○沙賀羅邸の和室・昼 (妖の世界は皆、着物)
漆黒の髪を低めのシニヨンにする紋音が、布団で眠る葵葉を、団扇で仰ぐ。葵葉が目を覚ます。
紋音「お目覚めになりました?私は、紋音と申します。ここは、妖を統べる次期統領のお屋敷です」
葵葉は、上半身を起こす。
葵葉(次期統領?先輩に捕えられてから、記憶がない)
葵葉「神殿の人達は?……沙賀羅先輩は?」
紋音「あなた様は、人質です。一日でも、長く生きられますように、ご自身の身の上を、案じた方がよろしいかと」※冷酷な目つきと笑み
葵葉(人質?)※ぞくっとする。
紋音「お体は大丈夫そうですね。ご案内致しましょう」
紋音は、葵葉に上着を羽織らせる。
○和室(洋家具)・昼
紋音が襖を開けると、絨毯の上のクラシックな椅子の肘掛に、片肘をつき、銀髪・裸眼の沙賀羅が座る。
沙賀羅「昨夜は、手荒な事をしたね」
葵葉「さ、沙賀羅先輩ですよね?」※怯えながら
沙賀羅「俺は、妖の統領である黄家の沙賀羅。人の世界では苗字だけど、俺の本当の名前」
葵葉「あの、神殿では何があったのですか?叫び声が……」
沙賀羅は、両手を組んで、両太腿の間に置く。冷酷な顔になり、雰囲気が変わる。
沙賀羅「そんな事聞いて、どうするの?知って、何が出来るの?」
葵葉「あ……」(守ってもらうだけで、何も出来なかった)※泣き始め、しゃがみこむ。
沙賀羅は、椅子から立ち上り、膝をついて、葵葉の頭にふわっと手を添える。
沙賀羅「ごめん。巫女姫様だから、仕方ないか。綺麗で正しいと言われる物しか、与えられてないし」
紋音「人の世界では、巫女姫様が攫われたと大騒ぎ。歴史書をご用意いたしましょう。人質の行く末が分かりますから」※笑顔
紋音は、部屋から出る。
沙賀羅「君は、どうしたい?」※手を下ろし、葵葉の目を見つめる
葵葉「……帰りたいです」※片目一筋の涙
沙賀羅「神殿に?」
葵葉「は、はい」
沙賀羅「本当に、それでいいの?選ばれただけなのに」
葵葉「え……」
沙賀羅「本心が知りたいな」
沙賀羅は、片手の指で葵葉の顎を持ち上げる。
沙賀羅「君は人質だから、交渉次第だけど、死ぬまで、ここで生き殺しかもしれない。でも、巫女も同じかな?」
葵葉(生き殺し……)
沙賀羅「俺の目を見てごらん」
葵葉(……目に吸い込まれそう)「元の……」
沙賀羅「『元の生活に戻りたい』でしょ?」
葵葉は、コクンと頷く。
沙賀羅「いい子だ。良く出来たね」※微笑む
葵葉(本当は、巫女になんて、なりたくない。家族や友達とずっといたい。選ばれる前の普通の毎日に、戻りたい)※涙を手で拭う
沙賀羅は、立ち上がり、木製の丸い金魚鉢の上に手をかざすと、死んだように金魚が浮き上がる。
沙賀羅「人は、傲慢で愚かだよね。信じたい物だけ、信じる」※金魚を見つめる
再び、葵葉のそばに寄り、膝をついて顔を近づけ、葵葉の頬の涙を、親指で拭う。
沙賀羅「でも、そこが愛おしい」※二人で見つめ合うアップ
金魚が息を吹き返し、また泳ぎ始める。
○庭・朝
葵葉と紋音で、庭園の池まで歩く。
紋音「逃げようとしても、ここは妖の都。よくよく、お考え下さい」※微笑む
葵葉「はい」※沈んだ顔(沙賀羅先輩は怖かったけど、初めて、本心を人に言った……)
沙賀羅が、お付きの男か持つ小皿から、鯉に餌を上げる。
