無能令嬢と祓い屋の契約結婚

お香を焚く匂いで目を覚ました。

「目が覚めたか」

若い男の人が声をかけてきた。

「誰……ですか?」

「俺の名前は西園寺忠政(さいおんじただまさ)。祓い屋をやっている。君は?」

「私は、白椿摩耶です」

「白椿……君は白椿家の令嬢か?」

私の家のことを知っている……?

「なぜあなたが白椿家のことを?」

「俺の家は祓い屋だから、巫女や術者たちの家系には関わりが多い。白椿家のことも噂で聞いたんだ。とても霊力が強い家系だと」

よかった。

私が呪い持ちだと言うことは知らないようだ。

「しかし、さっきから君から妖の気配がするんだが…」

前言撤回、バレた。

隠しておくのもしょうがないと思い、いつもは布で隠している妖から受けた呪いの印を見せた。

「これだと思います…」

私の右手の甲にある刻印を見た西園寺さんは驚いた顔をした。

「これは…」

「妖から受けた呪いです」

「妖から?」

西園寺さんが険しい顔になった。

「それは、いつ頃の話?」

「私が六歳の時なので、十年くらい前です」

「十年前か…」

西園寺さんは何か考え込んでいた。

「その場所はおぼえてる?」

「はい」

西園寺さんがさらさらと紙に五芒星を描いた。

「これに指を置いてその場所を強く思い浮かべるんだ」

よくわからなかったが、私は紙に指を乗せて呪いを受けた場所を思い浮かべた。

「え?」

気がついたら、あの場所に来ていた。

一体何が起こったのだろう?

「十年も経っているのにこれだけ気配が残っているのか」

妖が封印されていた祠に西園寺さんが手をかざした。

「ここに封印されていた妖って何か分かる?」

「確か…鬼だったと思います…十年に一度、生贄を捧げて、白椿家が栄えるようにって」

「なるほど…生贄ね」

「お、お前…!なんで戻ってきた!」

聞き覚えのある声に振り返った。

「お父様…」

あの世のものでも見たような顔だ。

「あなたが、白椿家の当主ですか?」

「なんだお前…あなたはっ!」

西園寺さんの顔を見て顔色を変えた。

「ここに封じていた鬼は、どこにいるんです?」

「それは……」

その時、私の右手の印が光った。

「今回の生贄はこの娘か?」

現れたのは禍々しい鬼だった。

鬼が私を見て目をぎらつかせる。

「生贄の前に聞きたいことがある」

西園寺さんが鬼に尋ねた。