この間、泣いていた子は私の隣のクラスらしい。名前は中野さんと呼ばれていた。あれから2日間、中野さんは学校を休んでいた。
 中野さんが学校に来たと聞いて、私は隣のクラスに見に行った。休み時間になってすぐに教室を出たが、中野さんは教室にはいなかった。
 中野さんを探しながら廊下を歩いていると、人気のない棟の物置から2日前に聞いたあの泣いている声が聞こえてきた。
 中野さんの事は見つけた。けど、仲良くもない子に何を話せばいいのかも分からない。それでも、せっかく見つけたのにここでただ、立っているわけにはいかない。
 私は思い切って声を掛けてみた。

「中野さんだよね。」

「…!」

  いきなり声を掛けたせいで驚かせてしまった。
  けど、とても可愛くてちっちゃい子のように見えた。

「ごめんね。いきなり声掛けちゃって。」

「あ、あの。粼さんですよね。」

「あ、名前知っててくれたんだ。」

 名前を覚えているとは思ってなかったから、少し驚いたけど嬉しかった。

「粼さんは、学年の中でもすごく可愛いって言われてるから。」

「えっ。あ、そうなんだ。知らなかった。」

「周りの人たちもみんな言ってるから、粼さんは知ってるのかと思ってた。」

 彼女の目はキラキラと輝いて見えた。
 驚いたこともあったけど、彼女の話を聞いてみたかった。少し落ち着き始めたので、私は思い切って聞いてみた。

「それで、どうして泣いていたの?」

「…。」

 彼女の目からは光が消え、俯いてしまった。

「ごめんね。私には何もできないかもしれな…」

「あ、あの!」

 中野さんは私の言葉を遮り、声を発した。

「粼さんは可愛くて優しいし、粼さんが話に来てくれて、とても嬉しかったんです。だから、なにもできなくないです。」

「そっか。」

 その言葉に少し救われた気がした。彼女を救おうとしたのは私の方なのに少し変な気持ちになった。

「湊くんのこと、好き?」

「はい…。すみません。」

「謝る必要なんてないんだよ。誰かを好きでいるのってとてもいい事だと思う。私はまだ、誰かを好きになった事はないから説得力ないと思うけど。」

「私湊くんのこと、好きです。すごくすごく好きです。」

「そっか…。」

「だから私あの二人のこと、応援します。それで好きな人が幸せになれるなら、私は大丈夫です。」

 きっと割り切れてはないけど、さっきまでとは違う迷いのない目になったのが見えた。

「…中野さん。明日から一緒にお弁当食べない?」

「いいんですか?」

「もちろんだよ。それと、夏乃でいいよ。同い年なんだし敬語もいらないからね。」

「な…夏乃ちゃん。」

「うん!じゃあ、今日から私たちは友達だね!」

 私は彼女にそう言った。
 彼女は困ってしまうんじゃないかと思った。だけど、彼女の目はとても丸く、明るかった。

「じゃあ、私の事もゆいって呼んで欲しいです。じゃなくて、呼んでくれないかな。」

「そうだね。じゃあ、ゆいちゃん!」

「あ、ありがとう!」
 
「あ、夏乃ちゃん。もうすぐ昼休み終わっちゃうね。」

「私、移動教室だった!そろそろ行くね!またお話しようね。」

「うん!」

 昼休みの時間も少なくなってきたので、ゆいちゃんとは一度別れた。