友梨佳が初めて浩と話した日から二週間ほどが経過していた。学校はすっかり文化祭の準備で忙しくなっていた。友梨佳の高校は毎年6月に文化祭を行っている。毎年雨が降るか降らないかの瀬戸際で、運営をしている生徒会がよく苦労しているのだ。
友梨佳のクラスでは教室を使った展示を行うことが企画されていた。展示のテーマはまだ決まっておらず、いよいよ二週間前なこともあり、みんなの焦りが雰囲気として感じられた。
「だから、絶対にインスタ映え狙った方がいいって!」
「そういうのじゃなくてさ、もっと落ち着いた雰囲気の展示にしようよ。男子はインスタ映えとかあんまりわかんないし、科学系の展示だったら絶対需要あるって言ってるじゃん!」
委員長の男子と副委員長の女子が相変わらずもめていた。この光景がすでに一週間前から展開されており、みんなもそろそろ見飽きていた。
「あのさ、委員長も副委員長もさ、もうちょっと落ち着こうよ」
「そうそう、折衷案というかさ、絶対方法あると思うから」
「折衷案ね、何かあるかな」
その時、委員長が何かを思いついたのか、副委員長に小声で伝えていた。一通り伝え終わった後、副委員長の顔がパッと明るくなるのを感じた。
「そうだ、みんな。教室を二分割にしようよ。それで、インスタ映えスポットと、科学系の作品の展示。どっちの入り口から入るかで、全然違う雰囲気にするっていうのはどうかな!」
教室のいたるところから、肯定するような声が上がった。
「いいじゃん。なんで思いつかなかったんだろ」
「二分割にすれば、黒板とかもうまく使って、黒板アートみたいなのできるじゃん」
「科学系の展示もさ、もうちょっと凝ったデザインの空間にするとか」
「混ぜなくていいなら、お互いのよさをもっと引き出せるよね」
明るい声が教室のあちこちから飛び出すのをクラスの総意と見なして、委員長が一声でまとめた。
「じゃあ、みんな。うちのクラスは科学系の展示とインスタ映えを狙った展示の二つをハイブリッドでやる感じにしよう」
「それで、あとでクラスのグループチャットでアンケートとるから、みんなどっちの展示の手伝いしたいか、考えて投票しといてね」
こういう誰かがまとめなければいけないものを、委員長たちがさっと決めてくれる。そういう空気感の中でただ過ごしていればいいというのは、友梨佳にとっては楽だった。去年のクラスでは一人ひとり何をしたいかプレゼンして、みたいなことが行われていたのを思い出し、安心感からか吐息が漏れた。