沙賀羅「おはよう。体調は?」
葵葉「おはようございます。問題ありません。ありがとうございます」※緊張気味
沙賀羅「これから、どうしたい?人質らしく、屋敷に籠る?」※優しい眼差し
葵葉「籠りたくは……ない……です」
沙賀羅「じゃあ、俺と学校に通おうか」※微笑む
葵葉「え?」
○洋室・朝
鏡の前に立ち、制服のネクタイを締める眼鏡の沙賀羅。それを見つめるリボンの制服の葵葉。
○葵葉の過去回想
紋音が語る。
「九耀の学園は、妖の中でも、選ばれた者しか通えません。皆様、上位家の子息令嬢で、様々な力をお持ちです。沙賀羅様が、妖に見える呪いをかけますが、油断されませんように。学校外の物はご覧にならない方が、あなた様のためでしょうか……」
○現在に戻る
葵葉(今なら、爾月の巫女様の言った事が分かる。私は、何も出来ない)
沙賀羅「行こうか」
葵葉「はい」※はっとする
葵葉がドアの方を向くと、沙賀羅が後ろから抱きしめ、首に腕を回す。
沙賀羅「俺からは、逃げられないよ」
葵葉「はい」※緊張し、微動だにせず
沙賀羅「人の世界と違って、俺は同じクラスだから。いつでも、守ってあげる」
葵葉「あ、ありがとうございます」
沙賀羅「嬉しい?」
葵葉「え?あ、はい」※顔赤い
葵華の頭をポンポンと叩いて、体を離す。
沙賀羅「頑張ろうね」※微笑む
葵葉の顔は赤く、自分の頭を触る。
○学校の教室・朝
教壇に葵葉が立ち、自己紹介。着席のクラスメイトは、頭だけ魚。頭は人間で、体が虎。美少女、額に星があるポニーテール女子高生等。
葵葉「庚家の葵葉と申します」
生徒「庚家って、途絶えてない?」
葵葉「私は、傍流で」
沙賀羅「最近、再興したかな」※片肘をつく
生徒「再興?沙賀羅が言うなら、そうだな」
○学校の教室・休み時間 昼
葵葉は、隣席の美少女を二度見する。「女子の制服でミニスカート、艶々の長い髪と揃った前髪、アーモンド型の大きな瞳の」三玖二が、視線に気づく。
三玖二「おいおいおいおい、今、見惚れたか?白家の三玖二だ」
葵葉「は、はい!すみません」
三玖二「極上の美しさだから、仕方ねぇか」
三玖二は、ポンと身長80センチくらいの茶トラの猫に姿を変えた。
三玖二「にゃん」
葵葉(にゃん?え……椅子に座って、可愛い」※びっくりしつつ
葵葉は、頭を撫でると、三玖二は気持ちよさそうな顔。
三玖二「可愛くて、悪い。皆に愛されまくりで、つらい。先祖は、人の帝まで虜にして、追放されたからなぁ」※遠い目
葵葉「ほぉ」※感心した風
三玖二が、鼻をクンクンする。
三玖二「忌まわしくもあるけど、皆、人の世界が好きだよな」※葵葉を見つめる
葵葉「え」
(人って、気づいてる?人は、妖を怖がるけど、妖達は、ちょっと人に興味あるの?だから、沙賀羅先輩も、人の世界に?いや、次期統領の視察的な?)
三玖二「葵葉は、沙賀羅の……彼女か?微かに……分かる奴には分かる」
葵葉「違います!!」※顔が赤い、被せ気味に強く言う
三玖二「そ、そんな即答しなくても。沙賀羅が、怒るぞ。あいつ、本気出すと怖えし」※少しびびる
葵葉「あっ、すみません!!」※焦る
三玖二「まっ、沙賀羅は最強だけど、美貌は負けねぇ。あ、祭の準備か」
三玖二は、先程の美少女にポンと戻り、席を立つ。
葵葉(祭?先輩は、クラスメイトにも、恐れられてるの?)
