あの子は泣いている。

ぷるるる、、、
アラーム音が響き渡る。時刻は朝の5時。
憂鬱な今日が、私の1日が、始まる。

朝起きたら、顔を洗う。真夏の朝に浴びる水は、格別に気持ち良い。起きて直ぐの、少し熱をもった身体を起こすには丁度いい。
そんな清々しくも思えるのも束の間、この昂りは自分の姿見を見て、一瞬で崩れる。
ああ、いい加減気にしなくなればいいのに。毎日のことだし。自分に心底呆れてしまう。
「ふっ」と、自嘲の笑みが溢れる。
私は髪も、肌も、目も、何もかもが白い。いわゆる、『アルビノ』。
この家の洗面所には、壁一面の鏡がある。大きな鏡なんて大して必要もないのに。少しうつるくらいが丁度いいのに。鏡の自分と目が合う度に、幾度となく思ってしまう。
なんで、なんで私だけが、こんな姿になってしまったんだろう。家族にも親族にも、私のような人は誰一人いないのに。
神様はなんで、私をこの世に迎え入れたの?

人間は、普通じゃないものを恐れ、拒絶し、孤立させる。自分の醜い事は嘘で隠して、都合の良い様に周りに合わせる。本人のいないところで陰口を言い合い、どうにもならない事を自分ごとかのように問題として言い合う。このような人達は勿論のこと、朝からニンゲンへの不平不満をたらたらと考える私も、本当に最悪な生き物だ。どうしても嫌悪感が湧いてくる。
ああ、もう!考えるだけで頭が痛くなってきた。苦しくなって、私はその場に屈み込んだ。

「葵依ー!朝ご飯だよー!どこにおるん?」
はっとした。慌ててて時計を見る。もう7時を回っていた。
「ごめん、すぐ行く」
急いで髪を括ってリビングに向かった。
すでに兄は学校に行く準備を済ませていた。
「全く、時間管理くらいしてちょうだい。お兄ちゃんを少しは見習いなさいよ。颯斗は賢いし、ちゃんとしているわよ。この間の期末テストでも全教科学年主席を取っているわよ?妹なら同じくらい出来るでしょうに。」
……ああ。これだから嫌なのだ。
お母さんは私が不登校になってから、お兄ちゃんの自慢話と、私への不満しか言っていない気がする。同じ話ももう飽きてきた。兄弟だからといって比べないで欲しい。
「学校にも行かないなんて、とんだ怠け者ね」
聞き慣れてはいるが、確かにちくり、と胸に刺さる。
「ごめんなさい…」
私は力無く謝る事しか出来なかった。行きたくても、いざ行こうとしたら吐き気が止まらなくなるから、行けないだけなのに。
声にはならない反抗心だけが、どんどん蓄積していた。