龍と悪女の運命の契り

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「左から兄ちゃん、姉ちゃん、俺の部屋!」

「ここが食卓!姉ちゃんの部屋は洋風だったけど、ここは和風なんだぜ!」

「ここが庭!兄ちゃんにイタズラ仕掛ける時の絶好ポイントなんだぜ!」

「それを大声で俺の目の前で言うな」

すかさず玲一がツッコミを入れる。

龍園家の敷地内はとても広いため、玲一と玲斗に交代で場所を教えてもらっている。

その後、私と玲一はそれぞれ白無垢と紋付袴に着替え、共に盃を交わし、私達は本物の夫婦となった。

そして夜。

「玲一と部屋は別々なのね」

暗い廊下を二人並んで歩く途中、私は隣にいる玲一に話しかけた。

ちなみに、玲斗は先に部屋に戻ってしまった。

「そうだ。夫婦といっても、契約結婚だからな。いきなり知らない人と部屋が同じなのは、少々気まずいかと思って」

「へえ、気を利かせてくれたのね」

玲一の第一印象は、思っていたよりもとても良いわ。

気分よく歩いていたが、ふと二つの疑問が頭に浮かんだ。

「ねえ玲一」

「ん?」

「二つ聞きたい事があるんだけど、良いかしら?」

「ああ」

「ありがとう。まず一つは、今回の契約の条件を、お父様は本当に承知したのかしら?」

「契約の条件?」

「そうよ。一度も愛莉の事を気にかけなかったお父様が、愛莉の病の原因を探るなんて、自分に利益のない条件を、そうやすやすと飲み込むとは思わないわ」

「藍子のお父さんには、違う条件を出しておいた」

「違う条件?」

「京極財閥と繋がりがある会社が、丁度赤字で困っていたから、会社を立て直して今までより二倍の給料をやるから、その代わり藍子を嫁に欲しい、とな」

「なるほど、そういう事だったのね」

「ああ。それで、もう一つはなんだ?」

「もう一つは…この契約は、いつまで続くのかしら?」

「…!」

少し間があいた後、玲一はゆっくりと口を開いた。

「…一ヶ月だ」

「…そう」

その後はお互いに話かける事はなく、自分の部屋の前に着いた。

そのまま部屋に入ろうとした、その時。

「おやすみ」

玲一が声をかけてきた。

「おやすみなさい。…また明日」

「ああ」

短い会話の後、二人同時に自分の部屋の扉を静かに閉めた。