あの夏、残り3%の君と、世界でいちばん綺麗なサボり方をした


気がつくと、私は本校舎から渡り廊下を隔てた先にある、旧校舎の空き教室へと足を進めていた。
昭和の面影を残す木造の古い校舎。
今は使われていない、壊れた机や椅子が埃をかぶって積み上げられているだけの狭い教室。
床板は歩くたびにミシミシと頼りない音を立て、窓枠のアルミサッシはひどく錆びついている。
けれどここには、誰も来ない。
今の私には、打ってつけの場所だった。

「……あー、息がつまる」

埃っぽい空気を逃すため、建て付けが悪くて重くなっている窓を両手で力任せに開けた。
キィ、と嫌な金属音を立てて開いた窓から、ぬるい夏の風が、一気に前髪を浚っていく。
楽器ケースを床にそっと置き、私はその場に座り込んで、制服のスカートを気にするのも忘れて膝を抱えた。

遠くの新校舎から、遮るもののないトランペットの音が微かに響いてくる。
――私が抜けたあとのファーストの席で、誰かが吹いている。
きっと、松下さん。
音が、途切れることなく流れていく。
やっぱり、私なんていなくても、世界は綺麗に回っていくんだ。
膝に顔をうずめた瞬間、視界がじんわりと滲み、上靴のつま先に小さな雫が落ちて、濃いシミを作った。

その時、ガラッと、古びた引き戸が大きな音を立てて開いた。

「うわ、先客いるし。てか、あおば。おまえ部活は?」