○学校の廊下・昼
モップで掃除する葵葉。「身長180センチで黒い髪が肩につく爽やかな」蘇芳が、モップを片手に、話しかける。
蘇芳「俺は、蒼家の蘇芳。困った事があったら言ってね。……葵葉ちゃん、可愛いね」※笑顔
葵葉「えっ、よ、よろしくお願いします」(甘い声がフワフワして、気持ちがいい)※顔が赤く、目がぐるぐる
蘇芳「葵葉ちゃんの目……」
沙賀羅が後ろから、葵葉の両耳を塞いだ。
葵葉(何?)※キョロキョロ
沙賀羅「俺のお姫様だから、からかうなよ。わざと、その声出しだろう」※嫌な顔
蘇芳「可愛くて、つい。お姫様から、幼馴染殿の匂いがすると思ったら、久々の登校でいらっしゃる。そんなに大切なら、籠に閉じ込めておけばいい。鎖で繋ぐのも悪くないな」
沙賀羅「籠の鳥は、いい声で鳴くかな。俺の好みではない」
蘇芳が笑う。
○沙賀羅邸の洋室ダイニング・夜
沙賀羅と葵葉が、夕飯和食を食べる。
沙賀羅「今日は、どうだった?」
葵葉「皆、親切で、人の世界と変わらないような感じで。ありがとうございます」※緊張気味
沙賀羅「蘇芳の声に、気を付けて。三玖二には、触らない方がいい」※クール
葵葉「は、はい。すみません」
沙賀羅「三玖二は、男だから。あの一族は、見る者を惑わすのが趣味」
葵葉(男?女の子の制服着てたし、声も、可愛いかった」※びっくり
○学校隣の大きな公園入口近く・下校時 夕方
空を見上げ、閉じた傘を持つ葵葉。
葵葉(係で、遅くなっちゃった。雨が降りそう)
怒鳴り声が聞こえ、そちらを見る。
男子1「黙れ!」
ボロボロの服の中年男性に、中等部男子二人が閉じた傘を振り上げる。葵葉は、駆け寄る。
男「すみません。すみません」
雨が、ぽつぽつ降って来た。
葵葉「やめて、やめて下さい!!」
男子1「こいつが悪いんだよ。俺らにぶつかった」
男「わざとでないのです」
男子2「うるさい!人って、くっせぇな。気味悪いし」
葵葉「人?」
男子1「こいつ人の奴隷だから、死んでもいいんだよ」
いつの間にか、傘を差す沙賀羅が立っている。
沙賀羅「……やめろ」※低い声で睨む
男子2「あ、沙賀羅様だ。やべぇ」
男子達は逃げ、雨がひどくなる。
葵葉が、男性のそばに寄り、傘を傾ける。
葵葉「大丈夫ですか?あなたは、人なんですか?」
男性「そうです……。山で遭難して、気づいたらここに。でも、大丈夫。私は人の世界に戻れます。ほら、これ。必ず、巫女様がお救い下さいます」
男性は、ポケットから、大切そうな札を見せた。
葵葉(爾月の巫女様のお札……)「あの、よかったら、この傘を使って下さい」
男性「ありがとうございます」
男性は、立ち去る。
沙賀羅が、葵葉に近寄り、傘を傾ける。
葵葉「あ、ありがとうございます。勝手にすみません。傘を」
沙賀羅「自らの意志で来たのか、神隠しか。それとも、罪人か」
葵葉「え……」
沙賀羅「人は、わざとこちらに罪人を流してる。それを奴隷として使ってるだけ」
葵葉「そんな……」
沙賀羅「知らなかった?」
茫然とする葵葉が、はっとする。
葵葉「お願いします。あの人を、人の世界に返してあげて下さい。神隠しって、言ってました。何でも……何でも、します」※勇気を出して、懇願
沙賀羅が、ため息をつく。
沙賀羅「……君、人質だよ?前も言ったけど、物事の一面しか知らないから」※呆れた顔で、見下ろす
葵葉「あ……すみません」※俯く
