玉依姫の事情

 まだまだ物を知らない子供も納得する程の、裕福な家だった。御寮さん(正式な苗字は別)の家にはゲームも漫画もあり、子供の溜まり場と化すのは自然な流れだった。親が呼び出される程に騒いで悪戯しない限りは、娘と特別親しくなくとも迎えられる。だから御寮さんが学校の日直や掃除当番が免除になっていても誰も文句を言わないし少しでも口に出せば自分が孤立すると理解していた。
 御寮さんの家に遊びに行った子供は皆、彼女がゲームをしたり漫画を読むのを見かけた事はなかった。ただ、トイレや飲み物を取りに台所へ行ったり家人に簡単な手伝いを頼まれて家の中を往来する中、双六などの昔の玩具で遊んだり、誰かと隠れん鬼をしているのは見かけた。

「御寮さんは毎日坂の上にある祠にお参りして、家にいる時は座敷童のお世話してるから忙しいんだよ」

 贔屓は良くないと御寮さんに日直と掃除当番をさせようと息巻いた新任教師は階段から転がり落ちた先で、児童に取り囲まれた状態で懇懇と御寮さんのお役目の内容を聞かされた。