23:59 - 恋はいつも、あと1分だった。-

『あいたい。』

送信ボタンを押した瞬間、自分でも驚いた。

別れて半年。

連絡を取らなくなって3ヶ月。

もう終わった恋だと思っていた。

思おうとしていた。

だけど、眠れない日は決まって彼を思い出す。

コンビニで見かけた新作のお菓子。

駅前の居酒屋。

ふと流れてきた曲。

何を見ても、あなたがいた。

スマホを見ると、画面の上には送ったばかりの4文字。

何をしているんだろう。

今さら言っても困らせるだけだ。

私は唇を噛んだ。

まだ間に合う。

指が自然とメッセージを長押しする。

【送信を取り消しますか?】

迷ったのは1分だった。

【はい】

画面から言葉が消える。

代わりに残ったのは、

『メッセージの送信を取り消しました』の文字だけ。

これでよかった。

そう言い聞かせる。

もう前を向かなきゃいけない。

そのときだった。

スマホが震える。

彼からの通知だ。

『今、仕事終わった。』

そして、

『何か送ってた?』

私は画面を見つめる。

そして、ゆっくりと文字を打つ。

『元気かなって思っただけ。』

返信はすぐにきた。

『そっか。』
『元気だよ、心配してくれてありがとう。』

昔なら、

どうでもいい話が続いていた。

私は何度か文字を打っては消した。

『うん。』

それから、通知が鳴ることはなかった。

あいたい。

その4文字が言えていたら、何か変わっていたのかな。

でも、もう一度言うことは出来なくなっていた。