親が教育熱心であり、これまでも期待に応え続けていたことで、友梨佳は親を裏切ってでも自分のやりたいことをするという発想に至らなかった。そもそも、やりたいことなどないのだから。思い返してみれば、両親の期待に応えたくて、この高校に入学したいと思うようになった。勉強もそうだ、両親が繰り返し熱心に自分に勉強を教えてくれていたから、結果的に合格できたのだった。
(やりたいこともないのに、勉強なんて。むしろ、誰かと関わってもっと楽しい学校生活を送りたいよ。)
友梨佳は、頭の中に浮かんだ雑念をよそに置くように、授業に集中した。先生の言ったことをノートに書きとめる。それだけではなく、自主的に内容を整理したメモをノートの隅に書いておく。そうすることで、少しでも理解しようと努めた。今は必要以上に将来のことを考える必要はないのだと自分に言い聞かせ、目の前のやらなければいけないことに注意を払った。
日本史探究、地理総合、数学Ⅱ、論理国語、論理表現、そして体育。今日も六時間の授業が終わり、長い一日だったと思いながら、友梨佳は自転車置き場に向かっていた。校舎の中は、再び部活動が生み出す活気にあふれていた。少し前までは自分も活気を生み出す側にいたのだと思うと、どこか胸が苦しくなる。活気が合唱部をやめた原因を思い出させてしまうからだ。
