コイワズライ

 一年以内に死ぬ人がわかる。
 いつの頃からか澄花の目に勝手に映し出されるようになったこのカウントダウンが外れたことは、これまで一度もなかった。
 一緒に居られなくなるという絶望。颯太はそれを知っていて自分を遠ざけた。
 颯太は優しい。それはわかっている。それでも、澄花は一緒にいたかった。死んでしまうなら、死んでしまうとわかっているからこそ、残りの時間を一緒に過ごしたかった。
 そんな時、廊下で麗奈とすれ違った。一年生の時に担任だった麗奈は教師の中では年齢も近く、澄花も気さくに話すことができた。それ故、生徒に話すべきでない秘密の話を教えてくれることもある。
 その時もそうだった。

 ──ちょっと広まっちゃえ! くらいの感じで話すんだけどね……。

 藤咲さんがおしゃべりだと思っているわけじゃないよ、と注釈を入れてから、麗奈は慧と奏が密かに付き合っているということを教えてくれた。隠れて付き合っているせいで一緒に外を出歩くこともできないこと、教審に申請書を出そうと提案しても慧が首を縦に振らないことなど、奏がいかにもどかしい気持ちで過ごしているかを麗奈は熱弁した。
 話し終える頃には落ち着きを取り戻したのか、「やっぱり誰にも言わないで!」と口にしたことを後悔しているように麗奈は去っていった。
 自分と颯太も似たようにお互いの気持ちを周囲に隠しながら過ごしてきた。吹聴して二人を苦しめようという気は毛頭ない。
 しかし、澄花の頭に邪な考えが浮かんできた。慧は理事長である早智枝から高く評価されており、交認の№2という立場である。もしかしたら、これを利用することができるのではないか。颯太と一緒に過ごす時間が少しでも増えるのではないか。
 澄花は一縷の望みに懸けることにした。