○前回の続き 学校の道場・昼
魁人「おぉぉぉ!!」※気合が入った感じ
魁人が強い力で、切りかかる。
沙賀羅「まだ、やるんだ。限界じゃない?」
押し合う。
魁人「あいつは、純粋で、愛情深い奴なんです。だから、巫女姫にもなった。汚さないで下さい」
沙賀羅「それを、俺が知らないとでも?」
魁人「……」
沙賀羅「質問に答えてないな。俺が、彼女を心から愛していたら、どうするの?」
魁人「えっ……」
沙賀羅が強い力で押し、怯んだ魁人を肘で打つ。魁人は、刀を落とし、転ぶ。沙賀羅が、魁人の喉元に、刀を突きつける。
審判「勝者!」
観客席から、大きな歓声が上がる。
沙賀羅が、魁人に手を貸し、立ち上がる。
沙賀羅「まだまだ、龍家の当主に及ばない。精進して」
魁人「はい。ありがとうございました」
○道場の隅・昼
汗を拭く魁人と葵葉。
葵葉「魁人、頑張ったね!大丈夫?」
魁人「やっぱ、怖いし、強いわ……俺が、死んだら、お前は悲しんでくれる?」※弱気
葵葉「当たり前だよ!そんな事言わないで……」※悲しい顔
魁人「俺、いつか、お前を連れて逃げるから!」※元気に
葵葉「叔父さんや龍家は、いいの?」※呆れ
魁人「あ、とにかく、もっと強くなる!」
葵葉(いつもの魁人だ)※ほっとする
反対側で、座る沙賀羅は、汗が滴り落ちながら、水筒を飲む。蘇芳と、魁人と葵葉を見る。
蘇芳「お疲れ~どうした?一瞬、本気だっただろ。あら、お姫様と半妖は、仲良き事」
沙賀羅が睨みつけ、立ち上る。
蘇芳「冗談だよ!怖いな。前からの「お友達」なんだろ?でもな、お前も一回でいいから、片思いとか失恋してみろよ。いい人生経験になるぞ!ほら、こっち来るよ、お姫様」※怯えながら
葵葉「沙賀羅先輩、お疲れ様です」
蘇芳「姫、いいかな?」
葵葉が自らを指さす。
蘇芳と葵葉で後ろを向き、こそこそ話す。睨む沙賀羅。
蘇芳「どうして、初めにこっち来ないの?パイセンに、挨拶が先でしょ?」※笑顔で言い聞かせる
葵葉「あぁ、すみません。魁人がすぐ近くにいたので」※焦る
蘇芳は、沙賀羅に耳打ちする。
蘇芳「敵は、距離らしいぞ」※苦笑い
葵葉はキョトンとする。
蘇芳「邪魔者は消えるね」
蘇芳が、観客席の女子高生を指差す。
沙賀羅が、無表情で、自らの喉仏を指で差し、首を振る。
蘇芳「分かってます!」※可愛くプンプンする
沙賀羅「ちょっと来て」
葵葉「はい」
○学校の廊下・夕方
先を歩く胴着の沙賀羅と葵葉。突然、沙賀羅が、葵葉の手をぐっと引いて、誰もいない資料室に入る。
おかっぱ女子高生が柱に隠れ、見ている。
○資料室・夕方
殺気立つ沙賀羅が強く迫り、押された葵葉は机に少しお尻をつく。沙賀羅と近い距離で、見つめ合う。ドアが一部ガラス張りで、部屋の外から、生徒の笑い声。
葵葉「先輩、どうしたんですか?」※戸惑い
沙賀羅「俺の物にしたくなる」※掠れた声
葵葉「え?」
沙賀羅の息遣いを感じる葵葉。
葵葉「……先輩?」
沙賀羅「言ってごらん。私は、沙賀羅先輩の喜ぶ事を何でもしますって」※クール
葵葉「……私は、沙賀羅先輩の……喜ぶ事を、何でも……します」※恥ずかしそうに
沙賀羅「俺の喜ぶ事って、分かる?」
葵葉「す、すみません……分かりません」
沙賀羅「頭の中を、俺で一杯にしないと」※色っぽい目つき
