
それにより流歌はビクリと肩を揺らす。
そんな二人に挟まれる陶揮。
(…自分、被害者かな?)
ふんわりそんなことを思っていたが、今から現れるもので状況がいっぺんに変化する。
「…わぁ〜!圭くんじゃないですかぁ〜、こんなとこで何用ですかぁ?」
「げっ…出たな、西野マアイっ!…流歌、今日生徒会会議の予定が入っている、お、遅れるなよ!会長をまたすことは言語道断だからな!」
圭はビシリと言い放ち、逃げるように去っていく。
「あ〜、圭君ひどいですよ〜、いきなり逃げるなんて〜!」
その背中をマアイが残念そうに見つめながら追いかけていった。
(…マアイさんは何をしにここへ…?)
そんな思いもありながら陶揮は圭たちが去っていった方向を見た。
先ほど、生徒会会議という言葉が系の口から出ていた。
陶揮は助かった…と息をつく流歌に聞く。
「生徒会役員なの?」
「うん、こう見えて一応だけど」
流歌ZXはフフンと胸を張るように言う。
「生徒会ってどんな人いるの?」
「うん…そうだな〜ほとんどがアイドル科の生徒なんだけど、生徒会の会計は松田先輩、書記は士先輩とさっきの桜木先輩で、庶務がオレと憧人先輩、副会長が千早さん、会長が今井先輩ってとこかな〜?」
聞いたことない名前もあったが、和樹と士がはいっているとは。
「ちなみに桜木先輩の天敵はマアイさんだよ」
「あ〜…、だからさっき逃げたのか…」
あの焦りようは納得だ。
「…生徒会か…」
陶揮は薄っすらと目を開けふぅっと息を吐く。
そして視界から消えた憐を探し見てみると、思いっきり後ずさっていた。
「す、すすすごすぎるっすぅぅぅ⁉や、やややややややばいっすよこりゃあなんすかその声はっ⁉」
「あ、ありがとう?憐もうまいと思うけどな…」
「ここここ、光栄っす‼‼」
逃げながらも一応返事をする憐。
そんな憐に微笑むと更に後ずさってる。
「憐『SNOW・SNOW』でのメインボーカルでしょ?」
「けど俺、最近声変わりで低くなっちゃってハスキーが出ないんですよ…」
「ううん。大丈夫。君なら声変わりごときでハスキーを失うことはないよ、自分に任せて」
「…?」
突然不可解なことを言い出す陶揮に疑問を見る憐。
ハスキーとは、高い声で出す音のことで声帯が関係している生まれつきのものだ。
特に男性は成長とともに声が低くなる変化が見られ、ハスキーを特徴とする歌手などは、声変わりを来に挫折してしまう事が多い。
そのため人が少なく貴重とされている部類なのだ。
憐はそのハスキーを持ち味としている歌手で、ファンも多い。
最近になって声変わりが始まったのだろう。
ライブでのソロが少なくなったのはそれが原因だろう。
「そう。そうすれば…」
「…___っ⁉な、なんで⁉」
「良かった。憐くんならこの方法できると思ったんだ」
陶揮はどちらかと言うと中音の人間なので高音(ハスキー)のことはよく知らなかった。
(…悔しいがあの時の知識が役に立った)
陶揮は目を細めて心の内でつぶやいた。
「…すごいね、陶揮。俺だけじゃ、絶対無理だったよ…このまま、無くなる声だと思ってたのに」
「…無くなるかもしれないよ。今後次第で。更に出るようになるかもしれないし、下がるかもしれない。憐くん次第だよ」
「‼」
陶揮の言葉に目を見開く憐。
そしてアイドルらしくない崩れた笑みを浮かべて憐は陶揮に抱きついた。
「陶揮、ありがとっす!」
「…いや、自分は当然のことをしただけだよ?」
「あははっ、陶揮はやっぱ良いやつっすね!」
「…いい、やつ…ですか」
「陶揮?」
急に黙り込んでしまった陶揮を見て憐は心配そうに聞いてくる。
けれども陶揮はすぐにもとの自信なさげな顔に戻った。
「大丈夫、なんでもないよ。…そろそろ、時間だよね」
「あっ、もう22時っすよ!門限がやばいっす!寮の門がしまってしまうっす!」
「あ、それは深刻にやばいやつだね…。光希くんと樋坂もまだ練習してるっぽいから伝えて早く帰ろう」
「そうっすね」
それから数日後。
陶揮は廊下を歩いていた。
(…いい奴、か。何でも諦めて、消極的な自分が、か…)
少しうむつきながら頭の中で考えていた。
『お前なんて捨てられて当然だ。悪魔の子が』
昔繰り返されたその言葉に陶揮の普段明るい瞳が暗くなった瞬間…。
後ろから声をかけられた。
「陶揮くん」
「あ、マアイさん」
明るい瞳に戻り、マアイを見つめる。
ニコニコしながら手を振るマアイ。
「陶揮くん〜、どうだったぁ?メンバーの顔合わせはぁ〜?」
「…樋坂さんと憐くんと光希くんだったよ。…マアイさんは?」
「私はですねぇ、士さんと和樹くんでしたよぉ」
士と和樹。
なんという常人組み合わせだろう。
(いいなぁ…)
少しそんなふうに思ったが、首を振り考えを戻した。
