足取りは重たかった。大好きな家族のところに行くだけなのに、試験が終わった日の帰り道と同じくらい、いやそれ以上に足取りは重かった。ローファーどころか、靴下も履いていない。何も自分の足を物理的に重たくするものはついていなかった。足元を見ることで、そんな事実に気づかされた。
(隠せない。だから言わなきゃ。)
「おまたせ、お父さん、お母さん。あんまり点数高くないから、ハードル下げて、点数見てほしい。」
簡単な前置きをした後、一気に点数の書かれた答案を机の上に広げた。あわよくば数枚、目に入らなければいい。いつもは丁寧に一枚ずつ見せていたのに、今回ばかりは適当に済ませたかった。
「お父さん、この点数、おかしいんじゃないかしら。いつもより低いし、何より全体的にできていないように見える」
「友梨佳、平均点はどれくらいだったの? 平均点から考えないとね」
「お父さん。平均点はね、いつも通りくらいだよ。ちょっと現代文は高いかもだけど、いつも通り。何も変わらないよ」
父親の顔が曇っていくのが目に見えてわかった。実際、顔はこわばっており、どんな言葉を発するべきか、明らかに迷っていた。そんな緊張感からか、母親は特に言葉を発することはなく、答案の点数をまじまじと見つめていた。友梨佳はそんな二人の姿を、ただ立ち尽くしてみていることしかできなかった。
「友梨佳、じゃあ、数学と理科はこれはどういうこと? 平均点がいつも通りくらいだと考えるなら、これは平均点を下回っていることになるけど。」
「そうだよ。平均点を取れてない。難しかったのもあるけど、なんていうか、その、できなかった。」
「いつも言っていたはずだけど。試験に行くまでに丁寧に勉強を重ねて、安定して点数を取れるようにしておくようにって。」
「わかってるよ。でも、努力はしてたんだもん。テスト前はしっかり時間をとって、勉強してたんだって。」
「努力というのは、方向性が正しいからこそ、努力をしたと言えるものなんだ。この点数だったら、努力したのではない。勉強に取り組んだというより、結果を気にしない作業にすぎない」
「そんな言い方しなくてもいいでしょ! 私だって頑張った。できないなりに、努力したんだもん」
「友梨佳、こっちに来なさい。こっちに来て座りなさい。一問一問丁寧に説明してみるんだ。そうすれば、何が原因だったかわかるから」
「今さらそんなことしなくていい。テスト後の課題で、平均点以下だった人は全部やり直しして提出してるの。だからもう解き直しは終わってる。」
「解き直して満足するだけだろう。そんなことをしていても成績は伸びない。」
「成績、成績って、それしか言えないの? もう私を縛り付けないでよ」
最後はもう、ただただ怒りにまかせて言葉が飛び出していただけだった。頬に涙が伝うのを感じた。どんなに悪い点数をとっても、「友梨佳なら大丈夫」、そんな風に言ってくれると信じていたのに。そんな友梨佳の期待は、もろく崩れ去った。ただただ、その事実に対する悲しみが泪という形で現れた。もう我慢などできなかった。
「お父さん、言い過ぎじゃない。ほら、友梨佳。こっちに来て。また次頑張ればいいでしょう」
母親の言葉は間違いなく優しさからだった。それなのに、口から恨み言のような言葉が出てきてしまう。
「お母さんだって慰めなくていい。ほんとは失望してるくせに。答案見て、何も言えなかったのは、ただ失望してたからに決まってるじゃない。もういい。お父さんもお母さんもほっといてよ。」