沙賀羅が左手で葵葉の頬に触れ、右手でスカートに隠れた太腿に触れる。
沙賀羅が、両手で葵葉の頬を包み込み、唇を寄せる。※アップ
ぎゅっと目を閉じる葵葉。唇が触れそうな瞬間、「ドン」とドアを蹴った音。
沙賀羅が、ドアに振り向き、ため息をついてから、ドアを開けると、誰もいない。
先生の声「沙賀羅君―!」
沙賀羅「続きはまたか」※不機嫌
○廊下・夕方
二人は、廊下へ出て、沙賀羅は立ち去る。
葵葉は頬を赤らめながら、ほっとする。資料室の中から出た手に引かれ、引っ張られる。
葵葉「え」
○資料室・夕方
香清蘭女子の制服、おかっぱ頭で可愛いらしい紅と葵葉が対峙。
紅「あなた、沙賀羅様の何?もしかして、人?」
葵葉(どうして、人だって……)「ク、クラスメイトです」
紅「はぁ?ただのクラスメイトな訳ない!お姉様が、強い匂いは、何かを隠してるって。うちの家宝の難しい本で読んだって言ってた。人だったり、何かあるの!」
葵葉「……」(なんて言ったら……)
紅が、ポケットから出した小さな巾着を振り、机に赤い歯を落とす。片手の手の平を見せ、白い炎を出す。その炎で歯を燃やすと、煙が出る。
紅「プンプン匂わせ構ってちゃん女!!どっか行け!」
葵葉「えぇ」
煙で、何も見えなくなる。
○学校廊下・昼
廊下を歩く沙賀羅。
沙賀羅(最近、どうも乱される。それにしても、先生の声がフェイクだとすると」
資料室の前から煙が出て、二人の生徒がいる。
生徒「何、この煙」
沙賀羅「!」
○灯篭と石畳が続く暗闇
葵葉が目を開けると、紅は10才に変化。葵葉は、辺りを見回す。
葵葉「姿を変えてたの?大丈夫?痛い所はない?」
紅「あなただけ、飛ばすはずだったのに。何で、上手くいかないの!」※涙目
葵葉「大丈夫。戻れるよ」※優しく
紅は泣き出す。
紅「痛くない。あ―ん。私が沙賀羅様の奥方様になるの!うちの家は、統領の奥方様になる家柄!お姉様にだって、負けないんだから」
葵葉「怪我がなくて、よかった。お名前は?」(沙賀羅先輩の奥方様候補なのか……)※胸の痛みを感じる
紅「緋家の紅」
葵葉「紅ちゃんね」
紅「何あれ……」※前を見て、恐怖の顔
石畳から、「着物・髷がある長髪・皮膚が石化の」化け物の頭だけが見える。巨大な手が伸び、葵葉に襲いかかり、紅は逃げる。葵葉と化け物の長い爪の間1センチの所で、化け物は躊躇する。
葵葉「え?」
化け物は、石畳の中に消える。
葵葉「どうして……。あれ、紅ちゃん?紅ちゃ―ん!!」※焦りながら、キョロキョロ
沙賀羅に、後ろから抱きすくめられ、口を塞がれる。
葵葉「う」
沙賀羅「声は出さない方がいい」
葵葉「先輩!」※小声、嬉しい
葵葉「紅ちゃんが、いないんです!」
沙賀羅「緋家の子だから、自力で何とかするよ」
葵葉「子どもですよ」
沙賀羅「こんな所でやられたら、この世界では、生きていけない」※厳しい顔
葵葉「あ……」
沙賀羅が、葵葉に手を差し出す。
沙賀羅「守るって言ったでしょ」
葵葉は、沙賀羅の顔を見つめ、その手を取る。
葵葉「先輩、ありがとうございます」※控え目な喜び
頷く沙賀羅は少し嬉しそう。二人は手を繋ぎながら歩くと、悲鳴が聞こえる。
紅「きゃぁぁぁ」
化け物三匹に囲まれた紅。機敏に、上手く避けるが、化け物の大きな手に掴まれそうになる。
葵葉「紅ちゃん!」