「3人組だったんですね。…そういえば、マアイさんはグループにはいってないんでしたっけ。珍しいですね。Aクラスの人たちはたいていグループに入っているのに。なにか理由があるんですか?」
「う〜ん、私は基本的に、グループに入りたくないですからねぇ。だって縛られて自由気ままに歌ったり踊ったりできないじゃないですかぁ〜。他にも理由はありますがぁ、基本的にはそういうこととして認識してくださいねぇ〜」
マアイはそれ以上聞くなと遠回しで言ってきていたので、それ以上に聞かないようにする。
その可有り、マアイの言葉が陶揮の心のなかで繰り返される。
「そうなんですか。…縛られずに、自由に…」
「そろそろ、陶揮くんも一般科の授業じゃないですかぁ?じゃあまた、アイドル科の授業のときにぃ〜!」
「あ、そうですね。じゃあ、また」
そうしてマアイと別れて1年2組の教室へ向かう。
ガラリと扉を開ける。
すると何故かものすごい視線を感じた。
主に女子。
ソロリソロリと自分の席に行こうと歩いていくと、目の前に人が立ちはだかった。
そして女子等は顔を赤くしながら詰め寄ってきた。
「さ、佐久間くんってオーディションに出てた人だよね、あの最終選考で残ってた!」
「歌上手いし、最初見た時は佐久間くんじゃないと思ってたよ!雰囲気も違うしね!」
「それそれ!」
「あの、陶揮くん、私と連絡交換してくれない?」
「ずるい!ねぇ陶揮くん、わたしも!」
と、すごく詰め寄られあたふたとなる。
視線を泳がせてると、ふと流歌と目があった。
流歌は必死で何かを伝えようと手を動かしている。
流歌は紙を取り出し何かを書きつけ見せた。
そこには…
『スイッチ変えて!』
とのこと。
(スイッチって何のこ…ああ!なるほど!)
流歌の言う意味がわかった陶揮は前にいる女の子たちを見てニコリと微笑んだ。
「俺は女の子とはライン交換しないんだ、ごめんね。その代わり、これからも仲良くしてほしいよ」
そう言うと女の子たちはキャーと叫びながら消えていった。
「ありがと、流歌」
「いーよ、いーよ!とうき困ってたろ?いつも音楽聞かせてもらってるお礼!」
「ふふ、そ」
流歌とは仲良くやっている。
「そいえば聞いたよ、あの焼き肉合戦やるんでしょ?幻っていう」
「あ…、うん。やるけど」
「いいな〜、オレも行きたいだけどさ…ここで言いますがっ、Bクラスって怖いから呑気にそんなこと言ったら目で潰されるっっ…」
くううっ、と拳を握りしめながら涙ながら弱く言う流歌。
その言葉に陶揮は疑問を浮かべる。
「そんな怖いの?Bクラスの人」
「そうだよぉぉぉっ…、だって…桜木先輩とかっ、目が死んでるしっ‼‼」
流歌はプルプルしながら陶揮にすがりつく。
よほど怖いのか、震えている。
「桜木…あ、確か和樹さんと一緒のグループの人だよね?『DRAW』の」
「そうそうっ!その人とかっ、他にもいんけど怖いんだよっ!…だからオレも早くAクラス入りしてあの怖目から逃げる!って決めてる」
「__だ〜れが『目が死んでる』って?」
不意に後ろから聞こえた声に、流歌の肩がビクリと揺れる。
恐る恐る振り返る流歌と一緒に陶揮も振り返ると、そこにはきれいな整った顔をした男性…桜木圭さんがいらしゃった。
「さ、桜木先輩⁉ど、どどどどど、どこからいましたっ⁉」
「『スイッチ変えて!』らへんからずっといたが」
「結構最初らへんからだね」
圭は無表情のままギロリと流歌を見た。
それにより流歌はビクリと肩を揺らす。
そんな二人に挟まれる陶揮。
(…自分、被害者かな?)
ふんわりそんなことを思っていたが、今から現れるもので状況がいっぺんに変化する。
「…わぁ〜!圭くんじゃないですかぁ〜、こんなとこで何用ですかぁ?」
「げっ…出たな、西野マアイっ!…流歌、今日生徒会会議の予定が入っている、お、遅れるなよ!会長をまたすことは言語道断だからな!」
圭はビシリと言い放ち、逃げるように去っていく。
「あ〜、圭君ひどいですよ〜、いきなり逃げるなんて〜!」
その背中をマアイが残念そうに見つめながら追いかけていった。
(…マアイさんは何をしにここへ…?)
そんな思いもありながら陶揮は圭たちが去っていった方向を見た。
先ほど、生徒会会議という言葉が系の口から出ていた。
陶揮は助かった…と息をつく流歌に聞く。
「生徒会役員なの?」
「うん、こう見えて一応だけど」
流歌ZXはフフンと胸を張るように言う。
「生徒会ってどんな人いるの?」
「うん…そうだな〜ほとんどがアイドル科の生徒なんだけど、生徒会の会計は松田先輩、書記は士先輩とさっきの桜木先輩で、庶務がオレと憧人先輩、副会長が千早さん、会長が今井先輩ってとこかな〜?」
聞いたことない名前もあったが、和樹と士がはいっているとは。
「ちなみに桜木先輩の天敵はマアイさんだよ」
「あ〜…、だからさっき逃げたのか…」
あの焦りようは納得だ。
「…生徒会か…」


