コイワズライ

「本当に良かったね」

 その日の夜、慧と奏はいつも通りパソコンを介して向き合っていた。危機を切り抜けたことで少しくらい祝勝会でもという欲望が慧の頭に浮かんだが、それは油断だとすぐに気を引き締めた。生徒会という生徒を代表する立場の人間に自分たちの交際を黙認させたという重さを忘れてはならない。

「大事なのはこれからだ」

 これで交認を廃止できなければ、今日のことは何の意味もなくなる。

「どうやって動いていくつもりなの?」
「いきなり廃止しろと言って理事長が聞くわけもないし、俺一人で理事長室に乗り込んでその場でクビを言い渡されたら元も子もない。だから──」

 交認という生徒たちを裁く場で、自分も理事長も逃げ道のない場で廃止を訴える。
 慧はそう考えていた。その時まで、自分の思惑が理事長に知られてはならない。

「あの二人の力も必要になる」

 まずは通常の流れで交認の開催にこぎつける。そのためには生徒の申請が必要だ。
 交認が廃止されればあの二人も一緒になることができる。

「二人のこともしっかりと守ってあげよう」

 奏の言葉に慧は同意する。
 そのためには、二人のことを知らなければならない。

「明日、話を聞いてくるよ」

 どのように出会い、お互いをどのように思っているのか。慧はまだ知らないことばかりだった。