葵葉は、紅を庇い、守るように抱き、沙賀羅が盾になる。化け物は、ギリギリで静止。
沙賀羅「歯を返して。まだあるでしょ?」
紅はポケットを触り、小さな巾着を出す。
沙賀羅が、化け物に歯を渡すと、化け物達は、石畳の中に消える。
紅「さすが、沙賀羅様」※うっとり
「知性を感じさせる透明感ある美女、編み込みシニヨンの香清蘭女子制服姿の」朱夏が現れる。
紅「お姉様!」
紅が、朱夏に駆け寄る。朱夏は、葵葉に頭を下げる。
朱夏「お怪我はないですか?私は、緋家の朱夏と申します。この度は、妹の紅がご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません。紅も謝りなさい」
朱夏は、紅の頭を下げさせた。
葵葉「庚家の葵葉と申します」(はぁ、なんて美人さん。顔だけでなく、オーラっていうか、輝いてる)※目が離せない
朱夏「沙賀羅、本当にごめんなさい」
沙賀羅「紅ちゃんは、賢いね。でも、次はないよ」※紅に目線を合わせ、微笑む
朱夏「葵葉さんには、二度と近づきません。紅、正妻になる心構えは教えたはずですが。鍵のかかった蔵から、持ち出したのね?」※怒り気味
紅「はい。ごめんなさい」※悲し気
沙賀羅「さすが朱夏。全部分かってるね」※微笑む
朱夏「沙賀羅、わざと強い匂いをつけたでしょ」※微笑む
紅が、葵葉の耳元に小声で話す。
紅「悪い事したから、ちょっと教えてあげる。沙賀羅様のかけた呪いに、愛が入ってるから、化け物は嫌がったの。こんな事を教えてあげる私は、いい女!だから、奥方様になるのは、私!!」
葵葉(強い……愛!?)※顔を赤らめる(でも、愛にはいろんな種類が……って、恋愛した事ないけど)
○学校の廊下に戻る・夜
葵葉「先輩、朱夏さんとは、お友達ですか?」
沙賀羅「俺の嫁候補だから、子どもの頃から知ってる。朱夏は、同類だから。そういう意味では、相性いいのか。考えた事なかった」※考え込む
葵葉(誰が見ても、お似合いな美しい二人)※ちょっと落ち込む
沙賀羅「完璧だから、心が……」
葵葉「先輩?」
葵葉が振り返ると、遠く離れた朱夏がまだこちらを見る。隣には紅。
朱夏(沙賀羅は、自分の命をかけた唯一無二の呪文を、葵葉さんにかけて、全力で守ってる。最愛の人に捧げると言われる呪い……)※寂し気な顔
紅「お姉様?」
○学校の廊下・夜
沙賀羅と葵葉が廊下を歩くと、生徒達とすれ違う。花火が上がり、二人は、立ち止まる。
沙賀羅「皆、屋上じゃない。見て来たら?行くね」
沙賀羅が先を歩き、右手をあげる。その背中を見つめる葵葉は、叫ぶ。
葵葉「よかったら、一緒に、花火見ませんか?」※思い切って
沙賀羅は振り向かず、静止。
葵葉「あの、先輩と見たいです」※控えめに
沙賀羅「おいで」
葵葉が、笑顔で駆け寄る
○学校の庭の茂み・夜
沙賀羅が、一人分の大きな石の上に座り、見つめる葵葉。
沙賀羅「ここ」
沙賀羅が、自らの膝の上を目で教える。葵葉を、横向きで座らせる。
葵葉は恥ずかしがりながら、見つめ合う二人。沙賀羅が、顔を一瞬傾け、キスする振りをする。
沙賀羅「フェイク」
二人で笑う。また、花火が上がる。花火を見る葵葉。
葵葉「きれいですね」
沙賀羅が葵葉を見つめ、気づく葵葉。葵葉のおでこにキスをする。
遠くの爆発音が、体育館のステージで歌う三玖二の歌声と花火の音でかき消される。
