お飾り妻は、氷の旦那様に甘やかされる。

~藍side~

「旦那様、離婚していただきます」

 そういわれたとき、思わず眉をひそめてしまった。まさか、そんなことを言われるとは思ってなかった。逆に「おかえりさない、これからは帰ってこれますよね♡」とか、「これからずっと一緒ですね♡」とか、そんな言葉をかけられると思っていた。

「すまないが、離婚することはできない」

 俺が彼女と結婚したのは、彼女の父親が経営している会社と繋がりを持ちたかったからだった。だが、もうその必要もなくなった。だから、全てが落ち着いてから離婚を告げようと思っていた。

 だから彼女の言葉は願ったり叶ったりだった。

 だが、全てのことが収まらないと彼女とは離婚ができない。俺は、穏便にことを済ませたかった。だから、彼女との離婚を先延ばしにした。どれほど、力を注いでも一年ほどはかかってしまうのだ。

 だから、彼女の気持ちなど知らないまま、「親ともめるのが嫌だろう?」とまるめて契約結婚を取り付けた。すると、彼女は俺の考えの斜め上の発想を口にした。

「あの、初夜ってなくたりしませんか?」

またもや、こちらが申そうとしていたことを言ってくる。

想像以上の言葉に思わずせき込んでしまった。

 そういうことを女性から言うのは、恥ずかしいのではないのか。そんな考えがグルグルと頭の中を回っていた。悩んだ末に出た言葉は「君に、恥じらいというのはないのか?」という、ものだった。

すると、彼女は次々と自分の意見を述べてきて、スラスラと話が進まっていった。

結局、契約結婚のルールも彼女のおかげですぐに決まってしまった。

この人なら、離婚まで揉めずにいられるのではないかと思い、親しみを込めて名前を言った、が。

彼女は俺の名前を知らなった。

言われてみたらそうだ。今回が初対面で自己紹介もしていなかった。だけど、さすがに名前は知ってるものだと思っていた。

そして何より忘れられないのが、最後の笑顔だった。

その顔には、裏なんてなく。ただ真っすぐで明るい笑みだった。