〇緋屋・帳場・朝
青研の襲撃から一夜明け、緋屋の周囲には陰陽寮の監視の目 ※おもに青研配下の下級陰陽師たちが露骨に配置されるようになる。
朱音は白嶺が朔夜言った言葉が頭から離れず、彼と目が合うだけで心臓が跳ね上がる。
朱音(モノ)『私の大切な……』
白嶺はさらに過保護になっており、朱音が店の外へ一歩出ようとするだけで制止。
白嶺「どこへ行くのですか。私も行きますよ」
完全に影のように付き従う状態に。
〇霞ノ都・陰陽寮・開所・昼
青研が陰陽寮の上層部の老人たちの前で、昨夜手に入れた煙蛇の戦闘記録および、朱音の「繋束」の力を提示する。
青研「あの娘の力があれば、どんな高格のあやかしも完璧に制御できます。国力のために、今すぐあの娘を公的な管理物として強制徴募すべきです」
白嶺が朱音を囲い込んでいることも上層部に報告され、白嶺を「国家反逆者」として処理するお墨付きを、青研が取り付けようとしている。会合は紛糾。
老人1「簡単に制御できるのならば、我々の結界維持などの些事の負担が減るではないか」
老人2「斯様に、モノのような言い方をするでない。人の子ぞ」
老人3「あやかしを多数使役しているなんぞ、陰陽寮に仇名す存在ではないか」
老人4「しかし宗介の忘れ形見なのだろう」
〇緋屋・朱音の部屋・夜
昼間、黒霧から「青研が動いた。今夜にも朱音さんの捕縛命令が出る」という密告の文言が、蒼烏を通じ白嶺に届く。
白嶺は朱音に、ついに自分の本当の覚悟を伝える。
白嶺「朱音さん、私は、今夜ここを立ち退きます。陰陽寮を敵に回すことになりますが……君をあいつらの道具にさせるわけにはいいきませんからね」
朱音「でも、そんなことをしたら、貴方は国を裏切ることに――」
白嶺、朱音の手首の緋色の呪布をそっと引き、いつもの涼やかな、けれどどこまでも真剣な目で朱音を見つめる。
白嶺「建前なら『君が死ねば私も死ぬから』ですが……本音を言えば、ただ私が、君のいるこの場所を失いたくないだけです」
朱音、白嶺が自分だけでなく、緋屋でのあやかしたちとの暮らし、ごと愛してくれていることに気づき、涙ぐみつつもキッと顔を上げる。
朱音「私も、私も、お供します! だって離れたら死んじゃうでしょ!」
朱音の決意に、暫くの間静かな瞳で見つめ返す白嶺。顔と顔が近づき唇が触れようとした瞬間。緋屋の周囲を、黒い装束を纏った「陰陽寮の隠密部隊」と、青研の使役する巨大な鳥型あやかしたちが完全に包囲する。結界が張られ、退路を断たれる緋屋。白嶺が扇を鋭く開き、朱音を背中に庇って最前線に立つ――という絶望的な包囲網。
〇緋屋・店先〜橙小路・深夜 !!戦闘開始!!
包囲を狭めてくる陰陽寮の隠密部隊と、不気味に滞空する、四格のあやかし六つ目の鷹。
白嶺は朱音を庇い、いつもの涼やかな笑顔のまま、一切の容赦なく術式を展開する。
白嶺「私の大切な時間を邪魔するなんて、随分と行儀の悪い悪趣味な夜這いですね。……お引き取り願えますか?」
隠密部隊が放つ呪符の縛鎖を、白嶺は扇の一振りで易々と撥ね退け、底冷えするような純白の焔で敵の足元を爆砕していく。身内相手であっても、朱音に危害を加えようとする者には一切手加減をしない冷酷な顔。白嶺の横で朱音も果敢に石礫を投げようとしているが、あやかしを傷つける事に対する躊躇がある様子。
〇緋屋・裏口〜路地裏・同時刻・茂助と華音たちの脱出
緋屋の内部にも敵が侵入しようとするが、突如、墨色の狩衣を纏った男――黒霧が壁の影から現れ、無言で敵の陰陽師を組み伏せる。
驚く茂助と華音に、黒霧は短く告げる。
黒霧「……ここは俺が引き受ける。あやかしどもを連れて、早く表の白嶺のところへ行け」
茂助「黒霧さん……! かたじけない!」
茂助に背負われた華音の周りを、すす衆や水猫、小火が必死に守るように囲み、黒霧の支援を受けて裏口から脱出する。
〇橙小路・深夜・六つ目の鷹の強襲
表通り。白嶺の圧倒的な力の前に隠密部隊が圧倒される中、青研の使役する六つ目たちが、白嶺の死角から鋭い爪を剥いて朱音へと急降下してくる。
白嶺「——目障りですよ」
白嶺は振り返ることなく、呪布で繋がった朱音の手首をグイと力強く引き寄せ、自分の胸の中へと完全に抱きすくめる。
同時に左手で漆黒の防御結界を展開し、夜烏の爪を火花と共に弾き返す。
