「企む、ですか?」
慧は声が震えないように意識する。早智枝は普段から硬質な雰囲気を持ち合わせてはいるが、ここまで冷酷さを感じることは滅多にない。
あの時に似ている、と慧は思った。
「前回の交認でも必要のない質問をしたり、笹尾先生とのこともありました。どうにも最近のあなたは様子がおかしい」
「そうでしょうか?」
目的を気取られているのか。自分はしっかりとそれを隠せているか。
時間にして三秒程度。しかし、息の詰まるような沈黙が慧を襲った。
「まあ良いでしょう」
早智枝が少しだけ表情を緩める。
「まさか情に流されて教え子に便宜を図ろうとしているのではと思いましたが、最終的な権限は私にありますからね。仮にそういった企てがあっても無駄なことです」
「そんなことは、考えていませんよ」
「そうですか。まあ、今回も進行役は任せます。あなたはこれからの学院を背負う人間です。何せ私が見込んだ人間ですからね」
そう言って「あの時は感動したんですよ」と早智枝は続ける。
「実に合理的な判断でした。栞の元を去るという決断は」
「え?」
栞の名を一番口に出して欲しくない人間からその名が発せられた瞬間、慧の体は硬直した。
「四賀栞。忘れましたか? 亡くなったあなたの恋人です。そして──」
一瞬間を置くと早智枝の口角がゆっくりと、醜く吊り上がった。
「私の孫娘です」
慧は声が震えないように意識する。早智枝は普段から硬質な雰囲気を持ち合わせてはいるが、ここまで冷酷さを感じることは滅多にない。
あの時に似ている、と慧は思った。
「前回の交認でも必要のない質問をしたり、笹尾先生とのこともありました。どうにも最近のあなたは様子がおかしい」
「そうでしょうか?」
目的を気取られているのか。自分はしっかりとそれを隠せているか。
時間にして三秒程度。しかし、息の詰まるような沈黙が慧を襲った。
「まあ良いでしょう」
早智枝が少しだけ表情を緩める。
「まさか情に流されて教え子に便宜を図ろうとしているのではと思いましたが、最終的な権限は私にありますからね。仮にそういった企てがあっても無駄なことです」
「そんなことは、考えていませんよ」
「そうですか。まあ、今回も進行役は任せます。あなたはこれからの学院を背負う人間です。何せ私が見込んだ人間ですからね」
そう言って「あの時は感動したんですよ」と早智枝は続ける。
「実に合理的な判断でした。栞の元を去るという決断は」
「え?」
栞の名を一番口に出して欲しくない人間からその名が発せられた瞬間、慧の体は硬直した。
「四賀栞。忘れましたか? 亡くなったあなたの恋人です。そして──」
一瞬間を置くと早智枝の口角がゆっくりと、醜く吊り上がった。
「私の孫娘です」