びしょ濡れの葵葉は、神殿が襲われた時の情景が頭をよぎる。
葵葉(奴隷って……)
ひざまずいて、頭を地面に擦り付ける。
葵葉「お願いします。何でもします。あの男性を人の世界に」※必死
沙賀羅「どうしようかな」※上から見下し、ぞくっと来る笑み
漆黒の髪を低めのシニヨンにする紋音が、布団で眠る葵葉を、団扇で仰ぐ。葵葉が目を覚ます。
紋音「お目覚めになりました?私は、紋音と申します。ここは、妖を統べる次期統領のお屋敷です」
葵葉は、上半身を起こす。
葵葉(次期統領?先輩に捕えられてから、記憶がない)
葵葉「神殿の人達は?……沙賀羅先輩は?」
紋音「あなた様は、人質です。一日でも、長く生きられますように、ご自身の身の上を、案じた方がよろしいかと」※冷酷な目つきと笑み
葵葉(人質?)※ぞくっとする。
紋音「お体は大丈夫そうですね。ご案内致しましょう」
紋音は、葵葉に上着を羽織らせる。
○和室(洋家具)・昼
紋音が襖を開けると、絨毯の上のクラシックな椅子の肘掛に、片肘をつき、銀髪・裸眼の沙賀羅が座る。
沙賀羅「昨夜は、手荒な事をしたね」
葵葉「さ、沙賀羅先輩ですよね?」※怯えながら
沙賀羅「俺は、妖の統領である黄家の沙賀羅。人の世界では苗字だけど、俺の本当の名前」
葵葉「あの、神殿では何があったのですか?叫び声が……」
沙賀羅は、両手を組んで、両太腿の間に置く。冷酷な顔になり、雰囲気が変わる。
沙賀羅「そんな事聞いて、どうするの?知って、何が出来るの?」
葵葉「あ……」(守ってもらうだけで、何も出来なかった)※泣き始め、しゃがみこむ。
沙賀羅は、椅子から立ち上り、膝をついて、葵葉の頭にふわっと手を添える。
沙賀羅「ごめん。巫女姫様だから、仕方ないか。綺麗で正しいと言われる物しか、与えられてないし」
紋音「人の世界では、巫女姫様が攫われたと大騒ぎ。歴史書をご用意いたしましょう。人質の行く末が分かりますから」※笑顔
紋音は、部屋から出る。
沙賀羅「君は、どうしたい?」※手を下ろし、葵葉の目を見つめる
葵葉「……帰りたいです」※片目一筋の涙
沙賀羅「神殿に?」
葵葉「は、はい」
沙賀羅「本当に、それでいいの?選ばれただけなのに」
葵葉「え……」
沙賀羅「本心が知りたいな」
沙賀羅は、片手の指で葵葉の顎を持ち上げる。
沙賀羅「君は人質だから、交渉次第だけど、死ぬまで、ここで生き殺しかもしれない。でも、巫女も同じかな?」
葵葉(生き殺し……)
沙賀羅「俺の目を見てごらん」
葵葉(……目に吸い込まれそう)「元の……」
沙賀羅「『元の生活に戻りたい』でしょ?」
葵葉は、コクンと頷く。
沙賀羅「いい子だ。良く出来たね」※微笑む
葵葉(本当は、巫女になんて、なりたくない。家族や友達とずっといたい。選ばれる前の普通の毎日に、戻りたい)※涙を手で拭う
沙賀羅は、立ち上がり、木製の丸い金魚鉢の上に手をかざすと、死んだように金魚が浮き上がる。
沙賀羅「人は、傲慢で愚かだよね。信じたい物だけ、信じる」※金魚を見つめる
再び、葵葉のそばに寄り、膝をついて顔を近づけ、葵葉の頬の涙を、親指で拭う。
沙賀羅「でも、そこが愛おしい」※二人で見つめ合うアップ
金魚が息を吹き返し、また泳ぎ始める。
○庭・朝
葵葉と紋音で、庭園の池まで歩く。
紋音「逃げようとしても、ここは妖の都。よくよく、お考え下さい」※微笑む
葵葉「はい」※沈んだ顔(沙賀羅先輩は怖かったけど、初めて、本心を人に言った……)
