桃色のユリと青いバラ



 人間関係というものが、友梨佳にとってはずっと悩みの種だった。合唱部もそうだった。何の曲を歌うか真剣に話し合っていたのに、気づけば部活動の中にあるグループが曲を勝手に決めていて、それが部活動全体の合意として扱われていた。その時に、友梨佳ははっきりと抗議したのだった。
「それは、だめじゃないかな。やっぱりみんなで話し合って一曲選出するべきだと思う。」
 しかし、その抗議もむなしく、何も変わらなかった。気づけば、合唱部のメンバーがどんどん自分から遠ざかっていくのを感じていた。

 そんなある日のことだった。合唱部の練習のため、部室に行ったところ、すでに何人かのメンバーが集まっているのが目に留まった。そのメンバーは、勝手に曲を決めた子たちだった。
「友梨佳ってさ、なんかいい子ちゃんって感じだよね。」
「わかる、私は正しいんですみたいなオーラ出してるのめっちゃ感じるもん。」
「で、あれでしょ。他の意見が通らない子たちの事を私はちゃんと考えてますから、みたいな感じのこと考えてそう。」
「うんうん、もう、友梨佳はこの部活に向いてないって感じするのに。本人気づいてないのかな。」

 足元が凍り付いたように冷たくなったのを感じた。足が動かない、それ以上に頭が真っ白になり、何も考えらレない自分がそこにいるのをただただ感じることしかできなかった。
(もう帰った方がいい。これ以上いても傷つくだけだ。)

 その会話を聞いた次の日、顧問の先生に退部届を手渡した。理由は「学業に専念するため。」とした。余計な波風を立てれば、またあの子たちが自分のことを悪く言う。そんな悪循環にとてもじゃないが耐えられる気がしなかった。