朱音の耳元で、白嶺の激しい、けれど酷く落ち着いた心音と、低く響く声。
白嶺「目を閉じていてください、朱音さん。すぐに終わりますから」
白嶺が扇を天に掲げると、巨大な白焔の鳥が召喚され、夜空の怪鳥たちを次々と焼き尽くしていく。その苛烈な強さと、自分を抱きしめる腕の絶対的な優しさの対比に、朱音は激しく胸を揺さぶられる。
〇橙小路〜運河沿い・合流と逃亡
裏口から逃げてきた茂助、華音、そしてあやかしたちが白嶺・朱音と合流する。
黒霧が殿を務めて時間を稼いでくれているが、これ以上ここに留まれば(陰陽師が一般人や人家に被害を及ぼすのは問題アリ)良識派の陰陽師たちまで敵に回しかねない。
白嶺「茂助さん、華音さんを連れて、ひとまずは都の外れにある私の古い隠れ家へ。朱音さんは、私が責任を持って連れて行きます」
朱音「白嶺さん……!」
白嶺は朱音の手をがっちりと握り締め、もう二度と離さないと言わんばかりの強い力で引き寄せる。
白嶺「さあ、行きましょう。ここから先は、少し騒がしい逃避行になりますよ」
白嶺と朱音、そして緋屋の家族たちは、深い霞が漂う都の闇へと姿を消していく。また、この際、先日の戦闘でなんとなくもった番傘を武器代わりに持つ朱音。
〇霞ノ都・陰陽寮の一室・深夜
包囲網を完全に突破された報告を受ける青研。
隠密部隊の無様な失態に冷笑を浮かべつつも、白嶺が立場を忘れ、たった一人の娘を選んだことに狂気的な愉悦を感じている。
青研「素晴らしいよ、白嶺。まさかあの冷静なお前が、そこまで狂うとはね。……鬼ごっこを始めようか。お前たちがどこまで逃げられるか、楽しみにしているよ」
青研の、次なる狡猾な追跡の罠を予感させる引き。
青研の襲撃から一夜明け、緋屋の周囲には陰陽寮の監視の目 ※おもに青研配下の下級陰陽師たちが露骨に配置されるようになる。
朱音は白嶺が朔夜言った言葉が頭から離れず、彼と目が合うだけで心臓が跳ね上がる。
朱音(モノ)『私の大切な……』
白嶺はさらに過保護になっており、朱音が店の外へ一歩出ようとするだけで制止。
白嶺「どこへ行くのですか。私も行きますよ」
完全に影のように付き従う状態に。
〇霞ノ都・陰陽寮・開所・昼
青研が陰陽寮の上層部の老人たちの前で、昨夜手に入れた煙蛇の戦闘記録および、朱音の「繋束」の力を提示する。
青研「あの娘の力があれば、どんな高格のあやかしも完璧に制御できます。国力のために、今すぐあの娘を公的な管理物として強制徴募すべきです」
白嶺が朱音を囲い込んでいることも上層部に報告され、白嶺を「国家反逆者」として処理するお墨付きを、青研が取り付けようとしている。会合は紛糾。
老人1「簡単に制御できるのならば、我々の結界維持などの些事の負担が減るではないか」
老人2「斯様に、モノのような言い方をするでない。人の子ぞ」
老人3「あやかしを多数使役しているなんぞ、陰陽寮に仇名す存在ではないか」
老人4「しかし宗介の忘れ形見なのだろう」
〇緋屋・朱音の部屋・夜
昼間、黒霧から「青研が動いた。今夜にも朱音さんの捕縛命令が出る」という密告の文言が、蒼烏を通じ白嶺に届く。
白嶺は朱音に、ついに自分の本当の覚悟を伝える。
白嶺「朱音さん、私は、今夜ここを立ち退きます。陰陽寮を敵に回すことになりますが……君をあいつらの道具にさせるわけにはいいきませんからね」
朱音「でも、そんなことをしたら、貴方は国を裏切ることに――」
白嶺、朱音の手首の緋色の呪布をそっと引き、いつもの涼やかな、けれどどこまでも真剣な目で朱音を見つめる。
白嶺「建前なら『君が死ねば私も死ぬから』ですが……本音を言えば、ただ私が、君のいるこの場所を失いたくないだけです」
朱音、白嶺が自分だけでなく、緋屋でのあやかしたちとの暮らし、ごと愛してくれていることに気づき、涙ぐみつつもキッと顔を上げる。
朱音「私も、私も、お供します! だって離れたら死んじゃうでしょ!」
朱音の決意に、暫くの間静かな瞳で見つめ返す白嶺。顔と顔が近づき唇が触れようとした瞬間。緋屋の周囲を、黒い装束を纏った「陰陽寮の隠密部隊」と、青研の使役する巨大な鳥型あやかしたちが完全に包囲する。結界が張られ、退路を断たれる緋屋。白嶺が扇を鋭く開き、朱音を背中に庇って最前線に立つ――という絶望的な包囲網。
〇緋屋・店先〜橙小路・深夜 !!戦闘開始!!
