宵闇の夜明け ―無人島で拾った運命の断片―

雨が止み、雲の切れ間から差し込んだ光が、濡れた島を宝石のように輝かせた。


「……船だ」


カイトの掠れた声に顔を上げると、水平線に救助船の白波が見えた。
現実が、私たちを連れ戻しに来たのだ。


私は立ち上がろうとしたが、腰に力が入らず、下腹部に残る重い違和感に再び崩れ落ちそうになった。


「大丈夫か、サキ」


カイトが手を差し伸べてくれる。彼の足の傷も、昨夜の無理と今の冷えで、ひどく痛むはずだった。私は彼の肩を借りて、なんとか立ち上がった。


「カイト君……。お姫様抱っこなんて、無理しなくていいよ。足、痛いんでしょ?」
「……ああ。でも、お前を一人で歩かせたくない」


結局、私たちは互いに肩を組み、密着するようにして歩き出した。
私の体には彼の熱が残り、彼の傷ついた足には私の重みがかかっている。


砂浜を、一歩、また一歩。


処女を失った痛みと、彼を支える誇らしさが、足取りを重く、そして確かなものにした。
船から降りてきた大人たちが、慌てて私たちに駆け寄ってくる。


「二人とも! 無事か!」


大人たちの手に委ねられる直前、カイトが私の耳元で、消え入りそうな声で言った。


「……ナイショ、だからな」


私は短く「うん」と答えた。
大人たちに囲まれ、毛布に包まれ、別々のボートに乗せられる。


「サキちゃん、怖かったわね」と頭を撫でる大人の手は、カイトの熱い指先とは全く違う生き物のようだった。
私たちは、一度も振り返らなかった。


けれど、密着して歩いたあの瞬間の、私の脇腹に触れていた彼の体温だけは、潮風に吹かれても決して冷めることはなかった。