龍と悪女の運命の契り

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「そうだ、契約結婚する理由だったな」

車内の静かな空気を壊し、隣に座る玲一がいきなり話しかけてきた。

まぁ、聞いたのは私なのだけれど。

「藍子のお父上は、教えてくれなかったのか?」

「ええ。とっくの昔から、仲悪いから」

玲一の問いに即答する。

「そ、そうか。……俺が藍子と契約結婚したかったのは、俺の弟の病気を治してほしかったからだ」

「あら、弟さんがいるのね」

「ああ。いつも元気いっぱいなんだが、肺が生まれつき弱くてな。この前は友達と遊んでいる最中に倒れたらしい」

「そう…。まぁ安心して。私はどんな病でも簡単に治す事が出来るから」

「ああ、頼む。それで、交換条件に、俺は愛子の妹の愛莉の病の原因を探る。これで良いか?」

「ええ、いい…え?愛莉?」

「そうだ。…何か嫌か?」

「そういうわけではなくてーー。どうしてそこに愛莉が出てくるのかしら?」

玲一はそこで少し口をつぐんだ。

「それはーー。おかしいと思ったからだ」

「おかしい?」

どういうこと?

「どんな病でも、いつでもどこでも治せる。そんな藍子の噂を耳にして、いつか会ってみたいと思っていた。そんな時、藍子が治癒の力を使う瞬間を生で見られる機会が訪れた。……五万人程が入れるドームの中で」

え、……それって。

私は真剣な眼差しで、玲一をじっと見つめた。

「今ここで言うのは、藍子にとって苦痛かもしれないが、あの時愛莉を治す事は出来なかった。治せないと分かった瞬間、藍子は明らかに動揺していたし、目は大きく見開かれ、顔は真っ青だった」

そんな顔していたのね。京極家の嫡子として、不甲斐ないわ。

「その時、何と言うか……禍々しい何かを感じた」

「禍々しい何か、ですって?」

「そうだ。あれは恐らく、呪いの一種なんじゃないかと、俺は思っている」

「呪い…?」

「妖や異能者とはまた違って、妖のように見える術ではなく、見えない術を使う、術者という者がいる。術者には三つの家系があり、一つ目は陰陽師、二つ目は巫女、そして三つ目がーー呪術師だ」

「もしかして、その呪術師が、呪いを専門とするのかしら?」

「ああ」

「でも、愛莉と呪術師に何の関係があるの?」

「愛莉は恐らくーー呪われている」

「……は?」

どう、して?あの子が呪われるはずないじゃない。だってあの子は、人気者だった上にまだほんの子供だったのよ?

「…な、何か証拠でもあって?」

「それはないが、現に藍子は愛莉を治せなかっただろう?それも愛莉だけだ。呪いと病は全くの別物だ。治癒の力は、呪いを祓うのには効かない。だから、あの時藍子は治せなかっーー」

「じゃあどうやって治せばいいのよ⁉︎」

頭に血が上り、つい大きな声で叫んでしまった。

「それを、俺が必ず見つけ出す。……信じられないか?」

「……」

正直言って、まだ会って間もない人を、そんな簡単に信じる事は出来ないわ。

……でも。

医者も私も、誰一人愛莉の病を治す事は出来なかった。

何も希望がないよりは、得策かもしれないわ。

「…愛莉を治せるとよほど確信を持っているなら、賭けてみてもいいわ」

「…!本当か!」

「ええ」

「ありがとう」

玲一は安心したようにニコっと笑った。

それにつられるように、私もさっきまで強張っていた表情が、少し緩んでいった気がした。