強豪校と言われる我が校の吹奏楽部にとって、7月23日の県大会は絶対に落とせない舞台だ。
毎年、大会の直前にオーディションでメンバーが選ばれる私たちの高校。
特に今年は、実力のある1年生が大量に入部したせいで、コンクールメンバーに選ばれるための門が例年になく狭くなっている。
2年だからといって、必ず出られるわけではない。
それなのに、私のトランペットは、ここ一週間まともな高音を出してくれなかった。
吹こうとすればするほど音程が崩れ、喉の奥がキュッと締まり、ピストンに添えた指先が自分のものじゃないようにこわばってしまう。
唇がマウスピースの冷たい金属に触れるたび、滑って位置が定まらない。
金管楽器奏者にとって命とも言える唇の感覚が、まるで麻痺してしまったかのように鈍かった。
「白波、聞こえてるか? 音が完全にビビってる。息、ちゃんと通して」
顧問の棒立ちの姿勢、タクトを握る指先が、私への苛立ちを無言で示している。
私は指先をピストンに乗せたまま、小さく「はい」と答えることしかできなかった。
マウスピースから口を離すと、下唇の内側が歯に強く押し付けられていたせいで、じんわりと鉄の味がした。
