***
屋敷に着いたと同時に、私は玲斗に『着いたわよ』とメールを送った。
私の前を歩く玲一は、玲斗のイタズラが襲ってこないか警戒しつつ、扉を開けた。
その瞬間。
何羽もの鳩が一斉に飛び出してきた。
パチン。
誰かの指鳴らしが聞こえると、屋敷の電気が手前から奥へと順についていった。
「おかえり、兄ちゃん」
声のいた方を見ると、なんと和装に身を包んだ玲斗がいた。
マジシャンは洋装にシルクハットというイメージを堂々と壊してきたわ、あの子。
これからどうするつもりかしら。
両階段を上り切るとちょっとした広場になっているのだが——。
玲斗はなんとそのどちらの階段も使わずに真っ直ぐに、まるでそこに空中階段が存在するかのように歩いてこちらに降りてきた。
さらに、階段を歩いている途中で、トランプやバラなど、沢山玲斗の手の中から出てきた。
そして、玲斗が玲一の前にゆっくりと着地した。
「れ、玲斗、お前…」
玲一ったら、驚きすぎて声が出ていないわ。
「何だ今のは…霊力でも使ったのか?」
「俺が霊力使えないのは知ってるでしょ?マジックだよ、兄ちゃん」
「マジックができるなんて初耳だぞ」
「だって、今まで兄ちゃんが忙しすぎて見せる時がなかったんだよ」
玲斗が口を尖らせる。
しばらく呆然としていた玲一だったが、ハッと私の顔を見る。
「俺を早く帰らせるために…そうかだから今日急に藍子が押しかけてきたのか」
「押しかけてなんかいないわよ。玲斗の手伝いをしたまでよ」
「…そうか」
玲一が私にすっと一歩近づく。
「藍子、ありがとう」
「っ…」
な、何をそんな嬉しそうにしてるのよ。
「あ、もしかして、二人いい感じ?」
急に玲斗が口を挟んできた。
「「は…はあ⁉︎」」
私と玲一の声がかぶる。
「ほら、声が完全に被るくらいだもん」
「たまたまよ」
「たまたまだろ」
思わず顔を見合わせる。
その様子を見た玲斗がケラケラ笑い始め、私達の間に割って入ると、右手で何もない中から、一本のバラを出した。
「なあ晩飯にしようぜ!」
「そうね」
「そうだな」
その後も玲斗のマジックショーは夕飯まで続き、玲斗が1番早く夕飯を食べ終わると、またマジックを始めた。
「見てみて、バラが1、2、3本!すごいだろ!」
「それ、さっきもやっていなかったか?」
「え〜、そんなにいちいち覚えてないよ、兄ちゃん」
玲斗は一本の棒を取り出した。
「これからこの棒を、マジシャンがよく使う赤いハンカチにかえま〜す!いくぜ、1、2、3、…」
「大変です、藍子様!」
急にこの屋敷の使用人が数人駆け込んできた。
「騒々しいわね。後にして——」
「愛莉様が!」
愛莉?
「愛莉様が…愛莉様が、ご危篤だそうです!」
「………は、?」
私は思わず、持っているお茶碗を落とした。
屋敷に着いたと同時に、私は玲斗に『着いたわよ』とメールを送った。
私の前を歩く玲一は、玲斗のイタズラが襲ってこないか警戒しつつ、扉を開けた。
その瞬間。
何羽もの鳩が一斉に飛び出してきた。
パチン。
誰かの指鳴らしが聞こえると、屋敷の電気が手前から奥へと順についていった。
「おかえり、兄ちゃん」
声のいた方を見ると、なんと和装に身を包んだ玲斗がいた。
マジシャンは洋装にシルクハットというイメージを堂々と壊してきたわ、あの子。
これからどうするつもりかしら。
両階段を上り切るとちょっとした広場になっているのだが——。
玲斗はなんとそのどちらの階段も使わずに真っ直ぐに、まるでそこに空中階段が存在するかのように歩いてこちらに降りてきた。
さらに、階段を歩いている途中で、トランプやバラなど、沢山玲斗の手の中から出てきた。
そして、玲斗が玲一の前にゆっくりと着地した。
「れ、玲斗、お前…」
玲一ったら、驚きすぎて声が出ていないわ。
「何だ今のは…霊力でも使ったのか?」
「俺が霊力使えないのは知ってるでしょ?マジックだよ、兄ちゃん」
「マジックができるなんて初耳だぞ」
「だって、今まで兄ちゃんが忙しすぎて見せる時がなかったんだよ」
玲斗が口を尖らせる。
しばらく呆然としていた玲一だったが、ハッと私の顔を見る。
「俺を早く帰らせるために…そうかだから今日急に藍子が押しかけてきたのか」
「押しかけてなんかいないわよ。玲斗の手伝いをしたまでよ」
「…そうか」
玲一が私にすっと一歩近づく。
「藍子、ありがとう」
「っ…」
な、何をそんな嬉しそうにしてるのよ。
「あ、もしかして、二人いい感じ?」
急に玲斗が口を挟んできた。
「「は…はあ⁉︎」」
私と玲一の声がかぶる。
「ほら、声が完全に被るくらいだもん」
「たまたまよ」
「たまたまだろ」
思わず顔を見合わせる。
その様子を見た玲斗がケラケラ笑い始め、私達の間に割って入ると、右手で何もない中から、一本のバラを出した。
「なあ晩飯にしようぜ!」
「そうね」
「そうだな」
その後も玲斗のマジックショーは夕飯まで続き、玲斗が1番早く夕飯を食べ終わると、またマジックを始めた。
「見てみて、バラが1、2、3本!すごいだろ!」
「それ、さっきもやっていなかったか?」
「え〜、そんなにいちいち覚えてないよ、兄ちゃん」
玲斗は一本の棒を取り出した。
「これからこの棒を、マジシャンがよく使う赤いハンカチにかえま〜す!いくぜ、1、2、3、…」
「大変です、藍子様!」
急にこの屋敷の使用人が数人駆け込んできた。
「騒々しいわね。後にして——」
「愛莉様が!」
愛莉?
「愛莉様が…愛莉様が、ご危篤だそうです!」
「………は、?」
私は思わず、持っているお茶碗を落とした。

