自転車をこいで、朝の通学路をさっそうと駆け抜ける。駅の方に向かってスーツ姿で歩く会社員のようないで立ちの人。ランドセルを背負って元気に歩道を走る小学生たち。手をつなぎながら、仕事に向かう若い男女。そんなありふれた光景を目で追いかけながら、朝の風を浴びていた。
学校に着けば、誰かの声が常に聞こえる。
「今日の授業の予習やってないの、まじでやばいんだけど!」
「え、昨日の塾の授業、意味わかんなかったよね。よかった私だけじゃなくて。」
「今日部活オフになるらしい。なんか顧問の先生が体調不良で来られんらしいよ。」
「今日数学2時間もあるじゃん。やばい、無理だって。」
毎日のように、学校ではたわいもない話が繰り返される。その話を受けて、また別の話題が生まれていく。そんな空間であるはずなのに、友梨佳の周りではそれが起きていなかった。自分の席に座り、窓の外を眺める。
(今日は、何かあるのかな。まあ、いつも通りなんだろうけど)
何かが起こると思っているときほど、何も起こることはない。楽しいことが怒ってほしいと願うだけで自分から何もしなければ、基本的には何も楽しくはならない。世の中とは常にそういうものだ。願うなら、自分から動かなければならない。そういう言葉で、友梨佳は自分を納得させていた。
あと二週間もすれば定期テストが来る、ということで、授業をする先生も少しずつ熱を帯びているのが目に見えて分かった。それに楽しんでついていける学生もいれば、その熱意をよそに、自分の趣味に興じる学生もいる。授業中に居眠りをしているクラスメイトを見て、友梨佳はつぶやく。
「私も、あんなふうにゆったり過ごせたらいいのに。」