魁人「おぉぉぉ!!」※気合が入った感じ
魁人が強い力で、切りかかる。
沙賀羅「まだ、やるんだ。限界じゃない?」
押し合う。
魁人「あいつは、純粋で、愛情深い奴なんです。だから、巫女姫にもなった。汚さないで下さい」
沙賀羅「それを、俺が知らないとでも?」
魁人「……」
沙賀羅「質問に答えてないな。俺が、彼女を心から愛していたら、どうするの?」
魁人「えっ……」
沙賀羅が強い力で押し、怯んだ魁人を肘で打つ。魁人は、刀を落とし、転ぶ。沙賀羅が、魁人の喉元に、刀を突きつける。
審判「勝者!」
観客席から、大きな歓声が上がる。
沙賀羅が、魁人に手を貸し、立ち上がる。
沙賀羅「まだまだ、龍家の当主に及ばない。精進して」
魁人「はい。ありがとうございました」
○道場の隅・昼
汗を拭く魁人と葵葉。
葵葉「魁人、頑張ったね!大丈夫?」
魁人「やっぱ、怖いし、強いわ……俺が、死んだら、お前は悲しんでくれる?」※弱気
葵葉「当たり前だよ!そんな事言わないで……」※悲しい顔
魁人「俺、いつか、お前を連れて逃げるから!」※元気に
葵葉「叔父さんや龍家は、いいの?」※呆れ
魁人「あ、とにかく、もっと強くなる!」
葵葉(いつもの魁人だ)※ほっとする
反対側で、座る沙賀羅は、汗が滴り落ちながら、水筒を飲む。蘇芳と、魁人と葵葉を見る。
蘇芳「お疲れ~どうした?一瞬、本気だっただろ。あら、お姫様と半妖は、仲良き事」
沙賀羅が睨みつけ、立ち上る。
蘇芳「冗談だよ!怖いな。前からの「お友達」なんだろ?でもな、お前も一回でいいから、片思いとか失恋してみろよ。いい人生経験になるぞ!ほら、こっち来るよ、お姫様」※怯えながら
葵葉「沙賀羅先輩、お疲れ様です」
蘇芳「姫、いいかな?」
葵葉が自らを指さす。
蘇芳と葵葉で後ろを向き、こそこそ話す。睨む沙賀羅。
蘇芳「どうして、初めにこっち来ないの?パイセンに、挨拶が先でしょ?」※笑顔で言い聞かせる
葵葉「あぁ、すみません。魁人がすぐ近くにいたので」※焦る
蘇芳は、沙賀羅に耳打ちする。
蘇芳「敵は、距離らしいぞ」※苦笑い
葵葉はキョトンとする。
蘇芳「邪魔者は消えるね」
蘇芳が、観客席の女子高生を指差す。
沙賀羅が、無表情で、自らの喉仏を指で差し、首を振る。
蘇芳「分かってます!」※可愛くプンプンする
沙賀羅「ちょっと来て」
葵葉「はい」
○学校の廊下・夕方
先を歩く胴着の沙賀羅と葵葉。突然、沙賀羅が、葵葉の手をぐっと引いて、誰もいない資料室に入る。
おかっぱ女子高生が柱に隠れ、見ている。
○資料室・夕方
殺気立つ沙賀羅が強く迫り、押された葵葉は机に少しお尻をつく。沙賀羅と近い距離で、見つめ合う。ドアが一部ガラス張りで、部屋の外から、生徒の笑い声。
葵葉「先輩、どうしたんですか?」※戸惑い
沙賀羅「俺の物にしたくなる」※掠れた声
葵葉「え?」
沙賀羅の息遣いを感じる葵葉。
葵葉「……先輩?」
沙賀羅「言ってごらん。私は、沙賀羅先輩の喜ぶ事を何でもしますって」※クール
葵葉「……私は、沙賀羅先輩の……喜ぶ事を、何でも……します」※恥ずかしそうに
沙賀羅「俺の喜ぶ事って、分かる?」
葵葉「す、すみません……分かりません」
沙賀羅「頭の中を、俺で一杯にしないと」※色っぽい目つき
沙賀羅が左手で葵葉の頬に触れ、右手でスカートに隠れた太腿に触れる。
