鼓家に来て二週間が経った。
二週間経っても清雅は目を覚ます気配もなく眠り続けている。
美胡は朝晩二回、清雅の部屋へ行き、手に触れて治癒力を注ぐ。それ以外の時間は涼子と一緒に家事をしたり、雑誌を読んだりと菜花家にいた時とは比べ物にならないくらい穏やかな生活を送っていた。
この広い屋敷は清雅が一人で暮らす家だという。部隊の隊長として忙しく、突然の呼び出しもある清雅は家族の迷惑にならないように別邸で暮らしているらしい。寝たままの清雅と唯一の使用人である涼子、それから美胡の三人きりの生活だった。
初めて会った時から優しく接してくれている涼子は美胡の意見をよく聞き、それを認めてくれる。菜花の家では自分の意見を聞いてもらえることなんてなかったから初めは戸惑ったが、その優しさに美胡の心も少しずつほぐれていくのだった。
美胡は夕食をとり、清雅の部屋に向かう。
「失礼致します」
一応声をかけて襖を開けるが、当たり前に返事が返ってくることはない。
初日に会った時に比べ、清雅の怪我は確実に治ってきていた。大きなあざが出来ていた腕はすっかりと消え、包帯も外されていた。軍人らしい筋肉質な腕がちらりと見える。首や顔にできていた擦り傷も薄くなってきているのに、清雅はまだ目が覚めないようだった。
いつも通り枕元に座り、清雅の左手を握る。繋がれた部分が熱を帯び、力が移っていく。
(早く目を覚ましますように……)
もう片方の手を美胡自身の胸に当て強く祈りを込めた。
どのくらいの時間が経っただろう。
今日の分の力を注ぎ終わり、美胡はそっと清雅から手を離した。胸に何かがつっかえているような少し息が苦しい気がする。
(もしかしたら私……)
そんなことを考えながら立ち上がろうとした時だった。
目の前の長いまつ毛がゆっくりと揺れたのは。