包囲を狭めてくる陰陽寮の隠密部隊と、不気味に滞空する、四格のあやかし六つ目の鷹。
白嶺は朱音を庇い、いつもの涼やかな笑顔のまま、一切の容赦なく術式を展開する。
白嶺「私の大切な時間を邪魔するなんて、随分と行儀の悪い悪趣味な夜這いですね。……お引き取り願えますか?」
隠密部隊が放つ呪符の縛鎖を、白嶺は扇の一振りで易々と撥ね退け、底冷えするような純白の焔で敵の足元を爆砕していく。身内相手であっても、朱音に危害を加えようとする者には一切手加減をしない冷酷な顔。白嶺の横で朱音も果敢に石礫を投げようとしているが、あやかしを傷つける事に対する躊躇がある様子。
〇緋屋・裏口〜路地裏・同時刻・茂助と華音たちの脱出
緋屋の内部にも敵が侵入しようとするが、突如、墨色の狩衣を纏った男――黒霧が壁の影から現れ、無言で敵の陰陽師を組み伏せる。
驚く茂助と華音に、黒霧は短く告げる。
黒霧「……ここは俺が引き受ける。あやかしどもを連れて、早く表の白嶺のところへ行け」
茂助「黒霧さん……! かたじけない!」
茂助に背負われた華音の周りを、すす衆や水猫、小火が必死に守るように囲み、黒霧の支援を受けて裏口から脱出する。
〇橙小路・深夜・六つ目の鷹の強襲
表通り。白嶺の圧倒的な力の前に隠密部隊が圧倒される中、青研の使役する六つ目たちが、白嶺の死角から鋭い爪を剥いて朱音へと急降下してくる。
白嶺「——目障りですよ」
白嶺は振り返ることなく、呪布で繋がった朱音の手首をグイと力強く引き寄せ、自分の胸の中へと完全に抱きすくめる。
同時に左手で漆黒の防御結界を展開し、夜烏の爪を火花と共に弾き返す。
朱音の耳元で、白嶺の激しい、けれど酷く落ち着いた心音と、低く響く声。
白嶺「目を閉じていてください、朱音さん。すぐに終わりますから」
白嶺が扇を天に掲げると、巨大な白焔の鳥が召喚され、夜空の怪鳥たちを次々と焼き尽くしていく。その苛烈な強さと、自分を抱きしめる腕の絶対的な優しさの対比に、朱音は激しく胸を揺さぶられる。
〇橙小路〜運河沿い・合流と逃亡
裏口から逃げてきた茂助、華音、そしてあやかしたちが白嶺・朱音と合流する。
黒霧が殿を務めて時間を稼いでくれているが、これ以上ここに留まれば(陰陽師が一般人や人家に被害を及ぼすのは問題アリ)良識派の陰陽師たちまで敵に回しかねない。
白嶺「茂助さん、華音さんを連れて、ひとまずは都の外れにある私の古い隠れ家へ。朱音さんは、私が責任を持って連れて行きます」
朱音「白嶺さん……!」
白嶺は朱音の手をがっちりと握り締め、もう二度と離さないと言わんばかりの強い力で引き寄せる。
白嶺「さあ、行きましょう。ここから先は、少し騒がしい逃避行になりますよ」
白嶺と朱音、そして緋屋の家族たちは、深い霞が漂う都の闇へと姿を消していく。また、この際、先日の戦闘でなんとなくもった番傘を武器代わりに持つ朱音。
〇霞ノ都・陰陽寮の一室・深夜
包囲網を完全に突破された報告を受ける青研。
隠密部隊の無様な失態に冷笑を浮かべつつも、白嶺が立場を忘れ、たった一人の娘を選んだことに狂気的な愉悦を感じている。
青研「素晴らしいよ、白嶺。まさかあの冷静なお前が、そこまで狂うとはね。……鬼ごっこを始めようか。お前たちがどこまで逃げられるか、楽しみにしているよ」
青研の、次なる狡猾な追跡の罠を予感させる引き。



