慧はゆっくりと立ち上がると、ガクガクと震える膝を強く叩いた。しっかりしろ。まだ終わっていない。
直哉は初めて会った時のように険しい顔をしていて、買い物帰りなのか手には何故かエコバッグを持っていた。
「情けないな、慧」
「……うるさいですよ」
「生徒を不安にさせたら教師失格だ。二人とも怯えてるぞ」
もう大丈夫だ、と直哉は慧には見せたことがないような優しい顔で颯太と澄花に声をかける。一度「ことのは」に連れて行ったことがある澄花は直哉を見て安心したような表情を浮かべたが、颯太は初めて見る金髪の来訪者をまるで珍獣を見るような目で見つめていた。
冷静さを取り戻した慧がすかさずフォローする。
「ああ、すまん、宮本。このおっさんは門馬理事長の息子だ」
「え? 理事長の?」
光栄学院始まって以来の秀才が上げる素っ頓狂な声に、慧は思わず吹き出しそうになる。
「おい、慧。その紹介の仕方はやめろ。吐き気がする」
オエッ、と直哉は口をすぼめ吐き出す真似をした。
「そんなこと言われても。事実じゃないですか」
「別の言い方があるだろが」
「ったく。面倒くさいな」
慧はポリポリと頭を掻く。
「じゃあ宮本、このおっさんは『ことのは』ってカフェのマスターで──」
慧は一瞬だけ言葉を止める。しかし、こういうのはあまりためらわない方が良いなと、ひと思いに口にした。
「俺の、親父だ」
直哉は初めて会った時のように険しい顔をしていて、買い物帰りなのか手には何故かエコバッグを持っていた。
「情けないな、慧」
「……うるさいですよ」
「生徒を不安にさせたら教師失格だ。二人とも怯えてるぞ」
もう大丈夫だ、と直哉は慧には見せたことがないような優しい顔で颯太と澄花に声をかける。一度「ことのは」に連れて行ったことがある澄花は直哉を見て安心したような表情を浮かべたが、颯太は初めて見る金髪の来訪者をまるで珍獣を見るような目で見つめていた。
冷静さを取り戻した慧がすかさずフォローする。
「ああ、すまん、宮本。このおっさんは門馬理事長の息子だ」
「え? 理事長の?」
光栄学院始まって以来の秀才が上げる素っ頓狂な声に、慧は思わず吹き出しそうになる。
「おい、慧。その紹介の仕方はやめろ。吐き気がする」
オエッ、と直哉は口をすぼめ吐き出す真似をした。
「そんなこと言われても。事実じゃないですか」
「別の言い方があるだろが」
「ったく。面倒くさいな」
慧はポリポリと頭を掻く。
「じゃあ宮本、このおっさんは『ことのは』ってカフェのマスターで──」
慧は一瞬だけ言葉を止める。しかし、こういうのはあまりためらわない方が良いなと、ひと思いに口にした。
「俺の、親父だ」
