無能令嬢と祓い屋の契約結婚

私は、あかぎれだらけの手を擦り合わせた。

真冬の今の季節は、水が氷のように冷たくなっている。

手もかじかんでいるので、思うように動かない。

「あら,お姉様まだ終わってなかったの?」

「相変わらず使えない子ね。この家においてあげているっていうのに掃除もまともにできないなんて」

お母様と妹の摩利(まり)がやって来ていつものように嫌味を言う。

私、白椿摩耶(しらつばきまや)は白椿家の長女として生まれた。

小さい頃は両親も可愛がってくれた。

だが、私が六歳になった時、入ってはいけないと言われていた場所に足を踏み入れてしまった。

その時、呪いをかけられたのだ。

私が呪い持ちになったからというもの、周りの態度は一変した。

私を家族としてではなく、使用人としてこき使い始めた。

掃除や家の手伝いをする以外で家の中で生活することは許されず、蔵で食事を摂ったり、眠ったりしていた、

早くこの家から出て行きたい、そう思ってはいたが、縁談でも来ない限りこの家から出ることは叶わない。

もしくはそれすらもなく、この屋敷で生涯を終えなければならないかもしれない。

いつか自由に。

その希望を抱いて毎日を過ごしていた。


「摩耶。町まで買い物に行ってきて」

お母様に言われ、私は町へ出かけた。

町へ行くまではかなりの時間がかかる。

そして真冬の寒さに薄着で外を歩いていては、凍え死んでしまうだろう。

「さ、寒い……」

十分ほど歩いたところで雪がちらちらと降ってきた。

早く町に辿り着かなければ。

歩みを進めるが、雪は時間が経つにつれ大雪に変わり、吹雪になった。

私はその場にしゃがみ込んだ。

雪で視界が遮られている。

もう自分がどこにいるのかもわからない。

いっそこのままここで死んでしまった方がよっぽどいいかもしれない。

頭にそんな考えがよぎった。

そうすればもう、辛い日々を過ごさずに済む。

来世で生まれ変わることができたら、次は幸せな人生を送りたい。

そう願って目を閉じた。


「…い。…おい。こんなところで何をしているんだ」

誰かの声が聞こえる。

夢かと思ったが、体を揺さぶられる感覚があり目を開けた。

「生きてはいるようだな。妖の気配がしてきてみれば、人間の娘だったとは」

私の体がゆっくりと持ち上げられた。

寒いはずなのに暖かい。

なぜか安心して、私は再び目を閉じた。