桃色のユリと青いバラ



 週末、友梨佳は大きく息を吸って、夕食後に両親を呼び止めた。
「あ、あのさ、お父さん、お母さん。テスト返ってきたんだよね。だから見てほしい」
「そうだったわね、試験の点数しっかり報告しようなんてえらいじゃない。ねえ、お父さん。」
「うん、きっと、うまく乗り越えられていると思うよ。だってあんなに努力したんだからね。」

 父親の言葉が胸に刺さった。きっと期待している。悪かったと言ったところで、きっと信じてもらえない。信じてもらえないというより、高く積み上げられた期待を崩すことができないだろう。特に父親にとっては、友梨佳は「たいへん優秀な子」である。努力すればできる子というイメージは全く崩れていなさそうである。そんなおもりのような期待感が、すごくつらかった。

「ちょっと、部屋にある解答用紙取ってくるから待っててね。」
「友梨佳、急がなくていいからね。大丈夫、きっといい点数なんだから」
「お父さん、そんなにプレッシャーかけないの。少し点数が低くて、落ち込んでるかもしれないでしょ」

 仲のよさそうな両親の会話を背に、友梨佳は階段を駆け上がった。部屋に入った時、もうここから出たくない、そんな風なことを直感的に考えていた。きっと、がっかりされる。というより、怒られるのか、悲しまれるのか。いったいどんな感情を両親が持つのか。それがわからないからこそひたすらに逃げたかった。