「お母さん、ただいま。もう、帰ってる?」
既に母親が仕事に行くときにはいている靴が丁寧にそろえておかれているのを見て、もう帰ってきていることを確信していた。帰ってきたことを伝えてすぐ、キッチンの奥の方から声が聞こえてきた。
「友梨佳、おかえり~。遅かったね、大丈夫だったー?」
「うん、大丈夫だよー。友達と買い物行ってたの」
靴を脱ぎながら、少し離れた場所から、少し大きめの声で会話をしていた。洗面所で手を洗って、母親のもとに駆け寄った。
「これ、成績いい友達も使ってたんだって。今日、一緒に本屋さん行ったとき、おすすめされて買ってみた。勉強、頑張れそう」
「よかったね。これからしっかり頑張ればいいからね」
優しい言葉をかけながら、頭をなでてくる。父親がいるところでは絶対にしない、母と娘だけが知っているコミュニケーションだった。どことなく恥ずかしくて、でも、温かい気持ちになった。
「お母さん、それは恥ずかしいって。もう高2なんだから、そういうのはいいよ」
「ううん、友梨佳は何歳になっても私の娘だもん。いっぱいなでさせてね」
「うーん、恥ずかしいけど、嬉しい」
「晩御飯まではまだ時間があるから、ゆっくりしてきていいからね」
「うん、ありがと」
荷物を置いて、部屋義に着替えた。制服はどことなく落ち着かない感じがするので、制服を脱いでようやく家に帰って来たという感じがした。ベッドにそのままダイブし、疲れを感じつつも、柔らかい布団に身を委ねた。
「友梨佳、ご飯だけど、起きてる?」
遠くの方で母親の声が聞こえた。気づいたら寝ていたらしい。今日はひさしぶりに陽菜と買い物に行って、少しばかり疲れていたのかもしれない。
「うん、大丈夫。ちょっと寝ちゃってたみたいだけど今から行くから」