沙賀羅が、お付きの男か持つ小皿から、鯉に餌を上げる。
沙賀羅「おはよう。体調は?」
葵葉「おはようございます。問題ありません。ありがとうございます」※緊張気味
沙賀羅「これから、どうしたい?人質らしく、屋敷に籠る?」※優しい眼差し
葵葉「籠りたくは……ない……です」
沙賀羅「じゃあ、俺と学校に通おうか」※微笑む
葵葉「え?」
○洋室・朝
鏡の前に立ち、制服のネクタイを締める眼鏡の沙賀羅。それを見つめるリボンの制服の葵葉。
○葵葉の過去回想
紋音が語る。
「九耀の学園は、妖の中でも、選ばれた者しか通えません。皆様、上位家の子息令嬢で、様々な力をお持ちです。沙賀羅様が、妖に見える呪いをかけますが、油断されませんように。学校外の物はご覧にならない方が、あなた様のためでしょうか……」
○現在に戻る
葵葉(今なら、爾月の巫女様の言った事が分かる。私は、何も出来ない)
沙賀羅「行こうか」
葵葉「はい」※はっとする
葵葉がドアの方を向くと、沙賀羅が後ろから抱きしめ、首に腕を回す。
沙賀羅「俺からは、逃げられないよ」
葵葉「はい」※緊張し、微動だにせず
沙賀羅「人の世界と違って、俺は同じクラスだから。いつでも、守ってあげる」
葵葉「あ、ありがとうございます」
沙賀羅「嬉しい?」
葵葉「え?あ、はい」※顔赤い
葵華の頭をポンポンと叩いて、体を離す。
沙賀羅「頑張ろうね」※微笑む
葵葉の顔は赤く、自分の頭を触る。
○学校の教室・朝
教壇に葵葉が立ち、自己紹介。着席のクラスメイトは、頭だけ魚。頭は人間で、体が虎。美少女、額に星があるポニーテール女子高生等。
葵葉「庚家の葵葉と申します」
生徒「庚家って、途絶えてない?」
葵葉「私は、傍流で」
沙賀羅「最近、再興したかな」※片肘をつく
生徒「再興?沙賀羅が言うなら、そうだな」
○学校の教室・休み時間 昼
葵葉は、隣席の美少女を二度見する。「女子の制服でミニスカート、艶々の長い髪と揃った前髪、アーモンド型の大きな瞳の」三玖二が、視線に気づく。
三玖二「おいおいおいおい、今、見惚れたか?白家の三玖二だ」
葵葉「は、はい!すみません」
三玖二「極上の美しさだから、仕方ねぇか」
三玖二は、ポンと身長80センチくらいの茶トラの猫に姿を変えた。
三玖二「にゃん」
葵葉(にゃん?え……椅子に座って、可愛い」※びっくりしつつ
葵葉は、頭を撫でると、三玖二は気持ちよさそうな顔。
三玖二「可愛くて、悪い。皆に愛されまくりで、つらい。先祖は、人の帝まで虜にして、追放されたからなぁ」※遠い目
葵葉「ほぉ」※感心した風
三玖二が、鼻をクンクンする。
三玖二「忌まわしくもあるけど、皆、人の世界が好きだよな」※葵葉を見つめる
葵葉「え」
(人って、気づいてる?人は、妖を怖がるけど、妖達は、ちょっと人に興味あるの?だから、沙賀羅先輩も、人の世界に?いや、次期統領の視察的な?)
三玖二「葵葉は、沙賀羅の……彼女か?微かに……分かる奴には分かる」
葵葉「違います!!」※顔が赤い、被せ気味に強く言う
三玖二「そ、そんな即答しなくても。沙賀羅が、怒るぞ。あいつ、本気出すと怖えし」※少しびびる
葵葉「あっ、すみません!!」※焦る
三玖二「まっ、沙賀羅は最強だけど、美貌は負けねぇ。あ、祭の準備か」
三玖二は、先程の美少女にポンと戻り、席を立つ。
葵葉(祭?先輩は、クラスメイトにも、恐れられてるの?)
