コイワズライ

 一郎からもらったチケットで奏と映画を見に行った。奏が好きな俳優が出ている恋愛映画で、ベタな展開は慧にとっては少し退屈だったが、隣で奏がポップコーンをつまんでいる姿を見るとどうでも良くなった。

「あれ、永島先生と笹尾先生?」

 映画館を出ると光栄学院の生徒たちに出くわした。複数の男女グループで遊んでいたようで、慧と奏のことを好奇の目で見ている。

「もしかして」

 一人の男子生徒が意地の悪い笑みを浮かべたので、慧は言った。

「俺たち、付き合ってるんだ」


 奏と二人で「ことのは」を訪れ、一緒にドリアを食べた。奏は最初、直哉を見て少し怖がっていたが、ドリアを食べていると金髪のマスターを見る目が次第に尊敬の眼差しに変わっていった。

「栞さん、綺麗な人だね」

 微笑む栞の写真を見て、奏は目を細めた。もし栞が生きていたら、きっと奏と仲良くなれたんじゃないかと慧は思った。優しくしっかり者の奏と口の減らない栞。二人は良い姉妹になれただろう。

「慧くんには似てないね」
「そうか。それは良かった」

 直哉が慧を見てふんと鼻を鳴らす。

「あ、すみません。マスターにもあまり似てないかも。でも」と奏は二人を交互に見る。「二人はちょっと似てるかも」
「「それはないな」」

 声が揃ったのを見て、奏はくすくすと笑った。