身体中が温かく、血が通っていく。
さっきまでの痛みや寒さが嘘のようで、清雅は自分を奮い立たせながら目を開く。
次の瞬間、目の前に何かが倒れ込むように迫ってきた。
「美胡……!」
咄嗟に手を伸ばし抱き止める。美胡はぐったりとしており、身体が冷たかった。
一気に現実に引き戻され、息が止まった。
「……息をしていない、だと?」
清雅が気を失っている間に治癒力を使ったのだろう。清雅の身体は動くが、美胡は微動だにしなかった。
「……美胡」
「隊長っ!!」
海堂の切羽詰まった声に顔を上げると、目の前には異形が牙を剥いていた。
清雅の腕の中の美胡めがけて飛びかかってくる。
「……ふざけるな。お前は絶対に許さない……!」
清雅は瞬時にサーベルを引き抜くと、怒りに任せて異形の胸元に突き刺した。
『ワレノエモノォォォォ』
美胡に触れようともがく異形に渾身の怒りを込める。怒りが増えるたびに、サーベルは赤々と燃え上がった。
サーベルが異形の身体を貫通しようとした時、何か硝子玉のような硬い何かが触れた。
(これはなんだ?)
疑問に思いながらもそれごと突き続ける。
『ッグハァ……』
硝子玉を突くたび、異形が異様な声を上げた。
「これで、終わりだ……!」
『ウギャァァァ』
力いっぱいサーベルで突くと、呻き声を上げながら異形は形を無くしていった。
硝子玉にはヒビが入り、粉々に砕けていく。砕け散ったものは黄色い光に変わり、美胡の身体に吸収されていった。
その場は静まり返った。
曇っていた空から晴れ間がのぞき、湿っぽかった林の中を照らしていく。
「やっつけたのか……」
海堂の呟きに、隊員たちは歓声を上げた。ただ、清雅だけは腕の中の美胡を静かに抱きしめる。
「美胡、目を覚ましてくれ…… 美胡」
その時、すぅと美胡の鼻から息が漏れる音が聞こえた。指先がぴくりと動く。
「……!? 美胡? 聞こえるか?」
ゆっくりと美胡の目が開く。清雅を捉えた美胡は柔らかく笑った。
「……清雅さま、ご無事で何より、です……」
「良かった。お前も無事で良かった」
清雅は腕の中の美胡をきつく抱きしめた。
「……お怪我はしていませんか?」
「あぁ、大丈夫だ。お前のおかげでどこも痛まない」
「それは良かったです」
美胡の笑顔は清雅に安心感を与える。
失いたくない。
これからずっとそばにいたいし、いてほしい。
美胡への愛おしさが膨れ上がった。
「美胡、帰ろうか。私たちの家に」
「……はい、清雅さま」
清雅は軽々と美胡を抱き上げた。そして、帰路に向かって足を進めるのだった。