沙賀羅が、両手で葵葉の頬を包み込み、唇を寄せる。※アップ
ぎゅっと目を閉じる葵葉。唇が触れそうな瞬間、「ドン」とドアを蹴った音。
沙賀羅が、ドアに振り向き、ため息をついてから、ドアを開けると、誰もいない。
先生の声「沙賀羅君―!」
沙賀羅「続きはまたか」※不機嫌
○廊下・夕方
二人は、廊下へ出て、沙賀羅は立ち去る。
葵葉は頬を赤らめながら、ほっとする。資料室の中から出た手に引かれ、引っ張られる。
葵葉「え」
○資料室・夕方
香清蘭女子の制服、おかっぱ頭で可愛いらしい紅と葵葉が対峙。
紅「あなた、沙賀羅様の何?もしかして、人?」
葵葉(どうして、人だって……)「ク、クラスメイトです」
紅「はぁ?ただのクラスメイトな訳ない!お姉様が、強い匂いは、何かを隠してるって。うちの家宝の難しい本で読んだって言ってた。人だったり、何かあるの!」
葵葉「……」(なんて言ったら……)
紅が、ポケットから出した小さな巾着を振り、机に赤い歯を落とす。片手の手の平を見せ、白い炎を出す。その炎で歯を燃やすと、煙が出る。
紅「プンプン匂わせ構ってちゃん女!!どっか行け!」
葵葉「えぇ」
煙で、何も見えなくなる。
○学校廊下・昼
廊下を歩く沙賀羅。
沙賀羅(最近、どうも乱される。それにしても、先生の声がフェイクだとすると」
資料室の前から煙が出て、二人の生徒がいる。
生徒「何、この煙」
沙賀羅「!」
○灯篭と石畳が続く暗闇
葵葉が目を開けると、紅は10才に変化。葵葉は、辺りを見回す。
葵葉「姿を変えてたの?大丈夫?痛い所はない?」
紅「あなただけ、飛ばすはずだったのに。何で、上手くいかないの!」※涙目
葵葉「大丈夫。戻れるよ」※優しく
紅は泣き出す。
紅「痛くない。あ―ん。私が沙賀羅様の奥方様になるの!うちの家は、統領の奥方様になる家柄!お姉様にだって、負けないんだから」
葵葉「怪我がなくて、よかった。お名前は?」(沙賀羅先輩の奥方様候補なのか……)※胸の痛みを感じる
紅「緋家の紅」
葵葉「紅ちゃんね」
紅「何あれ……」※前を見て、恐怖の顔
石畳から、「着物・髷がある長髪・皮膚が石化の」化け物の頭だけが見える。巨大な手が伸び、葵葉に襲いかかり、紅は逃げる。葵葉と化け物の長い爪の間1センチの所で、化け物は躊躇する。
葵葉「え?」
化け物は、石畳の中に消える。
葵葉「どうして……。あれ、紅ちゃん?紅ちゃ―ん!!」※焦りながら、キョロキョロ
沙賀羅に、後ろから抱きすくめられ、口を塞がれる。
葵葉「う」
沙賀羅「声は出さない方がいい」
葵葉「先輩!」※小声、嬉しい
葵葉「紅ちゃんが、いないんです!」
沙賀羅「緋家の子だから、自力で何とかするよ」
葵葉「子どもですよ」
沙賀羅「こんな所でやられたら、この世界では、生きていけない」※厳しい顔
葵葉「あ……」
沙賀羅が、葵葉に手を差し出す。
沙賀羅「守るって言ったでしょ」
葵葉は、沙賀羅の顔を見つめ、その手を取る。
葵葉「先輩、ありがとうございます」※控え目な喜び
頷く沙賀羅は少し嬉しそう。二人は手を繋ぎながら歩くと、悲鳴が聞こえる。
紅「きゃぁぁぁ」
化け物三匹に囲まれた紅。機敏に、上手く避けるが、化け物の大きな手に掴まれそうになる。
葵葉「紅ちゃん!」
葵葉は、紅を庇い、守るように抱き、沙賀羅が盾になる。化け物は、ギリギリで静止。
