無能令嬢と祓い屋の契約結婚

「捧げる生贄は、人間が決めたものを連れてくるのか?」

鬼は首を横に振った。

「生贄は、十年前に娘を祠の前につれてきて、私が認めたものを生贄として十年経ったその日に再び連れてくるのだ」

それを聞いて私は絶句した。

私が生贄?

十年前って…

確かあの時、私はお父様に連れられてこの場所までやってきた。

その時に誰かが後ろから押した。

それで私は禁足地であるこの祠に足を踏み入れてしまったのだ。

それってまさか…

「お父様が…私を生贄として差し出したのですか?」

お父様は何も言わず黙っている。

「ならば、今回の生贄は無効ということになるな。ならばそれ相応の対価が必要だ」

鬼がお父様に鋭い爪を向けた。

「待て。俺と取引しないか?」

西園寺さんが鬼に言った。

「取引、だと?」

鬼がこちらに顔を向ける。

「お前の生贄になるはずだったこの娘を俺の妻にする。その代わりにお前たち妖の願いを一つ聞く」

え?

いきなり何を言ってるのこの人は。

「ならば、お前のその血をよこせ。お前の血は普通の人間とは違うからな」

「…そうかわかった」

鬼が小さな瓶を西園寺さんに渡した。

西園寺さんは小刀を取り出し自分の腕を切りつけた。

腕からは血が流れ、それを瓶に入れた。

「これでいいか?」

「いいだろう。取引成立だ」

鬼はそう言うと、静かに消えていった。

「よかったな。生贄にならずに済んだようだ」

それはよかったけど、それとこれとは話が別だ。

「あの、どういうことですか?私を妻にするって」

「君のある力が必要なんだ。そのために妻になってほしい」

「申し訳ありませんが、私には巫女の力もないんです。呪いを受けた時に失ってしまったようですから」

呪いを受けたからというもの、巫女の力である予知能力が全くなくなってしまったのだ。

「俺が言っているのは予知能力の力じゃない」

予知能力じゃない……?

何を言っているのか、理解できなかった。

「あなたなら、この言葉の意味がわかるでしょう?白椿家のご当主」

お父様は、さっきの出来事で呆気に取られている様子だった。

「何もここで話すようなことではありませんね。せっかくですから、奥方と妹君にも一緒に聞いていただきましょう」

西園寺さんが指をパチンと鳴らした。

着いたのは白椿の邸宅だった。

「なんなのあなた、いきなり人様の家に上がり込んで……」

いきなり現れた私たち三人を見て、お母様と摩利はひどく驚いた顔をしている。

「お姉様……」

「突然の訪問、失礼する。単刀直入に申し上げるが、白椿摩耶を私の妻として迎えたい」

「は?」