○学校の廊下・昼
モップで掃除する葵葉。「身長180センチで黒い髪が肩につく爽やかな」蘇芳が、モップを片手に、話しかける。
蘇芳「俺は、蒼家の蘇芳。困った事があったら言ってね。……葵葉ちゃん、可愛いね」※笑顔
葵葉「えっ、よ、よろしくお願いします」(甘い声がフワフワして、気持ちがいい)※顔が赤く、目がぐるぐる
蘇芳「葵葉ちゃんの目……」
沙賀羅が後ろから、葵葉の両耳を塞いだ。
葵葉(何?)※キョロキョロ
沙賀羅「俺のお姫様だから、からかうなよ。わざと、その声出しだろう」※嫌な顔
蘇芳「可愛くて、つい。お姫様から、幼馴染殿の匂いがすると思ったら、久々の登校でいらっしゃる。そんなに大切なら、籠に閉じ込めておけばいい。鎖で繋ぐのも悪くないな」
沙賀羅「籠の鳥は、いい声で鳴くかな。俺の好みではない」
蘇芳が笑う。
○沙賀羅邸の洋室ダイニング・夜
沙賀羅と葵葉が、夕飯和食を食べる。
沙賀羅「今日は、どうだった?」
葵葉「皆、親切で、人の世界と変わらないような感じで。ありがとうございます」※緊張気味
沙賀羅「蘇芳の声に、気を付けて。三玖二には、触らない方がいい」※クール
葵葉「は、はい。すみません」
沙賀羅「三玖二は、男だから。あの一族は、見る者を惑わすのが趣味」
葵葉(男?女の子の制服着てたし、声も、可愛いかった」※びっくり
○学校隣の大きな公園入口近く・下校時 夕方
空を見上げ、閉じた傘を持つ葵葉。
葵葉(係で、遅くなっちゃった。雨が降りそう)
怒鳴り声が聞こえ、そちらを見る。
男子1「黙れ!」
ボロボロの服の中年男性に、中等部男子二人が閉じた傘を振り上げる。葵葉は、駆け寄る。
男「すみません。すみません」
雨が、ぽつぽつ降って来た。
葵葉「やめて、やめて下さい!!」
男子1「こいつが悪いんだよ。俺らにぶつかった」
男「わざとでないのです」
男子2「うるさい!人って、くっせぇな。気味悪いし」
葵葉「人?」
男子1「こいつ人の奴隷だから、死んでもいいんだよ」
いつの間にか、傘を差す沙賀羅が立っている。
沙賀羅「……やめろ」※低い声で睨む
男子2「あ、沙賀羅様だ。やべぇ」
男子達は逃げ、雨がひどくなる。
葵葉が、男性のそばに寄り、傘を傾ける。
葵葉「大丈夫ですか?あなたは、人なんですか?」
男性「そうです……。山で遭難して、気づいたらここに。でも、大丈夫。私は人の世界に戻れます。ほら、これ。必ず、巫女様がお救い下さいます」
男性は、ポケットから、大切そうな札を見せた。
葵葉(爾月の巫女様のお札……)「あの、よかったら、この傘を使って下さい」
男性「ありがとうございます」
男性は、立ち去る。
沙賀羅が、葵葉に近寄り、傘を傾ける。
葵葉「あ、ありがとうございます。勝手にすみません。傘を」
沙賀羅「自らの意志で来たのか、神隠しか。それとも、罪人か」
葵葉「え……」
沙賀羅「人は、わざとこちらに罪人を流してる。それを奴隷として使ってるだけ」
葵葉「そんな……」
沙賀羅「知らなかった?」
茫然とする葵葉が、はっとする。
葵葉「お願いします。あの人を、人の世界に返してあげて下さい。神隠しって、言ってました。何でも……何でも、します」※勇気を出して、懇願
沙賀羅が、ため息をつく。
沙賀羅「……君、人質だよ?前も言ったけど、物事の一面しか知らないから」※呆れた顔で、見下ろす
葵葉「あ……すみません」※俯く
びしょ濡れの葵葉は、神殿が襲われた時の情景が頭をよぎる。
葵葉(奴隷って……)
ひざまずいて、頭を地面に擦り付ける。
葵葉「お願いします。何でもします。あの男性を人の世界に」※必死
沙賀羅「どうしようかな」※上から見下し、ぞくっと来る笑み