沙賀羅「歯を返して。まだあるでしょ?」
紅はポケットを触り、小さな巾着を出す。
沙賀羅が、化け物に歯を渡すと、化け物達は、石畳の中に消える。
紅「さすが、沙賀羅様」※うっとり
「知性を感じさせる透明感ある美女、編み込みシニヨンの香清蘭女子制服姿の」朱夏が現れる。
紅「お姉様!」
紅が、朱夏に駆け寄る。朱夏は、葵葉に頭を下げる。
朱夏「お怪我はないですか?私は、緋家の朱夏と申します。この度は、妹の紅がご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません。紅も謝りなさい」
朱夏は、紅の頭を下げさせた。
葵葉「庚家の葵葉と申します」(はぁ、なんて美人さん。顔だけでなく、オーラっていうか、輝いてる)※目が離せない
朱夏「沙賀羅、本当にごめんなさい」
沙賀羅「紅ちゃんは、賢いね。でも、次はないよ」※紅に目線を合わせ、微笑む
朱夏「葵葉さんには、二度と近づきません。紅、正妻になる心構えは教えたはずですが。鍵のかかった蔵から、持ち出したのね?」※怒り気味
紅「はい。ごめんなさい」※悲し気
沙賀羅「さすが朱夏。全部分かってるね」※微笑む
朱夏「沙賀羅、わざと強い匂いをつけたでしょ」※微笑む
紅が、葵葉の耳元に小声で話す。
紅「悪い事したから、ちょっと教えてあげる。沙賀羅様のかけた呪いに、愛が入ってるから、化け物は嫌がったの。こんな事を教えてあげる私は、いい女!だから、奥方様になるのは、私!!」
葵葉(強い……愛!?)※顔を赤らめる(でも、愛にはいろんな種類が……って、恋愛した事ないけど)
○学校の廊下に戻る・夜
葵葉「先輩、朱夏さんとは、お友達ですか?」
沙賀羅「俺の嫁候補だから、子どもの頃から知ってる。朱夏は、同類だから。そういう意味では、相性いいのか。考えた事なかった」※考え込む
葵葉(誰が見ても、お似合いな美しい二人)※ちょっと落ち込む
沙賀羅「完璧だから、心が……」
葵葉「先輩?」
葵葉が振り返ると、遠く離れた朱夏がまだこちらを見る。隣には紅。
朱夏(沙賀羅は、自分の命をかけた唯一無二の呪文を、葵葉さんにかけて、全力で守ってる。最愛の人に捧げると言われる呪い……)※寂し気な顔
紅「お姉様?」
○学校の廊下・夜
沙賀羅と葵葉が廊下を歩くと、生徒達とすれ違う。花火が上がり、二人は、立ち止まる。
沙賀羅「皆、屋上じゃない。見て来たら?行くね」
沙賀羅が先を歩き、右手をあげる。その背中を見つめる葵葉は、叫ぶ。
葵葉「よかったら、一緒に、花火見ませんか?」※思い切って
沙賀羅は振り向かず、静止。
葵葉「あの、先輩と見たいです」※控えめに
沙賀羅「おいで」
葵葉が、笑顔で駆け寄る
○学校の庭の茂み・夜
沙賀羅が、一人分の大きな石の上に座り、見つめる葵葉。
沙賀羅「ここ」
沙賀羅が、自らの膝の上を目で教える。葵葉を、横向きで座らせる。
葵葉は恥ずかしがりながら、見つめ合う二人。沙賀羅が、顔を一瞬傾け、キスする振りをする。
沙賀羅「フェイク」
二人で笑う。また、花火が上がる。花火を見る葵葉。
葵葉「きれいですね」
沙賀羅が葵葉を見つめ、気づく葵葉。葵葉のおでこにキスをする。
遠くの爆発音が、体育館のステージで歌う三玖二の歌声と花火の音でかき消される。
