桃色のユリと青いバラ



 残り3日の試験については、着実にこなせた文系科目、やはりわからない理系科目といった形で二極化した。体感のできについては、お世辞にも、よいものであるとは言えなかった。高校2年生になり、明らかに難易度が上がっていた。実際、これまでは全て解答できていた英語や国語でさえも、空欄を残した状態で提出していたのだ。

(もう、これは終わったかも。とにかく、高い点数であることを祈るしかない。)

 試験最終日。みんなが久しぶりの部活動に行ったり、息抜きに遊びに行くのをしり目に、友梨佳は帰路を辿っていた。その足取りは重く、試験が終わった解放感など、感じられる余裕は全くと言っていいほどなかった。後ろからは楽しそうな、明るく、はじけた声が聞こえてくる。仲良しの女子グループだろう。その声は遠く離れていても、耳に刺さってくるような声だった。

「テストやばかったよね、まじで数学無理すぎるんだけど!」
「それは勉強しなさすぎなんだって。あの問題くらいだったら8割はいけてる」
「まあね、いやね、7割くらいはいけたのよ。でも8割はいかないと厳しいじゃん」
「うちの数学ってぱっと見は難しいけど、意外と解いていったら単純だったりするもんね」
「そうそう、てかさ、国語と英語は今回簡単だったでしょ」
「まあね。去年からそんなに難易度変わんないよ。だって、記述の問題とか書く内容めっちゃシンプルだったじゃん」
「そうそう、あれはね、正直いけた」

 自分ができなかったと感じていた時ほど、ああいう言葉は耳ではなく胸に刺さるんだ。彼女たちに悪意はない。むしろ、試験を分析するほどの余裕があるから、テストが終わってもまだ、テストのことについて和気あいあいと話せるんだろう。

(うらやましいよ。同じ学校なのに、なんでこんなにできが違うんだろう)
(こんな結果、親には言いにくいなぁ。まだ点数が出てなくてもわかるんだもん)
(あんなに勉強したのにできなかった。みんなは簡単って言ってるから平均が下がることはないっぽい。やばいよ)
(誰かに吐き出したい、でもこの気持ちを聞いてくれる人なんていない)

 ネガティブな言葉が自分の中から湧き上がってくるのを感じた。抑えきれないのである。とにかく出てくる。吐き出したいのに、それを吐き出せる相手がいない。なのに、感情は次々と浮かんできて、自分の心に、澱のようにたまっていくのを感じていた。