北方氏に三代に渡って使えている重臣小山家。現当主である成明は五人の子宝に恵まれ、長女の名を桔梗と呼んだ。
桔梗は幼少期から小枝を手にし、見よう見真似で素振りをするような子だった。だからといって、その他の手習いから逃げ出す事もなかった。十歳になった頃には剣技で同年代の男児を圧倒するようになり、大人が相手をする他なくなった。女子としての手習いは勿論、この頃になると寝る間を惜しんで兵法書を読み漁るようになっていた。
そんな桔梗は小山家の家臣のみならず、足軽や足軽大将の間でも有名になった。その凛々しい美しさと快活な気性から姫武将として慕われるようになる。
桔梗は十三を過ぎた頃から、自領の内政や外交、特に戦について関心を示すようになった。父が重職に就いている事もあり、桔梗にもある程度の情報が漏れ聞こえてきた。そこで桔梗は知る。自領が置かれている状況と周囲の情勢についてを。更に、父が仕えている当主、北方 彦十郎が戦に負け続け領地を削り取られていると。
桔梗は十分に理解していた。初代領主は領地を拡大する能力に長け、戦上手という特徴を活かして領地を確立した。先代は合戦の能力は初代に及ばなかったものの、領地の開発と外交に長けていた。その為、領地は安定し、外敵から侵略される事はなくなった。
そして現領主、北方 彦十郎。
一家系に於いて、有能な当主が三代続く事は稀だ。戦国の世に於いては顕著であり、国を興して後、三代目になって大半が滅亡する。彦十郎についての情報を桔梗が耳にする限り、このままの状況が続けば近い将来に滅亡する可能性が高い、そう桔梗は冷徹に判断していた。領地の内政は賄賂が横行し、外敵に対する防衛、侵攻において武将格の人材が見当たらなかったからだ。
そこで、桔梗は父に談判する。
「父上、私を戦場に立たせて下さい。必ず敵を打ち破り、領地を広げて見せます!!」
しかし、成明が首を縦に振る事はなかった。
桔梗の能力が不足している訳ではない。寧ろ、桔梗以上の武将など近隣を見渡しても、まず得られない。それでも、女を戦場に立たせる訳にはいかなかった。その行為が、北方氏の汚名になってしまうからだ。北方は女子供まで合戦に招集する程に人材が枯渇していると。家臣として主君の名誉を汚す事は、絶対に犯してはならない禁忌なのだ。
桔梗は父の答えに納得した。
いや、理屈の上では頷いた。
それでも、刀を持つ事は止めなかった。
これまで以上に、手のまめが一層硬くなる程に振った。
桔梗は宿老の娘として領地を守ると決めていたし、民を幸せにする事を誓っていたからだ。
桔梗は幼少期から小枝を手にし、見よう見真似で素振りをするような子だった。だからといって、その他の手習いから逃げ出す事もなかった。十歳になった頃には剣技で同年代の男児を圧倒するようになり、大人が相手をする他なくなった。女子としての手習いは勿論、この頃になると寝る間を惜しんで兵法書を読み漁るようになっていた。
そんな桔梗は小山家の家臣のみならず、足軽や足軽大将の間でも有名になった。その凛々しい美しさと快活な気性から姫武将として慕われるようになる。
桔梗は十三を過ぎた頃から、自領の内政や外交、特に戦について関心を示すようになった。父が重職に就いている事もあり、桔梗にもある程度の情報が漏れ聞こえてきた。そこで桔梗は知る。自領が置かれている状況と周囲の情勢についてを。更に、父が仕えている当主、北方 彦十郎が戦に負け続け領地を削り取られていると。
桔梗は十分に理解していた。初代領主は領地を拡大する能力に長け、戦上手という特徴を活かして領地を確立した。先代は合戦の能力は初代に及ばなかったものの、領地の開発と外交に長けていた。その為、領地は安定し、外敵から侵略される事はなくなった。
そして現領主、北方 彦十郎。
一家系に於いて、有能な当主が三代続く事は稀だ。戦国の世に於いては顕著であり、国を興して後、三代目になって大半が滅亡する。彦十郎についての情報を桔梗が耳にする限り、このままの状況が続けば近い将来に滅亡する可能性が高い、そう桔梗は冷徹に判断していた。領地の内政は賄賂が横行し、外敵に対する防衛、侵攻において武将格の人材が見当たらなかったからだ。
そこで、桔梗は父に談判する。
「父上、私を戦場に立たせて下さい。必ず敵を打ち破り、領地を広げて見せます!!」
しかし、成明が首を縦に振る事はなかった。
桔梗の能力が不足している訳ではない。寧ろ、桔梗以上の武将など近隣を見渡しても、まず得られない。それでも、女を戦場に立たせる訳にはいかなかった。その行為が、北方氏の汚名になってしまうからだ。北方は女子供まで合戦に招集する程に人材が枯渇していると。家臣として主君の名誉を汚す事は、絶対に犯してはならない禁忌なのだ。
桔梗は父の答えに納得した。
いや、理屈の上では頷いた。
それでも、刀を持つ事は止めなかった。
これまで以上に、手のまめが一層硬くなる程に振った。
桔梗は宿老の娘として領地を守ると決めていたし、民を幸せにする事を誓っていたからだ。



