***
「お姉様、大丈夫?」
ハッと顔を上げると、愛莉が心配そうに私を見上げていた。
……私は何をしているのかしら。
見舞いに来た人が、病人に心配されているだなんて。
昔の事を思い出していたのを悟られないよう、私はフッと勝気な笑みを浮かべた。
「あら、心配ありがとう、愛莉。でも私が大丈夫じゃない時なんてないから、安心して」
「ふふ、お姉様はいつも心が強くて良いですね」
「当たり前でしょ?京極家の後継であり、異能者でもある私が、心の弱い人でどうするの」
「まぁ、確かにそうですが…ほどほどにして下さいね。あまり強気な事ばかり言ってると、後でどんな目にあうか分かりませんから」
「たとえどんな目にあっても、私が全て蹴散らすわ」
「もう〜」
愛莉がぷくっと頬を膨らませる。
愛莉は相変わらず優しいわね。
私の事を心配してくれて。まあ、自分の体も心配してほしいけれど。
病を治せなかった私を、恨んだり妬んだり、責めたりもせずに、ずっと味方でいてくれた。
『お姉様は悪女なんかじゃないですよ。たまには、不調の日があって当然です。』
『大丈夫、安静にしていればきっとすぐ治りますよ。だから、お姉様はあまり気にしないで下さい』
そうやって、笑っていたわね。…病にかかって、もう六年経つけれど。
とりあえず、愛莉の病の原因を早く見つけなければいけないわ。
でも医者も分からない病の原因だなんて、どうやって調べれば良いのかしら?
そんな事をつらつら考えていると、部屋のドアがコンコンとノックする音がした。
「藍子様、ご歓談中失礼します。当主様がお呼びです」
「お父様が?……分かったわ、下がりなさい」
「はっ」
知らせに来た者の足音が遠のいていく。
私は思わず眉間に皺を寄せた。
お金と権力にしか興味がない愚か者が、私に何の用かしら?
早逝したお母様とは契約結婚だったからか、ろくに話もせず、外で女を作り、葬式には来たもののずっと無感情な冷たい目をしていた。
たとえ身分が低いお母様を愛せなかったとしても、あの態度はひどいわ。
最初はあんなに可愛がってもらっていたのに、失敗をする完璧ではない異能者だと分かった瞬間、全く相手にされなくなった。
愛莉も、体の弱い子だと分かった瞬間、政略の駒として使いにくいと思ったのか、私と同様、全く相手にされなくなり、お見舞いに一度も来た事はない。
全く、お母様はあんなに聡明で優しい人だったのに、どうしてお父様はこう心が狭くて自分勝手なのかしら。
「お姉様、お父様に呼ばれてるなら早く行った方が……あら、大丈夫ですか?お姉様、さっきからぼーっとしてばっかりですよ。疲れてるのではないですか?」
私はまたもハッとする。
…確かに今日はやけにぼーっとする時間が多いわね。愛莉の言う通り疲れてるのかしら?
「やはり私の事は気にせずに、お休みになられた方が——」
「だ、か、ら、私は大丈夫よ」
「…そうですか?はたから見れば、そうは見えないのですが…」
「そういう愛莉こそ、疲れたりしていない?」
「私はずっとベッドの上で寝てるので、大丈夫です!」
愛莉がニコッと笑う。
「…そう、なら良かったわ」
本当は頭痛や発熱などで疲れが溜まってるのでしょうね。
まあ、口には出さないけれど。
「それじゃ、私はそろそろ帰るけど、困った事があったら、いつでも言いなさい。すぐに駆けつけてあげるから」
「ふふ、ありがとうございます。とても頼もしいです。ではまたいらして下さいね」
「ええ、勿論」
ドアを開け、廊下に出る。
くるっと後ろを向いてドアを閉める際、愛莉が手を振っているのが見え、私はニコリと微笑み、手を振り返した。
「お姉様、大丈夫?」
ハッと顔を上げると、愛莉が心配そうに私を見上げていた。
……私は何をしているのかしら。
見舞いに来た人が、病人に心配されているだなんて。
昔の事を思い出していたのを悟られないよう、私はフッと勝気な笑みを浮かべた。
「あら、心配ありがとう、愛莉。でも私が大丈夫じゃない時なんてないから、安心して」
「ふふ、お姉様はいつも心が強くて良いですね」
「当たり前でしょ?京極家の後継であり、異能者でもある私が、心の弱い人でどうするの」
「まぁ、確かにそうですが…ほどほどにして下さいね。あまり強気な事ばかり言ってると、後でどんな目にあうか分かりませんから」
「たとえどんな目にあっても、私が全て蹴散らすわ」
「もう〜」
愛莉がぷくっと頬を膨らませる。
愛莉は相変わらず優しいわね。
私の事を心配してくれて。まあ、自分の体も心配してほしいけれど。
病を治せなかった私を、恨んだり妬んだり、責めたりもせずに、ずっと味方でいてくれた。
『お姉様は悪女なんかじゃないですよ。たまには、不調の日があって当然です。』
『大丈夫、安静にしていればきっとすぐ治りますよ。だから、お姉様はあまり気にしないで下さい』
そうやって、笑っていたわね。…病にかかって、もう六年経つけれど。
とりあえず、愛莉の病の原因を早く見つけなければいけないわ。
でも医者も分からない病の原因だなんて、どうやって調べれば良いのかしら?
そんな事をつらつら考えていると、部屋のドアがコンコンとノックする音がした。
「藍子様、ご歓談中失礼します。当主様がお呼びです」
「お父様が?……分かったわ、下がりなさい」
「はっ」
知らせに来た者の足音が遠のいていく。
私は思わず眉間に皺を寄せた。
お金と権力にしか興味がない愚か者が、私に何の用かしら?
早逝したお母様とは契約結婚だったからか、ろくに話もせず、外で女を作り、葬式には来たもののずっと無感情な冷たい目をしていた。
たとえ身分が低いお母様を愛せなかったとしても、あの態度はひどいわ。
最初はあんなに可愛がってもらっていたのに、失敗をする完璧ではない異能者だと分かった瞬間、全く相手にされなくなった。
愛莉も、体の弱い子だと分かった瞬間、政略の駒として使いにくいと思ったのか、私と同様、全く相手にされなくなり、お見舞いに一度も来た事はない。
全く、お母様はあんなに聡明で優しい人だったのに、どうしてお父様はこう心が狭くて自分勝手なのかしら。
「お姉様、お父様に呼ばれてるなら早く行った方が……あら、大丈夫ですか?お姉様、さっきからぼーっとしてばっかりですよ。疲れてるのではないですか?」
私はまたもハッとする。
…確かに今日はやけにぼーっとする時間が多いわね。愛莉の言う通り疲れてるのかしら?
「やはり私の事は気にせずに、お休みになられた方が——」
「だ、か、ら、私は大丈夫よ」
「…そうですか?はたから見れば、そうは見えないのですが…」
「そういう愛莉こそ、疲れたりしていない?」
「私はずっとベッドの上で寝てるので、大丈夫です!」
愛莉がニコッと笑う。
「…そう、なら良かったわ」
本当は頭痛や発熱などで疲れが溜まってるのでしょうね。
まあ、口には出さないけれど。
「それじゃ、私はそろそろ帰るけど、困った事があったら、いつでも言いなさい。すぐに駆けつけてあげるから」
「ふふ、ありがとうございます。とても頼もしいです。ではまたいらして下さいね」
「ええ、勿論」
ドアを開け、廊下に出る。
くるっと後ろを向いてドアを閉める際、愛莉が手を振っているのが見え、私はニコリと微笑み、手を振り返した。

