START☆MUSIC

「ここだよな?…『305』…『305』…オッケ‼‼」
今は荷物で手が塞がっているため、インターホンを押す。
そうすれば、カチャリと鍵が空いた音がした。
「…」
出てきたのは、今日アイドル科専攻の授業で見たあの態度が悪い、津葉木 巳だった。
「「あ」」
声が重なった。
そのあと無言で玄関先で見つめ合う。
そんなことを何分続けただろうか。
横の部屋からドタドタと走り回る音がした。
そして玄関のドアがドカーンと大きな音を立てて開いた。
「うっっしゃい〜〜〜‼‼‼‼‼食堂へは一番だぜ、オラァァァァァァァ‼‼‼‼」
「こら、亮‼‼近所に迷惑…ってっ⁉巳さんに陶揮さん⁉」
騒がしく隣室から出てきたのは亮だった。
それを追いかけて出てきたのは、常人・和樹だった。
和樹は亮の首根っこを掴んで暴れる亮を慣れた手つきで戦闘不能にする。
唖然とする陶揮たちの他に、騒ぎを聞きつけ他の人達もやってくる。
「な、何の騒ぎですかっ⁉」
「どうせまた亮が騒いでるんだろ、うるさすぎる…」
最初に駆けつけたのは菊と樋坂だった。
「はぁ…もう、亮‼‼何回言ったら…」
「またですかぁ?ブレーキが利かないですねぇ?」
次に来たのは士とマアイだ。
「マアイも人のこと言えね___ぶっほぉ…」
「亮‼‼‼いらないことは言うな‼‼‼」
サラッと和樹が亮のことを殴っていたが、いつものことだとこの棟の人たちは肩をすくめている。
「りょ、亮さん、ひ、人に迷惑かけたらだめじゃないですか」
「仕方ないっすよ、こいつは聞かんっ」
光希もやってきて、憐がうんうん、と一人納得していた。
やはり、授業でも思ったとおりにこの人たちは型破りだ。
変な人しかいない。
そしてふと陶揮は周りを見渡して思った。
(あれ?Aクラスほとんど集合してないか?)
「はぁ…丁度みんな集合してるし、食堂でも行く?」
士が提案をしてきた。
陶揮も、自分がお腹が空いているのに気付く。
「じゃあ、転入生歓迎ってことで‼‼」
「皆んなはこのあと用事ある?ある人は無理して参加する必要ないけど」
士は見渡す。
「今減量中だけど…何か食べたい…、から行く」
「私も行きましょうかねぇ…お腹すきましたしぃ…」
「あ、僕も行きます!お腹すきましたしね」
「なんせもう7時だしな」
「俺も行くっすよ〜‼‼」
次々と手を上げていく。
その人数を士が数えていく。
「7,8…あ、陶揮くんはどうしますか?」
「え〜、主役いねぇとだめだろ〜」
「あんたはだまんしゃい」
べしりと和樹が亮をぶっ叩く。
(痛いのかな…)
陶揮は率直な感想を思いながらも、とりあえず士の質問に答える。
「あ、全然、大丈夫です」
「良かった。じゃあ来るのは…亮と光希さん、菊ちゃんとかずくん(和樹)ひーさん(樋坂)憐くん、僕と巳と陶揮くん、マアさんの…10人か」
「大人数ですねぇ…」
「食堂のおばさんに別室用意してもらおうぜ‼‼」
「はぁ…」
ぞろぞろと廊下を歩いていく。
いろんな声が聞こえてくる。
そのすべてが、イケボだし。
「陶揮くん〜何やってんの〜早く、置いてかれるよ〜」
「あ、はい」

(ここが、食堂…)
ついて思ったことは一つ。
「広れぇっっ…」
「だよねぇ、それぇ私が入学したときも思いましたよぉ…」
マアイがうんうん、と頷いている。
「ここ、座ろうか」
比較的時間が早かったようなので、人がまばらだ。
士が一番広いテーブルを指して、席についていく。
「ひゃっほい、でっけーテーブr______ぶほぉっ…」
「うるさい亮っっ‼‼‼ここはホントの公共施設なんだからねっ‼‼」
(ナイス常人・和樹さん)
和樹の亮の問題察知スピードといえば、他より群を抜いて早すぎる。
(頭にセンサーでもついてんのかな?)
と、思うほど。
席に座り、陶揮は食事を取っていると士が話しかけてきた。
「陶揮さんって、あのオーディションから望早に推薦されたんですか?」
「え、あ、そうです。一応」
「むほー、おへほほへひへはほー」
「亮、口に物を入れたまま喋らない。すみません、亮は「おおー、俺もそれ見てたぞー」と言いたかったらしいです」
飛び入り参加してきた亮の言葉を素早く通訳する和樹。
「んっ…__お前、すっげぇ作曲うまいもんな‼‼‼お前の曲聞いてめっちゃ俺びっくりしたんだからな‼‼」
「確かに、あれはすごかったですよね」
「あ〜あれか〜、確かに初心者にしては異常だったな」
菊と樋坂も参加する。
(てか、なんで皆んな自分の曲聞いてるんだよ⁉一流アイドルグープまでが‼)
「あの転音すごかったですよね、あの音からできるんですね人間って」
「あ〜、あのやつすか〜…ってか、あれって曲名なんなんすか?」
「そういえば、そうだよね」
憐が、はてなというように疑問を口にした。
それに、他の人達がぐりんっと陶揮の方を見た。
「えっ⁉僕⁉」
「ああ。ここにその作曲者がいるしな」
「で、陶揮さん、あの曲名は⁉」
「ええっ⁉」
なぜか、詰め寄られている陶揮。
士達が期待するようにキラキラした目で陶揮を見る。
それに戸惑うが、陶揮は弁明ならぬ弁明をする。
「そ、そんなに期待するほどかっこいい曲名じゃないですよ」
「良いからっ⁉」
「…す、『記憶』…です」
士たちの声が聞こえなくなった。
(ま、まさか、まじで期待外れだった⁉)        ・・・
そんな不安が陶揮を襲ったとき、士たちが吹き出すように笑った。
「へ?」
「なにそれ、めっちゃいいじゃないですか‼‼」
「ネーミングセンス、バッチリですねぇ〜」
「は、あ、ありがとうございます?」
戸惑いながらも、お礼を述べる。
そうすれば士達は、ニコリと笑った。
「というか、敬語は良いよ。同じ仲間でしょう?」
「そうだぞ〜‼‼ここでは年齢とか関係ないからな‼‼‼‼」
「そ、そうなんですか?」
「ま、そういうことだよぉ、陶揮くん〜」
士たちの態度でわかった。
士たちは、陶揮と仲良くしようとしているのだ。
「あ、じゃあ、改めて、よろしく」
「よろしく」
「よろっす‼‼‼」
「よろしくね、陶揮くん」
「夜露死苦‼‼‼」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますねぇ〜」
「…よろしく」
「よろしく、お、お、お願いしまう…噛んだっっっ‼‼‼」
「お願いする〜」
賑やかな陶揮のクラスのメンバー達は優しいらしい。