「こちらは『交際を認可されたカップルが後に破局した割合』です。ご覧いただければわかるように、こちらは約七割がそのような残念な結末を迎えたということを示しています」
慧がそう言うと、早智枝は冷笑を浮かべる。
「永島先生。あなたは先ほど『七割の人間は学生時代の恋愛が実を結ばなかった』というようなことを説明してくれませんでしたか? それだと、今のデータはそれを裏付けているだけのように思えますが」
「ええ。そのとおりです」
慧は頷く。
「つまり、交認で認可したカップルはどこにでもいる普通のカップルと同じだということです」
「……何ですって?」
早智枝の声が曇る。
「交際認可審議会などと大仰な名前がついた組織で、生徒より冷静で経験が豊富な『大人の判断』を下していると錯覚しているのかもしれませんが、結局大人がどんなに議論して生徒の交際相手を決めようが、生徒がその場の勢いで決めた交際と失敗する確率は同じだということです。門馬理事長。だとしたら、交認の存在意義とは一体どこにあるのでしょうか?」
「ふむ。なるほど」
早智枝はそう言うと慧から目を逸らし、虚空を見上げた。しばしの間沈黙が続く。
「反論できないみたい」
澄花が隣で小さく声を上げた。心拍を抑える薬を飲んでこの場に臨んだ颯太は努めて黙っているものの、握った拳を小さく震わせている。
交認は不要だという現役生徒やOB・OGの声。慧が調査した交認での認可は無意味だというデータ。それらが一つになり、門馬早智枝が築き上げた伝統を断ち切ろうとしている。
そうなのだろうか、と慧は思った。これで本当に、交認は終わるのだろうか。
違う。そんなはずはない。門馬早智枝が息子・直哉との軋轢の中で生み出し、長年維持してきたこの組織をそう簡単に終わらせるはずはない。
案の定、早智枝は「少し良いですか」と口を開いた。
慧がそう言うと、早智枝は冷笑を浮かべる。
「永島先生。あなたは先ほど『七割の人間は学生時代の恋愛が実を結ばなかった』というようなことを説明してくれませんでしたか? それだと、今のデータはそれを裏付けているだけのように思えますが」
「ええ。そのとおりです」
慧は頷く。
「つまり、交認で認可したカップルはどこにでもいる普通のカップルと同じだということです」
「……何ですって?」
早智枝の声が曇る。
「交際認可審議会などと大仰な名前がついた組織で、生徒より冷静で経験が豊富な『大人の判断』を下していると錯覚しているのかもしれませんが、結局大人がどんなに議論して生徒の交際相手を決めようが、生徒がその場の勢いで決めた交際と失敗する確率は同じだということです。門馬理事長。だとしたら、交認の存在意義とは一体どこにあるのでしょうか?」
「ふむ。なるほど」
早智枝はそう言うと慧から目を逸らし、虚空を見上げた。しばしの間沈黙が続く。
「反論できないみたい」
澄花が隣で小さく声を上げた。心拍を抑える薬を飲んでこの場に臨んだ颯太は努めて黙っているものの、握った拳を小さく震わせている。
交認は不要だという現役生徒やOB・OGの声。慧が調査した交認での認可は無意味だというデータ。それらが一つになり、門馬早智枝が築き上げた伝統を断ち切ろうとしている。
そうなのだろうか、と慧は思った。これで本当に、交認は終わるのだろうか。
違う。そんなはずはない。門馬早智枝が息子・直哉との軋轢の中で生み出し、長年維持してきたこの組織をそう簡単に終わらせるはずはない。
案の定、早智枝は「少し良いですか」と口を開いた。
